多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

文字の大きさ
上 下
96 / 150
ChapterⅥ:Signpost

No96.Hesitation

しおりを挟む
 旋梨から連絡がきた。

 『黄金のネックレスの男を追う。お前も来い。』と。その直後、座標が送られてきたので、その場所に向かった。







 愁に座標を送って二十分後、彼は到着した。

 「メンバー全体に送信しないってことは、私的?」

 「まぁな。ただ、もしかしたら暗黒政府が絡んでいる可能性もゼロでは無い。確実性が無い中、まとまって動くと怪しいだろ?……愁はライブジャックの被害を陰で抑えていた。裏方得意だよな。」

 「把握。で、何をすればいい。」

 「捜索の手伝いと、場を整えること。話し合いがメインになると思うから、周囲の細かい警戒をお願いしたい。」

 そう言うと、彼は頷いた。
 俺達は手始めに、先日愁が目撃した場所に向かった。







 住宅街。金屋は、Mythologyの活動範囲を絞るために、黒服達に聞き込みをさせていた。
 彼はネックレスを手に取り、呟いた。

 「……何故、世界はこうも両極端なのか。」

 上の空な様子の中、一人で黒服が戻って来た。

 「音階、虚霧と思わしき人物を発見しました。」

 「やっとか。……これで皆救われるぞ。周囲の連中に路地裏に誘い込むように指示しろ。………人質、取れるか?多分高校周りにおる。」 

 心苦しそうにそう言って、彼らはある場所に向かった。







 道中で明らかに不審な黒服を見つけ、俺達は追っていた。だが、どうにも誘い込まれてる気がする。とはいえ、ここを嵌まったフリで押し通す。そのために愁が潜伏しながら追っているんだ。
 ある程度のところまで行くと案の定、包丁が投げられた。しかし、気にせず回避し、先に行った。

 「はじめまして音階。」

 「天守閣……。」

 「あ?知ってんのか。かつてのコードネームではあるけどな。」

 黄金のネックレスの男金屋岳が、奥で待ち構えていた。その手には、斧が握られ、腰には火炎瓶がぶら下がっていた。

 「岳、お前は何故俺を狙っている?波瑠を精神的に追い詰めたの……お前だろ。」

 「はぁ?彼女には多少の恨みはあるが、事実を伝えただけ。その後は何もしていない。」

 信用に値するかは分からない。ただ、話が通用しそうな雰囲気では無い。

 「もう一度聞く。お前は何故……」

 「Hadesの役目だからってのは理由にならないか?邪魔者は全員排除と命令が下っているのでね。ほら、ショータイム。」

 すると、黒服が足を揃えて行進してきた。その手にはライフルが握られており、一部の連中は、縄を持っていた。
 その縄には、何人かの同級生が催眠状態で縛られていた。

 「あぁ……人質とか取ってくる奴なのか。……嫌いだな。そのスタイル。」

 「俺だって嫌いだ。」

 彼は一瞬複雑な表情を浮かべたが、すぐに笑い始めた。
 やはり、何か様子がおかしい。全ての動作に、迷いが見られる。なので、揺さぶりをかけてみる事にした。

 「Uroborosってチーム知っているか?」

 「柊と羽崎の………いいや、聞いた事も無い野郎だ。」

 「柊司令は清心に殺された。あいつはドローンをコントローラー無しで操れる能力を持っているんだな。」

 「お前知らないのか?蝙蝠とかいう引き籠もりが遠隔で管理してるって……あっ。」

 案外簡単に自白した。こいつは別に生命再起会の幹部格では無い。そうでなければ、秘密事項をそう安々と割る事はないだろう。
 そして、羽崎さんの言う通り執念が垣間見える。消息不明のKerberosを捨て、Hadesに居るのには確実に訳がある。

 「やっぱりな……。何か、背負ってるだろ?」

 そう言うと、彼は斧をこちらに向けてきた。そして睨みつけて口を開いた。

 「俺が背負ってるのは生命再起会の看板のみ。よりよい社会の実現のために、上層の命令に従うのだ。」

 「お前達の掲げるよりよい社会というのは、クローンを量産し、日本国民の歴史をリスタートさせる事か。その過程で、何人欠けても構わないという事か。」

 すると、一瞬歯を食いしばり、斧を人質の首に当たるか当たらないかのギリギリに近づけた。

 「口を止めなきゃ殺るぞ。」

 「必ずしも奴らに付いて行けば、よりよい社会が保障されるのか。」

 「おい、本当に……」

 「どうして、“Kerberos”の名誉より生命再起会を優先するのか。」

 「黙れェェ!」

 そう叫び、岳は斧を降ろした。
 そして、手を上に掲げると、黒服達は一斉に射撃してきたが、俺はそれを回避した。
 すると、ミストが展開され、俺はその中で黒服達を蹴りで気絶させた。
 ミストが晴れ、俺は岳の目の前に立った。

 「俺はあそこまで条件を破ったのに、お前は人質を殺そうとする素振りを見せない……ってよりは、恐れてる。……救えるかどうかなんて分からない。ただ、真相が知りたい。」

 すると、岳は斧を地面に落とし、膝を地面に着けた。

 「こんな精神状態じゃ俺が負ける。話してやる。奴らの凶悪さと、俺に起こった出来事を。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

処理中です...