多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅥ:Signpost

No100.Consideration

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 波瑠と付き合い始めて、一週間が経った。真依にも伝えた事だし、彼女にも俺の素性について話した。だけど、あまり驚かれはしなかった。
 彼女らには、かなりそれを示唆する姿を見せてきたからか。

 「そう言えばなんだが、心晴さんの方はどうだったの?」

 ある時、丁度真依と二人になったので、ずっと聞く機会の無かった事の行く末を聞いた。

 「別に貴方ほど凄い事はしていない。ちゃんと説明したら、謝ってくれたし。悪い子では無いからね。」

 「なら良かった。」

 「代わりに私を磨く事を手伝って欲しいと言ったら、快く引き受けたくれたよ!」

 「そうだった。真依はギターで食べていく夢があるんだったな。」

 実際、ここ数ヶ月で彼女の腕は上がっている。それこそ、大会にエントリーする程には。
 そうこう話していると、遅れてきた波瑠と合流したので、話題を変えて登校した。







 その日の放課後。それまでは負った傷を癒やすべく波瑠と過ごす毎日が続いていたが、今日は Mythologyの緊急招集だ。
 愁が事情を話してくれたらしく、三日に一度の情報交換には出席していなかったが、今回はマストだってさ。
 つまり、何かが進展したという事だ。

 「全員集合は久しぶりですね。凍白姉弟が手掛かりを見つけたみたい。お願い。」

 葉桜さんがそう言うと、夜空はポケットから何かを取り出した。

 「……銃弾…か?」

 それはいびつな形をした銃弾のようなものだった。濡れているようだ。

 「これを解析してみたんだけど………エラーを起こした。銀座の末端で拾ったものなんだけど、数日以内に人が死んだ形跡があった。妙な事に死体は無かったよ。処理されたにしても、些細な痕跡すらも無かった。」

 確かに異質だ。ただ、ここから類推出来る事はあまりにも少ないように思える。何せ、エラーを吐くようじゃ何かが分からないからだ。
 すると、夕憧が補足した。

 「私は夜出歩いている最中に、軍隊のように列を成している人達に襲撃されて、逃げた。拷問に掛けるために散った連中の一人を誘導したのよ。話してくれたんだけど、途中でその人は仲間に殺された。次は私が狙われると思ってその人を殺した。すると、血の代わりに何か青白い液体が出てきて、身体が溶けるように腐敗したの。」

 「性質的にも状況的にも、濡れた銃弾と同じ液体だと思います。」

 確かに繋がりはある。プレデスタンスなら、ワンチャンこいつの正体を認知しているかもしれない。
 もう皆一度は千代田、中区に立ち寄ったそうだが、あのエリアだけは本気で異質だった。常に血の匂いがするし、知らずに入っていく人も見かけたが、路地裏を覗くとその人達が残酷に横たわっていた。
 俺達は暗殺者だが、奴らは排除・処刑・開発の各スペシャリストから成っている。その中に暗殺チームも入っているということが、夕憧が仕入れた情報らしい。
 
 「旋梨、」

 「ああそうだった。」

 愁がそうこちらに視線を飛ばしてくるので、俺は思い出したように口を開いた。

 「先日、俺と愁が交戦したHadesの金屋曰く、あいつらが活動範囲を広げるために動いていた連中だった。そしてもう一つ………Asmodeusの一員である燈花の名前が挙がった。躊躇が無い非人道的な奴だとよ。」

 「ッ!……燈花。」

 葉桜さんが、燈花という単語に反応したので、俺は聞いた。

 「何か知っているんですか?」

 「ええ。私は遠目でしか見たことないけど、薔羨は彼との交戦経歴があるの。それも、三度のね……。」

 「それで結果は……」

 「決着が着いた事は一度も無かった。一度目は薊の乱入によって窮地に陥った薔羨は撤退。二度目は途中までは押していたけど、慈穏が合流すると逃げられてしまった。三度目は互角の戦いが繰り広げられたんだけど、火が燃え広がり過ぎて続行出来ずに、二人とも退散したわ。」

 「因縁があるんですね……。」

 夜空はそう反応して、話された事をメモした。実際、“火が燃え広がり”という単語は、重要性が高い。
 金屋が火炎瓶を持たされていた事と合わせて考えてみても、燈花は火器を使っている可能性が高い。
 その後も色々考察などをしていると、あっという間に日が暮れてしまった。

 「この話は一度本部に持ち帰りましょうか。明日、私は仙台に行くつもりですが、皆はどうする?」

 そう葉桜さんが聞いてくる。

 「俺は正式に連絡がくるまでは残留する。彼女に寄り添ってあげないとだし。」

 「旋梨が残るなら。」

 「自分は一度本部に帰還します。解析したいので。」

 「私も。」

 俺と愁は残り、それ以外は一度変えるようだ。まぁ近々また派遣されてくると思うが。
 
 「分かりました。私達がいない間頼みましたよ。」

 「任せて下さい。」

 そうして、この日は一旦解散となり、しばらく別行動となった。
 俺は帰路に着き、他のメンバーも、それぞれ何処に行く道に着いた。







 「Kerberos全滅になっちゃったね。」

 「君がやった事。」

 「使い古した人形が壊れたら、付属品なんてもっと価値が無いからねぇ。で、次どうしようか。Zeusと相談してきてくれない?」

 「とっくに済ませてある。それよりさぁ……耳寄りな情報がある。これを君がどう活用しようが、俺は関与しない。」

 そして薊が資料を渡すと、燈花は笑みを溢した。

 「ハハハッ!薊……やるじゃないか。ありがたく頂戴させてもらう。」

 そう言って彼は、部屋を後にした。薊は携帯電話を取り出し、ある人物に連絡した。

 「主によろしく。……先走ったけど、日本混沌事変のスタートテープを切るって。」 

 『承知しましたぁ。』

 すると、電話を切って薊は存在感を消して何処かに去った。


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