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ChapterⅧ:FinalZone
No123.Rivals with high expectations
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「絆!凍白さんが……」
「……分かってる。」
サイレンス本部。先程、夜空から『奇襲を受けた。』と連絡され、彼を回収しに車を向かわせた。
プレデスタンスにも連絡を入れたが、薔羨さんも予想外だったようだ。あちらも対象の暗殺は済んでいるらしい。
結局、今夜ぶつかるのは決定事項となる。心の準備をしろと言われてから、実行までが想像以上に早かった。
「彩良、組織全体に伝達は入れたか?」
「ええ。プレデスタンス本部の方からも出撃許可が降りた。」
「……Order、準備はいいか?」
そう彼女らの目を見ると、覚悟に満ちた表情だった。
「……俺は、このメンバーで心から良かったと思っている。」
「何?保険の遺言?」
「冗談抜きでやめろ。」
全く、こんな重大な任務の前に彩良は平常運転で冗談を言ってくるとは……。真に恐ろしいのは、これが現実になる場合が存在するという事だ。仮に俺が死んだとしたら、この馬鹿二人はどういう反応をするだろうか。
……想像したくもないな。ガチ泣きするこいつは。
「絆、時間。」
そう感情を噛み殺していると、莉緒菜がそう声を掛け、俺は気を取り直した。
「おっ悪い。……行くぞ。」
そうしてサイレンスの自動車に乗り込み、歪達精鋭部隊と合流する地点であるプレデスタンス前線拠点に向かった。
先程、絆から『合流するからそこで待っていろ。武装を忘れずにな。』と連絡が入った。
相変わらず喧嘩腰だが気遣える奴だ。
「久々だな歪。」
「旋梨と愁か。元気だったか?」
すると、別行動だった旋梨と愁が基地に到着した。
「……波瑠とはどうなった?」
そう尋ねると、彼は無言で親指を立てた。上手くいっているようだ。
「じゃあもう死ねない理由が出来たな。……死亡率が高いからこそ、あまり直前にこういう事を言いたくないが、死んで悲しむのは自分じゃない。“誰か”だって。……月歌さんは、この感情を原動力にスタートコールを切ってくれた。夜空もだ。何の予告もあるはずがなく、夕憧は帰らぬ人となったのに、彼は病みに打ち勝って俺達と共に戦う意思を表明してくれた。ただ、全員がそういう人ではないし、きっと彼らも全てが終わった時に悲しみを露わにする。」
「……悲しませる気はないし、死ぬ気もない。それでも、もし俺の命が尽きた時は、………墓の前で叱れ。嘆け。ってダサいな…俺。」
「そんな事ない。互いに約束した方が、命がより重いものとなる。」
ここにいる全員、死を望んでいる訳では無い。けれども、死は覚悟して飛び込んでいる。
生命再起会を放置すれば、いづれは無条件で飲み込まれるだけだ。それなら、限界まで足掻く他無い。
撫戯が起こしたライブジャックで、復讐心の生む原動力は何よりも恐ろしい事は理解している。今、その負の感情を抱くのは約半数。
そして、生命再起会の行いを間違った事だと考えるのは過半数。いや、満場一致だ。
「歪の殺気も憎悪に満ちたな。できれば、俺と同じ道は辿って欲しくなかっぜ…。」
すると、撫戯はそう溜め息を着いた。
しばらくすると、エンジンの音が近づいてきて、基地の前でそれは止まった。
「来たか。Order!」
旋梨がそう言った直後、扉が開いて夜空が姿を現した。
「夜空の方だったか。……大丈夫か?まだ頭の中ぐちゃぐちゃじゃないか?」
「お気遣いありがとうございます紫藤先輩。ですが、自分は大丈夫です。」
夜空はそう言うが、心に引っ掛かるものはきっとあるはずだ。それを乗り越えた上でこの場所に赴けた彼の意思は、本当に尊敬する。
何より、周りの意見に惑わされがちだった彼が、“自分”で譲れない程強い意思を手に入れた事が、先輩として嬉しい。
「夜空………お前は凄い。俺は立ち直るまでにかなりの期間を過ごしたというのに。」
「いいえ、それでも聖薇先輩には敵いません。自分は、ただ本音を殺してるだけですから……。」
そう言う彼に対して、俺は彼の肩に手を置き、後ろ向きで言った。
「俺は……全然そんなのじゃないよ。少なくとも、本質的には。」
実際、俺は復讐心に刈られた人間だった。二度も失い、狂ったように努力した。聖薇じゃなくても、こうなっていただろう。
そのまま玄関の方に行き、絆と目を合わせ立ち止まった。
「サイレンスのトップに立ったお前の活躍、期待してもいいか?絆。」
「あんたもな。サイレンス最強の男が“復讐心”という最も強い原動力を獲た。もう華隆さんの面影も無いな。」
「あの人は唯一無二だった。なら、俺も唯一無二の方で追いつくしか考えられない。」
「まぁどちらでもいいさ。……ここに居るメンバーは揃った。プレデスタンスと繋がるぞ。」
すると、スクリーンに葉桜さんの姿が映り、スピーカーから音が聞こえた。
「……分かってる。」
サイレンス本部。先程、夜空から『奇襲を受けた。』と連絡され、彼を回収しに車を向かわせた。
プレデスタンスにも連絡を入れたが、薔羨さんも予想外だったようだ。あちらも対象の暗殺は済んでいるらしい。
結局、今夜ぶつかるのは決定事項となる。心の準備をしろと言われてから、実行までが想像以上に早かった。
「彩良、組織全体に伝達は入れたか?」
「ええ。プレデスタンス本部の方からも出撃許可が降りた。」
「……Order、準備はいいか?」
そう彼女らの目を見ると、覚悟に満ちた表情だった。
「……俺は、このメンバーで心から良かったと思っている。」
「何?保険の遺言?」
「冗談抜きでやめろ。」
全く、こんな重大な任務の前に彩良は平常運転で冗談を言ってくるとは……。真に恐ろしいのは、これが現実になる場合が存在するという事だ。仮に俺が死んだとしたら、この馬鹿二人はどういう反応をするだろうか。
……想像したくもないな。ガチ泣きするこいつは。
「絆、時間。」
そう感情を噛み殺していると、莉緒菜がそう声を掛け、俺は気を取り直した。
「おっ悪い。……行くぞ。」
そうしてサイレンスの自動車に乗り込み、歪達精鋭部隊と合流する地点であるプレデスタンス前線拠点に向かった。
先程、絆から『合流するからそこで待っていろ。武装を忘れずにな。』と連絡が入った。
相変わらず喧嘩腰だが気遣える奴だ。
「久々だな歪。」
「旋梨と愁か。元気だったか?」
すると、別行動だった旋梨と愁が基地に到着した。
「……波瑠とはどうなった?」
そう尋ねると、彼は無言で親指を立てた。上手くいっているようだ。
「じゃあもう死ねない理由が出来たな。……死亡率が高いからこそ、あまり直前にこういう事を言いたくないが、死んで悲しむのは自分じゃない。“誰か”だって。……月歌さんは、この感情を原動力にスタートコールを切ってくれた。夜空もだ。何の予告もあるはずがなく、夕憧は帰らぬ人となったのに、彼は病みに打ち勝って俺達と共に戦う意思を表明してくれた。ただ、全員がそういう人ではないし、きっと彼らも全てが終わった時に悲しみを露わにする。」
「……悲しませる気はないし、死ぬ気もない。それでも、もし俺の命が尽きた時は、………墓の前で叱れ。嘆け。ってダサいな…俺。」
「そんな事ない。互いに約束した方が、命がより重いものとなる。」
ここにいる全員、死を望んでいる訳では無い。けれども、死は覚悟して飛び込んでいる。
生命再起会を放置すれば、いづれは無条件で飲み込まれるだけだ。それなら、限界まで足掻く他無い。
撫戯が起こしたライブジャックで、復讐心の生む原動力は何よりも恐ろしい事は理解している。今、その負の感情を抱くのは約半数。
そして、生命再起会の行いを間違った事だと考えるのは過半数。いや、満場一致だ。
「歪の殺気も憎悪に満ちたな。できれば、俺と同じ道は辿って欲しくなかっぜ…。」
すると、撫戯はそう溜め息を着いた。
しばらくすると、エンジンの音が近づいてきて、基地の前でそれは止まった。
「来たか。Order!」
旋梨がそう言った直後、扉が開いて夜空が姿を現した。
「夜空の方だったか。……大丈夫か?まだ頭の中ぐちゃぐちゃじゃないか?」
「お気遣いありがとうございます紫藤先輩。ですが、自分は大丈夫です。」
夜空はそう言うが、心に引っ掛かるものはきっとあるはずだ。それを乗り越えた上でこの場所に赴けた彼の意思は、本当に尊敬する。
何より、周りの意見に惑わされがちだった彼が、“自分”で譲れない程強い意思を手に入れた事が、先輩として嬉しい。
「夜空………お前は凄い。俺は立ち直るまでにかなりの期間を過ごしたというのに。」
「いいえ、それでも聖薇先輩には敵いません。自分は、ただ本音を殺してるだけですから……。」
そう言う彼に対して、俺は彼の肩に手を置き、後ろ向きで言った。
「俺は……全然そんなのじゃないよ。少なくとも、本質的には。」
実際、俺は復讐心に刈られた人間だった。二度も失い、狂ったように努力した。聖薇じゃなくても、こうなっていただろう。
そのまま玄関の方に行き、絆と目を合わせ立ち止まった。
「サイレンスのトップに立ったお前の活躍、期待してもいいか?絆。」
「あんたもな。サイレンス最強の男が“復讐心”という最も強い原動力を獲た。もう華隆さんの面影も無いな。」
「あの人は唯一無二だった。なら、俺も唯一無二の方で追いつくしか考えられない。」
「まぁどちらでもいいさ。……ここに居るメンバーは揃った。プレデスタンスと繋がるぞ。」
すると、スクリーンに葉桜さんの姿が映り、スピーカーから音が聞こえた。
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