多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅧ:FinalZone

No133.Grudge is the best

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 そう言って即座に射撃したが、足場が崩れ落ち、避けられた。やはりドールを下の階に待機させていたようだ。
 自分は着地後再び距離を詰め、狙撃しようとするが、奴は電磁スナイパーライフルのチャージを開始した。
 近距離型の軽いものだろう。
 
 「痺れろ。冬夜。」

 そして電気が発射されるが、身体を斜めに倒して難なく避け、傾いた状態で下から狙撃した。
 だが、ドールの介入によって奴は生存した。

 「もう分かってやってるよね。………本当に、人間終わってる。」

 「私が信じるのはお父様と会長のみ。あの方達の教えこそが、私の常識だ。」

 「知るか。……君は何をしているか分かって正当化させている。なんと極悪非道なのだろうか。死んで償えるものだと考えるか?……教えて下さい。」

 そう言って、ハンティングライフルを降ろした。







 冬夜の雰囲気が普段と全く違う。俺も薄々感じていた事だが、あいつの発言で全てが明るみになった。
 そして、最早戦闘のレベルについていけずに気付けば蚊帳の外である俺の隣で、彼と同じように怒りを奮い立たせる仲間がいた。
 
 「黄牙はさぁ、あの一族である事に誇りを持っていたの?」

 「むしろ、俺の経歴に泥を塗ってる。あんな所に居続けていたら、俺もあいつのようになっていたかもな……。」

 「そう……ならさ、殺しても悲しみなんて感情ないよね?」

 「その気でここに来ている。当時逆らえなかったあいつに、思う事全て洗いざらい吐いた。後はお前ら“私怨に飢えた獣”に任せるとする。」

 「って言っても、私も隙さえあれば参戦するけど、もう空気に耐えられないよ。あの夜空は……私でも引く。」

 ヤンデレ素質があり、要を殺した天災に対して相当な恨みがある月歌でさえも、そう言う。
 俺らが割って入る隙などない。そんな重圧的な空気を放つ戦場が出来上がっていた。とはいえ、こちらに来るドールは己の力で対処しているが。







 天災も、銃を降ろして口を開く。

 「償う気なんて最初からない。まさかとは思うが、私に救いの手でも差し出しているとでも言うのか?だったら馬鹿な真似はやめておけ。効率的でない。」

 無意識に優しさを捨てきれない自分が居た。今目の前にいるのは、唯一の家族としての理解者である夕憧を殺し、戦死を望まない者を殺させるように仕向けた冷酷なマッドサイエンティストだというのに。
 ただ、もう言葉は不要だろう。ここまで選定してきたが、これ以上のクズに出会える気がしない。禁忌を犯させた者、ならば禁忌を犯してでも処罰するのが凍白の礼儀。

 「……ごめんなさい。夕憧、明璃。……自分は残虐な殺人鬼だ。」

 そう口に零し、ハンティングライフルのギミックをアクティブにし、距離を詰めた。

 「……取り抑えろ。ドール達。」

 奴がそう言うと、全てのドールがこちらに一斉射撃してきた。
 壁を蹴って空中で側転状態になりながら狙いを定め、ほとんどのドールが大体一列になった一瞬のタイミングで、狙撃した。
 機械が壊れる音、血が吹き出す音。様々な音が自分の心を傷つけるが、今だけは何も感じない。
 それよりも、この結末のきっかけを作った恨むべき相手天災を殺さなければ、示しがつかない。

 「早い…ッ!くっ来るな…!」 

 奴は何か言っているようだが、何一つとして聞こえない。最早、どうだってよかった。
 脳を狙い狙撃するが、無駄に生存能力が高いのか、スレスレの所で回避してきた。
 だが、その回避先の場所にも当然のように射撃する。それでも奴はしぶとく生き残った。……一度リロードを挟まなければならない。
 



 「なんだあの動きは。まるで人間じゃない……。いや……リロードに時間が掛かるようだ。そうと決まれば……ッ!………くっ…死に損ないめが……!」

 「私だってね。チャンスを捨てた訳じゃないんだよ……。要は、誰にも成り代われない私の“唯一無二”だった。……それを終わらせるような奴を、私が生かすはずがない!」

 奴は冬夜から目を離せずに周りが見えていなかったのか、こちらの方に退散してきた。
 そんなバックががら空きの状況で丁度リロードで動きが止まった冬夜を撃ち抜こうとチャージを始めたところ、無防備な背中に月歌が全体重を乗っけてナイフで殺したのだ。
 
 「これが宿命だ。お父様あの老害も引退して、お前も死んだ。……谷上の名は廃れた。」

 「……お前だって…谷上の一族……だろうが………。」

 「は?俺はお前らに追放された身。こんな時だけ助け求めて応じる馬鹿が何処に居る?さよなら、濫土。」

 「……!おのれ黄牙ぁぁぁ!!」
 
 奴は滑稽にそう嘆くが、次第に血が滲んで声と共に生命の灯火が消えた。
 勝ちだ。







 トドメの一発を撃とうとしたが、どうやら相原先輩に暗殺されてしまったようだ。
 ハンティングライフルのアクティブをオフにして、彼らの方に歩いていった。

 「ありがとうございます先輩。共に戦ってくれて。」

 「……俺は何もしていない。感謝は月歌だけにしておけ。」

 「いやいや、私も一人では勝てない相手だった。夜空が居たから、勝てたんだよ!」

 「それなら……良かった…で…す……。」

 そこで急に頭が重くなり、倒れてしまった。







 突如、冬夜が気絶してしまった。

 「大丈夫か!」

 「あんな夜空は話にも聞いた事がないし、きっと身体や精神に異常な負荷を掛けていたんだよ……。命の別状は特に……。」

 「それもそうか。なら、しばらくは様子見だな。」

 こうして、恨まれし人間:天災との因縁に終止符が打たれた。
 もう思い残す事は何一つない。後は彼らの事を応援する他ないのだ。

 
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