多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅦ:Candle

No104.Tendency

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 どうも妙だ。二手に別れてから五日が経過した。暗黒政府の仕業と確証は無いが、関東の古民家で火災が相次いでいる。
 ただ、奴らが現状何も動いていない事を考えると、ある程度察しが着く。
 
 「燈花だ。……彼らで勝てるか…。」

 追い詰めても一瞬の隙に逃走するのが奴だ。俺のロックからも平然と外れる。
 ただ、これまでの傾向的に、奴はしっかり誘い込んでくる。ただ事じゃないとおびき寄せ、煙が立ち込める中で暗殺。
 俺と慈穏だからこそ奇襲から回避出来たのであって、大半を殺られる。しかも、死体が燃えるため痕跡が消える。
 
 「あいつか。もう何度目だ?」

 モニターと向き合って思考を巡らせていると、黄牙が隣からそう声を掛けてきた。
 
 「火災の中での戦闘は四度目になる。それ以外のも含めると軽く二十はいくな。」

 「因縁が出来たな。」

 「今回こそは倒す。今回で殺れないと、総力戦が混沌を極め、勝率がグッと下がりかねない。」

 「薔羨が直接出向くのか?」

 「まぁな。ただ、今回は最初から出向かない。“二重戦術”だ。彼らの活躍次第では、俺の出る幕すらないかもな。…次はスコープの外にすら出させない。」







 要さん達が留守にしている間、俺達はトレーニングをしていた。フィジカル強化が主な目的だ。
 
 「ただいま。」

 すると、彼らは帰ってきた。

 「おかえりなさい。」

 「……ちょっと緊急会議を開いてもいいかな?」

 帰って早々、要さんはそう言ってきた。月歌さんも何か考え込んでいるようだし、何かあったのだろう。

 「はい。」







 円卓のテーブルの前に全員が座ると、要さんは口を開いた。

 「現在、関東を中心に火災が相次いでいる事はニュースなどで把握済みだと思う。……これが奴らの仕業である可能性が高まった。」

 「おい……その手法。黒薔薇の口から何回も聞いたぞ。」 

 何か知っているように、撫戯はそう反応した。ただ、俺はその話を知らない。

 「……何があったんですか。」

 「Asmodeus燈花。Enterと少し因縁があるんだ。今の俺が出来たきっかけでもあるあの戦い。忘れもしない。」

 「燈花はね、すっごくやばいんだよ…。人の心を持ち合わせていない感覚。」

 要さんと月歌さんの発言で、どんな相手なのか想像がついた。
 放火魔のような奴なのだろう。

 「その燈花という奴が絡んでいたとして、次に狙われる可能性が高いのはどこなんですか?」

 「人助けをしてツーリングを再開した後、後ろから車が追っかけてきたんだ。何かと思い路地裏に誘い込んでみると、古い友人だったんだ。」







 「久しぶりだな。要。」

 「何で追跡してきた。」

 「今、俺は消防士やっているんだけど、現場に規則性を感じてな。資料にまとめてきたんだ。」

 彼の提示した資料に俺と月歌は目を通すと、既視感を覚えた。

 「……誘い込みか。」

 「そう言えば話していたね。」

 この火災の地点は燈花式だ。薔羨から聞いた話によると、大舞台となる建物を中心に正六角形の角の地点で威嚇放火を行うというもの。
 そしてその舞台というのは……。

 「学校……か。……あいつ!」

 流石は性格が終わっているだけある。これを機に住宅街にも影響を及ぼしていく気だろう。
 そして、我々の存在を把握している事が伺える。そうでなければ、学校以外にも場所があるはずだ。

 「ありがとう。共有してくれて。」

 「いいってものだ。では、俺は出勤の時間だから。」

 そう言って友人は車に乗り込み、路地に着いた。







 「そういう出来事があって、燈花の仕業である可能性が高いと分かった。」
 
 「同感です。」

 「同感だ。」

 「私も。」

 満場一致だ。ここまで根拠があって、偶然というのは流石に考えにくい。

 「ただ、一つ気になる事があって……。この学校、凍白の通ってるとこだって、愛沙から聞いた。」

 「ッ!……暗黒政府の情報網…恐るべしだな……。」

 偶然か。いや、必然だ。彼らは登校している状況。武装なしの状態の主戦力を削りにきている。
 そして、大量虐殺と俺達を誘い込んで暗殺しようとも目論んでいるとしか考えられない。
 しかしそれが分かっていても、見過ごす訳にはいかないし、何よりこちらの事は向こうから筒抜けに見えるが、向こうの事は全然分かっていない。
 乗らざるおえない戦闘を仕掛けられているのだ。

 「あの苦しい事を平然と行う奴か。気に食わないな!」

 撫戯は声色を尖らせ、そう言った。彼は誰よりも分かっている。それがどれだけ罪深い事かを。
 
 「とりあえず、凍白に伝えるのが先決だ。歪、行ってきてくれる?」

 「勿論です。」

 俺はそう言って、資料に示された場所に向かった。

 「俺と月歌で現場の状態を見てくる。撫戯は薔羨に連絡を。彼が一番燈花の傾向を知っている。」

 「了解。」

 「じゃあ、行くよ。月歌。」

 「分かった!」

 そして、それぞれ動き始めた。







 最終火災現場から少し離れた路地裏。燈花が新聞を読んでいると、薊が来た。

 「派手に暴れ過ぎ。黒薔薇が来たらどうするの?四度の目の正直で負けるかもだろ。」

 「いいや。三度ある事は四度ある。心配は無用だ。」

 「君はよく分からないな。シミュレーションしているのか。」

 「感覚が全てだ。パレードが楽しみだ!薊も期待しとけよ!」

 「はいはい。」

 呆れた様子で、薊は立ち去った。
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