多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅧ:FinalZone

No138.Idols of the past

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 薊の誘導に大人しくついていき、比較的狭いが動けるだけのスペースがある物置き場に到着した。
 そして、早々に薊は方向を急転換し、毒を塗ったナイフを突き出してきた。

 「油断なんてしてると思うか?」

 俺は難なくそれを回避した。そして、片方の拳銃でバタフライナイフによる回転を受け止めて、もう片方の拳銃で奴を直接撃った。

 「……。」

 しかし、薊の反応は早く、ナイフを自分の方に引き寄せて後退した。
 俺は追撃するが、奴はバタフライナイフで上手いこと射線を切り、サイドステップからの壁を蹴って、俺の後ろに回り込んでナイフを突き出した。
 ナイフを手で受け止める事は可能だが、毒でこれ以上身体疲労を加速する訳にはいかない。
 俺は別の攻撃は受けても構わないという覚悟で、拳銃でナイフから守った。

 すると、奴は他のナイフを取り出して迫って来た。後ろは壁だ。
 徐々に追い込まれているがこれも作戦の内だ。ギリギリまで引き寄せて、俺は壁蹴りからダンボールに跳び移り、その最上段からダンボールを蹴り飛ばした。

 「……ッ!」

 すると、山積みになったダンボールは崩れて、下にいた薊に襲い掛かった。







 俺は崩れたダンボールの上から着地して、二丁拳銃を構えた。互いにフィールドや状況を活用する暗殺者の鏡だ。警戒を解いた瞬間死ぬ。
 蝋燭との連携もしんどかったが、こいつは一人なら慎重に立ち回ってくる。それはそれは厄介だ。
 ただ、力と物量で圧倒されるよりは、何倍もマシだ。
 
 「……機転が利く。若い暗殺者は柔軟だから気が抜けないな。」

 すると、ダンボールの下から薊が姿を現した。
 俺はすぐに銃口を向けた。

 「お前だって若い暗殺者じゃないのか。」

 「生命再起会の平均年齢が高いだけ。俺自身二十だ。」 
 
 という事は、俺がこいつと初対面した時、こいつはまだ高校生。今の俺とそう変わらない。

 「あの異様な貫禄は一体何だったんだ……。ここで追い付いたって訳か。」

 「この一族も、聖薇とそう変わらない。君もあの年齢では異質な覇気のある人間だった。……名門に生まれた者の性だよ。例えそれが何を対象にしたとしても!」

 刹那、被っていたダンボールを振り払い、目眩ましとして飛ばしながら、俺の視界から外れた。

 「ッ!早っ!」

 「警戒したって、上回ればいい話。我々そうやって与えられた物を遂行してきた。だから、今生きて、また懲りずに死地に向かっている。……君なら分かるだろ白薔薇。」

 そしてナイフが迫るが、俺はそれを拳銃で受け止め、バタフライナイフを蹴りで手元から離そうと試みた。
 しかし、奴のナイフ捌きは凄まじく、蹴り落とすなんて到底不可能な軌道で距離を離し、毒塗りナイフを掠らせた。

 「ッ!」

 「君の弱体化は止まらない。……ほぼ互角の状況の中、時間が経つにつれ相対的に俺が強くなる。早期決着、果たして今からでも間に合うか。」

 そして俺は奴の蹴りを受け、ダンボールをクッションとして埋められた。
 俺は力でダンボールを押しのけ、早々に蛍光灯を撃って落下させた。

 「見え透けてる。狙いが。」

 すると奴は蛍光灯を片手で受け止め、こちらに投げてきた。
 俺は壁蹴り助走ですぐに躱し、攻めに転じた。まず、横から拳銃を撃つ。
 そうすると奴はバタフライナイフで防いで、その後にナイフを突き出してきたため、俺はバク転をして空中に回避する。
 そして天井に近い位置の壁を蹴り、空中から拳銃で撃った。

 「ぐっ!……君の身体はどうなっている。フィジカルモンスター。」
 
 奴の心臓を狙ったが、どうやら逸らされたようだ。空中での精度もあまり良くないし。
 だが、ナイフ使いとして腕を撃たれたのは弱体化に繋がるはずだ。

 「……こっちは…毒がだいぶ回っている……。これで追いついたか…?」

 「持続的に弱る君と、一発で一部分が傷付いた俺では、総合的なダメージが違う。追いつけるはずが……ッ!」

 奴がまだ何か言っている最中、俺はすぐさま距離を詰め、至近距離で撃った。しかし流石は薊と言った所か、奴はしっかりと反応してサイドステップを取った。
 だが、反応が遅れており、腹部に銃弾が掠った。

 「警戒自体はお互い続けている。これは単なる力比べ、頭脳戦じゃない。……“神経の耐久戦”でもあるんだよ!」

 「……俺の気が抜けていた…という事か。双方、精神的には限界が近そうだ。シミュレーションが意味を成さないからか?」

 「まだシミュレーションがどうだって言うか……。この際、教えてあげる。俺もお前も人間の域を出ない。感情に揺さぶられ、能力が発揮できなくなる。……周りからどう評価されようとな。」

 そう言うと、薊は何かを考えるようにフリーズした。

 「………違う、俺は……“▓▓▓▓”」

 「……そうか。だったら、哀しいな。俺達。」
 
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