多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅥ:Signpost

No92.Friend to join

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 髪を束ね、喋り方もフレッシュになり、全体的に明るくなった波瑠だ。

 「おはよう。……雰囲気変わった?」

 「えへへ…そう……かな?」

 元々可愛らしかった仕草は、より磨きが掛かっている。俺が不在の一週間の間に、一体どんな心変わりがあったというのか。

 「待ってよ波瑠!」

 後ろから、もう一人走ってきた。

 「あ…ごめん。」

 「久しぶりね。旋梨。」

 「そうだなぁ。真依。」

 「二人とも!早く行こ?」

 そう言うや否や、波瑠は元気よく走っていった。隣では、真依がやれやれといった様子だ。

 「波瑠に何があったんだ?」
 
 「まぁ……ちょっとね。」

 「……分かったよ。また話せる状態になったらお願いね。」

 それが良い理由なのか悪い理由なのかは分からないが、今は触れるべきではない。
 しばらく沈黙の中歩いていると、真依が口を開いた。

 「今日の放課後…会える?」

 「会えるけど……。」

 「そう…。じゃあ、公園で。あの日の場所ね。」

 「分かった。」

 そう約束をして、一日を過ごした。学校の方は特に異常なし。というか、音沙汰が無いため、しばらくは普通の日常が続くだろう。
 いや、俺にとってどちらが普通なのだろうか。歪も不在だし。







 放課後、約束の場所に着いた。ここは、波瑠とデートで来て、最初の告白をされた場所。互いに曖昧なまま終わったが。
 あの日、俺は真依をこの場所で助けた。なので、ここは真依にとっても縁があるのだろう。

 「来たね。旋梨。」

 「来たぞ。用件は察している。」

 「だよね…。私……せ、旋梨の事が好き。だ、だから…付き合ってほしいの。」

 「ごめんなさい。」

 一切の迷いも無く、俺は振った。あまりアピールしない状態での告白。彼女も、期待が薄いものになっていたのだろう。

 「ありがとう。こんな事に付き合ってくれて。どうしても、伝えないと後悔する気がして……。」

 「……こちらこそ悪いな。俺は、もう恋に落ちている。」

 「謝る事じゃないよ。……波瑠なら、許せるから。」

 彼女はそう言って笑っているが、内心泣きたい気持ちでいっぱいだろう。
 俺がもし普通の学生として青春を謳歌していたなら、心が変わるきっかけを作れたかもしれない。
 だけど、波瑠という存在は強かった。あの日、因縁の敵から彼女を守った時、ずっと守り続けたい。不意にそう思ってしまったから。

 「これからも友達としてよろしく頼むよ。」

 「ええ。」

 互いに心残りを払拭し、俺は帰路に着こうとしたが、真依が「待って!」と引き止めた。
 俺が足を止めると、続いてこう言った。

 「聞かせてほしい。力になれるかは分からないけど……。」

 「……気づいていたのか。違和感に。」

 「それはそうでしょ!結構雰囲気?で、分かるものよ。あ、安心して。私がそういうのに敏感なだけで、分かりやすいわけじゃないから。」

 一瞬ヒヤッとした。バレるなら、派遣任務の意味が無くなってしまうから。

 「羽崎さんの店で詳しく話そう。ただし、口外は厳禁で。それと……社会情勢の裏を知ることは、それなりのリスクを伴うが……それでも?」

 「ええ。今、何が起こっているのか知っておきたい。リスクなら、貴方と関わった時点で覚悟している。」







 場所を移し、羽崎さんの店。羽崎さんも絡む話だし、資料もあるから。
 手始めに、現在の社会情勢と、俺がどういった存在なのかを話した。





 「なるほど……そんな事があったのね。聖薇さんは敵に覚えられて関東に帰ってこられない。凛は敵に攫われてしまったと。あの二人が行方不明になってるのはそういう理由だったのね。」

 「ちなみに聞くが、学校の方は変わりないのか?」

 「中央区、千代田区に入った人は漏れなく行方不明になっているわ。うちの生徒でも被害者は居る。」

 「敵は政権持ってるからなぁ。やはりその辺りはもう手が及んでいたか。」

 生命再起会が無差別誘拐しているようには見えない。現状は凛と四季恋音が攫われている。
 共通点は暗殺者界隈に革命を齎したあの二人の守りたい人であること。百合の事故が意図されたものであるとすれば、辻褄はある。
 ただ、気になるのは、“何故、彼らを誘発するような行為”をするのかだ。
 生命再起会側には、何のメリットもない行動のはずだ。つまり、そうしなればならなかった理由があるはずだ。
 
 「攫われたのは彼女らだけじゃない。被害者の共通点、何かありそうだな…。また今度、仲間に伝えておくよ。」

 「私は戦闘は出来ないけど、支える覚悟は出来ている。今の私達の平和を脅かしかねないのなら、私も協力したい。」

 「頼もしいな。何か困った事があったら、羽崎さんに聞いて。彼なら並大抵の脅威は排除出来るから。」

 「分かったわ。」

 予想外の収穫を得た。Mythologyの情報共有があるとはいえ、皆地域がばらばらだ。頼れる人がいることは、とてもありがたい。

 「貴方も話してくれたし、私も話さないとね。波瑠の身に起きた事について……。」

 「勝手に話してよいものなのか?」

 「本人は無意識だからね。それに、貴方には素性を知っておいてほしいし。」

 「……なら、頼んだ。」
 

 
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