多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅦ:Candle

No120.Adjustment

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 生命再起会本部。Hadesの射撃演習場に、薊が訪れた。

 「一年ぶりだ。蝋燭。」

 彼がそう声を発すと、コードネーム:蝋燭はショットガンを降ろし、振り向いた。

 「Asmodeusの座席は一枠空席だ。……やる気はないか?蝋燭。」

 強制力を働かせる圧力を持つ鋭い視線を向けるが、蝋燭はそれに一切動じず、そっぽを向いた。

 「ここだけの話、君は燈花以上の実力者。統率力にセンスは微塵も感じさせないが、個人で動くなら最強格。それを自覚していて、地位を偽装するのは宝の持ち腐れ。」

 そこまで言うと、薊を眼中にも入れていなかった蝋燭が口を開いた。

 「果たして、名誉を獲る事が必ずしも合理的だと言えるのか。他の馬鹿ならまだしも、薊なら理解していると考えていたが……。」

 「理解している。君はトップシークレットとして隠すのが最善だという事は。何も、表立つ事はない。ただ……情報共有がしやすい位置に居た方が、効率的だと言えるのでは?」

 「……ならこれでどうだ。私の正式な所属は Asmodeusとする。ただ、表面上は薊一人という事にする。緊急時のみ、共闘する。この条件をのめるのであれば、同意しよう。」

 「勿論だ。交渉成立。」

 「やはり薊は賢くて助かる。この話は清心には……」

 「みなまで言うな。最初から黙秘のつもりだ。ただ、Zeusには計画の都合上話を通させてもらう。」

 「それくらいは構わない。」

 「それではこの辺りで……。」

 そうして、薊は射撃演習場を後にした。







 クローン製作を行うラボに、清心が訪れて来た。

 「お待ちしてましたぁ。」

 「蝙蝠か。予定には間に合いそうか?」

 「問題無くといった所です。一つ懸念点があるとすれば、万全な体勢となる前にプレデスタンスが襲撃に来かねないという事です。Asmodeusのどっかの誰かさんが、全部話したせいでぇ。」

 「燈花はもう処刑しただろう!未来の反省をする暇があるなら、さっさと次に動け!」

 「まぁそうカリカリしないでくださいよぉ…。天災が透念という融通の利く厄介な暗殺者を排除しましたからぁ。」

 「そうか。どちらにせよ、最終兵器発動までは、確実に死守しろ。」

 それだけ言い残して、清心はラボを後にした。
 すると、入れ替わりで薊が来た。

 「あれ?どうしたのですかぁ?」

 「蝋燭の所属を Asmodeusに移したと把握しておけ。」

 「蜥蜴はどうする気ですかぁ?」

 「ここ三人は基本群れを好まない。適当に暴れられる場所にでも配属して。」

 「では、Zeusの方で引き取らせてもらいまぁす。」

 「お好きに。…………忠告、プレデスタンスは来るよ。“確実に”。」

 「ほぉ?その根拠は?」

 「黒薔薇は逃げ先で燈花を追い込んだ。ある程度の内情を知っている可能性が極めて高い。」

 「まぁ肝には命じておきます。」

 そうして、薊も退場していった。







 プレデスタンス本部。情報は出揃った。彼女らは本当に有能だった。まさか頼んでも無いのにここまで動いてくれるとは。

 「上出来だ。よくやってくれた。雨雲、大蛇。」

 Silverの二人は行政の下で動く組織に潜入し、リスクと隣合わせの中、生命再起会に関するありとあらゆる情報を回収してきたのだ。
 ヘル・スクール事件の最中に颯爽と行われたため、奴らは油断していた。その事もあってか、何の疑いもなくお暇できたそうだ。

 「それほどでもありません。今回の任務は、暗殺より真っ向勝負が基本となりそうですから、私達の出る幕は無さそうだったので、少しでも得意分野で貢献出来たらと思い…。」

 「あとはお兄ちゃん達がいっぱい暴れるんだよね!師匠以上の強さを期待してるよ!」

 「期待してろ。俺の実績は本物だ。もう一つ、頼んでもいいか?」

 「はい、何でしょうか。」

 「……俺達が不在の間、ここの守備を任せたい。全体の指揮監督として、愛沙を置く事にした。葵の事もあるしな。」

 すると彼女らは顔を見合わせてから、こちらを向いて返した。

 「心配しないでやりきってきてください!」

 「お兄ちゃん達なら、大丈夫だよ。私達はずっと聞かされてきたから。お兄ちゃん達がどれだけ強いのか。」

 「………感謝する。」

 俺はそれだけ言い残し、愛沙の元へ向かった。







 「薔羨、本当に私が指揮監督で良かったの?薔羨の方が適任なんじゃ……」

 「俺は総大将として戦線を張るのが適任だ。……そして、俺達は少なからず無理をすると思ってる。お前の安定感が欲しい。」

 そう伝えると愛沙は少しはにかむように笑い、口元を隠して呟いた。

 「そこまで言わなくても……。」

 「……何か言ったか?」

 「ううん。行って来て!」

 「ハハッ……そうだな。」

 俺は愛沙に別れを告げ、自動車に乗り込んだ。
 自動車の助手席には、既に黄牙がスタンバっていた。

 「動員メンバーに作戦は報告したのか?」

 「軽くな。何せいきなり衝突訳にもいかない。……俺達らしく、先手は重く予測不能なのを一発……な?」

 黄牙はその言葉を聞き、昔を思い出すように笑った。

 「あれか……もうそんなに経ったんだな。」

 アクセルを踏み、東京へと向かい始める。サイレンスがありがたい事に簡易的なプレデスタンス倉庫を作ってくれたらしく、拠点には困らない。
 遂にこの時が来た。俺達は失ってきた。踏み躙られてきた。次は……こっちが阻止するターンだ。


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For ChapteⅧ:FinalZone
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