多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅦ:Candle

No106.Ridicule

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 千代田区生命再起会本部。その地下実験施設では、新型の兵器が開発されていた。

 「調子はどうですかぁ。天災。」

 「蝙蝠か。現在98%完成している。試行回数は281回に及ぶ。制御がほぼほぼ可能となり、コンパクト型の試作も仕上がったところだ。」

 「試作が仕上がったんですかぁ。それなら、Asmodeusの燈花が混沌を巻き起こすらしいです。混乱に乗じて試し打ちしてみてはどうですかぁ?」

 「遠慮なく乱入させてもらう。燈花には言うな。」

 「肝に銘じておきます。」

 会話が終わり、二人はそれぞれの作業に取り掛かり始めた。







 早朝、朝食を取っていた。朝一から要さんが買いに行ってきたものだ。
 本当にこの人は危機感が全くない。俺達のように裏社会で生まれ育ち、そういう教育を受けていないからだろう。
 しかし月歌さん曰く、要さんはオンオフがはっきりしていて、切り替えるとじわじわと追い詰める毒蜘蛛になるが、普段はこんな感じでラフらしい。
 
 「にしても甘い物が多いですね。」 

 「要は甘党だから!私も甘い物好きだし。」

 一方、撫戯は一人で揚げ物を食べている。このメンバー、朝食の癖が強過ぎる。
 俺はこの超個性的な朝食に圧倒されながらも、白米と漬物を食べた。
 
 「そう言えばだが、黒薔薇さんが交戦する時に伝えろだってよ。」

 「撫戯、昨日の内に伝えておいて。」

 「すみません。要さん。」

 そんな平和な朝食が終わり、俺と撫戯はトレーニング。要さん達はパトロールがてらツーリングに行った。







 路地裏。火炎瓶を引っ提げた数人の一般人が、押し詰められていた。
 そして、ゴミ箱の上に鎮座する燈花が、声を挙げた。

 「仕掛け終わったな?」

 「「はい。」」

 「じゃあ解放してやる。ほら、行きな。」

 すると、火炎瓶を引っ提げた二人は交番の方角に一目散に走っていった。
 しかし、数秒後、燈花が起爆装置を押し、二人の男は爆発した。そして、火炎瓶が割れ、死体は丸焦げにされた。
 これを見た押し詰められた人々は恐怖した。

 「何逃げようとしている?解放というのは、仕事からの解放なんだわ。立場からの解放では無い。わきまえな、そこ。」

 そう吐き捨て、切り替えた燈花は声を挙げる。

 「忘れるな。お前らの家族は全員監獄にぶち込まれている。言う通りにしろ。さもなければ両方起爆だ。」
 
 人々はまたしても戦慄した。そんな事どうでも良いかのように、言葉を連ねる。

 「さっきの迷える子羊らに仕掛けさせたのは、爆弾だ。しかし、ただの爆弾では無い。油をぎっしりと詰めてある。お前らの腰の物と原理は大して変わらない。お前らのすべき事は消防隊の到着を遅らせる事。手段は問わない。裏切りが発覚したら爆破。以上、文句ある奴。」

 しかし、誰一人異論を示さなかった。厳密には、異議を唱えたものから爆破される。
   
 「流石は金に目がくれた憐れな人々だ。今日の十六時決行するから、適当に位置に着いてけよ。」

 言いたい放題言い残し、燈花はその場を立ち去った。







 妙な胸騒ぎがする。別に何か発見した訳でも無いのに、異変を感じる。

 「夜空君どうかした?具合悪い?」 

 「……いいや。」

 「ふーん。…そっか。」

 明璃に声を掛けられたけど、そんな風に流した。客観的に見たら雑な対応に見えるかもしれないけど、実際否定は出来ない。
 社会情勢の闇を知った上で、普通の学生を演じるなど無理があり過ぎる。自分は彼女みたいに愛想笑いも出来ない。
 
 ……すると、突如爆発音がした。

 「一体何が!」

 「怖い怖い!」  

 それに伴い、教室中が慌てふためく。そんな中、スピーカーから音声が流れた。

 『花壇から火災が発生しました。生徒の皆さんは、速やかにグラウンドに避難して下さい。』

 花壇?火元が流石におかしいし、爆発音がする事自体おかしい。窓を覗いてみると、校内を囲むように火の壁が立ちはだかっていた。
 凄い勢いで燃え広がっており、校舎に届くのも時間の問題だろう。

 「夜空!」

 そこに、夕憧が合流した。

 「先輩方は?」

 「もう連絡は入れた。私達は裏口で待機になっている。要さんが武装は積んできてくれるって。」

 「そう。早く向かおう。」

 自分達は、すぐ裏口に向かった。グラウンドに避難してしまうと、武器を受け取れないので合流出来なくなってしまう。
 行方不明という事にしといた方が、何かと都合が良い。







 現在、凍白姉弟の通う高校へと向かっている。まだ距離があるが、煙が登っているのが一目で分かる。
 要さん達はバイクで規定を遥かに上回る爆速で向かったが、俺と撫戯は自らの足で向かっている。
 タイミングを遅らせる事で、中の状態を把握してから戦力を投下するという戦略だ。
 
 「いたぞ!」

 そう声を挙げ、火炎瓶を持った男が、室外機を投げつけてきた。
 しかし、撫戯が構えていたワイヤーをで絡め、遠くの地面に叩きつけた。
 
 「見た感じ、一般人まで利用してくるのか。燈花やべぇな。」

 サイレンが鳴り響き、物々しい雰囲気だ。目の先で、消防車の進入を防ぐように車が散乱している。

 「対策もしっかりしてやがるな。歪は先を急げ。俺はワイヤーで車体の撤去を行う。」

 「了解。また後で。」

 俺は車体を飛び越え、学校に駆けた。
 遂に始まってしまったのだ。この重苦しい町並み、雰囲気、……テロ弾圧時代が過去の一部にすら思えるほど、久々だ。
 もう、二度と立ちたくない戦場だ。

 
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