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ChapterⅥ:Signpost
No91.The strongest inheritance
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到着早々、旧サイレンス本部に足を運ぶが、もうすっかり片付いている。中部に物資なども運び終わり、敷地も売却されている。
「ここからどう動くか。」
「まずは状況把握が先決です。これまで通りの日常を送りながら、生命再起会の動向を探りましょうか。三日に一度、この場所で集って情報整理と共有をします。この流れで大丈夫ですか?」
葉桜さんがそう言うと、メンバー全員頷いた。承認された。
「では、互いに健闘を祈ります。」
そうして、俺達は別行動を開始した。
とは言っても、俺の住居はサイレンスのシェアハウス。勿論、今は関東に無い。そうなれば、借りられる場所といえばここしかない。
「羽崎さん。派遣任務に参りました。ここを俺の活動拠点にさせていただけないでしょうか。お願いします。」
そう言って土下座した。元サイレンスの暗殺者だった経歴を持ち、我々に手厚い人物。
羽崎さんなら、信頼にも十分に値する。
「構わないぞ。事情も把握している。これまでもしょっちゅうあった事だしな。」
「ありがとうございます。」
なんとか、居場所に困る事は無くなった。テント暮らしだけはごめんだから助かった。
流石に住まわせてもらったなら何かしないといけないと思い、夕飯を作った。
シェアハウスで何度かしているため、最低限の知識はある。
それにしても、食材が限定的な上、量も少ないため苦労した。多分自炊はあまりしてないのだろう。
「柊司令はどんな最期だったんだ。」
食事をしていると、羽崎さんはそう聞いてきた。
「俺はその場所に居合わせていませんでした。紅月に全てを託したそうです。」
「そうか……。柊はいい奴だったさ。俺のサイレンス時代はあまり話した事がないだろう。聞きたいか?」
「是非。」
「俺と柊は同期だ。Enterが結成される前までの時代。初期サイレンスで最強だったチーム「Uroboros」に所属していた。柊の父…初代司令は癌を患っていて、すぐに亡くなられてしまった。その頃には我々も三十代でね、柊が次期司令に任命された時にUroborosを解散して、俺はあの世界から手を退いた。」
「その割には羽崎さん、サイレンスのサポートを裏でしていますが。」
「やっぱり心配なんだよ。いつ、どこで、誰が死ぬか分からないから。凶悪犯罪率も増加傾向にあり、人材育成も間に合っていなかったし。柊の父が目指したのは、平和のための暗殺機構。分かっている。誰も殺されなくてよいのが一番平和だって。しかし、何十億単位の心には、邪念が底に眠っている。生命の秩序を守るため、邪念が露呈した人間は元に戻さないといけない。外部に被害が及ぶから。もし、元に戻らなかったら……。」
「殺すしか……ないと。」
「そうだ。だから、華隆慈穏という男が現れた時は希望を感じたよ。彼なら誰も死ななくて済むって。彼はまさに伝説だった。聖薇薔羨もそうだ。どうしようも無くなった心を黄泉送りにする時、こちらが黄泉送りにされる可能性もある。しかし、彼の強さは怪物だった。無駄な犠牲を払わず、対象だけを見事に黄泉送りにした。」
「この二人がサイレンスの神話を創り上げた…。羽崎さん、Mythologyは、歴代の最強チームに匹敵できるでしょうか。どうにも自信が無いです。」
「匹敵どころじゃない。これから、君達は飛躍する。生命再起会の歪んだ計画を阻止するのだ。だって君達は、初代最強の俺と、元最強チームのリーダー慈穏の手で育成されている。旋梨と歪。かつての無敵タッグを体現する形となるだろう。Enterのメンバーだった愛沙ちゃんもまだ着いてるし、愁、夕憧ちゃん、夜空も才能の塊だ。Mythologyはまだ発展途上。これから神話となる存在になっていくものだよ。」
「……自信が少しは付きました。ありがとうございます!」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。また歪にも伝えておいてくれ。」
こうして食事を終え、明日に備えた睡眠を取った。
正直、怖い。俺はずっと留守で、歪は居なくて、凛も消息不明。その真相を知っている俺が、馴染めるのかって。また、あの日常を一時でも送れるのかって。ただ、俺は決意を固めてここに派遣されてきた。後戻りする気は無い。
朝、登校の時間。一人で歩いていると、手を取られた。その方向を振り向くと、彼女はそう言った。
「おはよう。旋梨君。」
「ここからどう動くか。」
「まずは状況把握が先決です。これまで通りの日常を送りながら、生命再起会の動向を探りましょうか。三日に一度、この場所で集って情報整理と共有をします。この流れで大丈夫ですか?」
葉桜さんがそう言うと、メンバー全員頷いた。承認された。
「では、互いに健闘を祈ります。」
そうして、俺達は別行動を開始した。
とは言っても、俺の住居はサイレンスのシェアハウス。勿論、今は関東に無い。そうなれば、借りられる場所といえばここしかない。
「羽崎さん。派遣任務に参りました。ここを俺の活動拠点にさせていただけないでしょうか。お願いします。」
そう言って土下座した。元サイレンスの暗殺者だった経歴を持ち、我々に手厚い人物。
羽崎さんなら、信頼にも十分に値する。
「構わないぞ。事情も把握している。これまでもしょっちゅうあった事だしな。」
「ありがとうございます。」
なんとか、居場所に困る事は無くなった。テント暮らしだけはごめんだから助かった。
流石に住まわせてもらったなら何かしないといけないと思い、夕飯を作った。
シェアハウスで何度かしているため、最低限の知識はある。
それにしても、食材が限定的な上、量も少ないため苦労した。多分自炊はあまりしてないのだろう。
「柊司令はどんな最期だったんだ。」
食事をしていると、羽崎さんはそう聞いてきた。
「俺はその場所に居合わせていませんでした。紅月に全てを託したそうです。」
「そうか……。柊はいい奴だったさ。俺のサイレンス時代はあまり話した事がないだろう。聞きたいか?」
「是非。」
「俺と柊は同期だ。Enterが結成される前までの時代。初期サイレンスで最強だったチーム「Uroboros」に所属していた。柊の父…初代司令は癌を患っていて、すぐに亡くなられてしまった。その頃には我々も三十代でね、柊が次期司令に任命された時にUroborosを解散して、俺はあの世界から手を退いた。」
「その割には羽崎さん、サイレンスのサポートを裏でしていますが。」
「やっぱり心配なんだよ。いつ、どこで、誰が死ぬか分からないから。凶悪犯罪率も増加傾向にあり、人材育成も間に合っていなかったし。柊の父が目指したのは、平和のための暗殺機構。分かっている。誰も殺されなくてよいのが一番平和だって。しかし、何十億単位の心には、邪念が底に眠っている。生命の秩序を守るため、邪念が露呈した人間は元に戻さないといけない。外部に被害が及ぶから。もし、元に戻らなかったら……。」
「殺すしか……ないと。」
「そうだ。だから、華隆慈穏という男が現れた時は希望を感じたよ。彼なら誰も死ななくて済むって。彼はまさに伝説だった。聖薇薔羨もそうだ。どうしようも無くなった心を黄泉送りにする時、こちらが黄泉送りにされる可能性もある。しかし、彼の強さは怪物だった。無駄な犠牲を払わず、対象だけを見事に黄泉送りにした。」
「この二人がサイレンスの神話を創り上げた…。羽崎さん、Mythologyは、歴代の最強チームに匹敵できるでしょうか。どうにも自信が無いです。」
「匹敵どころじゃない。これから、君達は飛躍する。生命再起会の歪んだ計画を阻止するのだ。だって君達は、初代最強の俺と、元最強チームのリーダー慈穏の手で育成されている。旋梨と歪。かつての無敵タッグを体現する形となるだろう。Enterのメンバーだった愛沙ちゃんもまだ着いてるし、愁、夕憧ちゃん、夜空も才能の塊だ。Mythologyはまだ発展途上。これから神話となる存在になっていくものだよ。」
「……自信が少しは付きました。ありがとうございます!」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。また歪にも伝えておいてくれ。」
こうして食事を終え、明日に備えた睡眠を取った。
正直、怖い。俺はずっと留守で、歪は居なくて、凛も消息不明。その真相を知っている俺が、馴染めるのかって。また、あの日常を一時でも送れるのかって。ただ、俺は決意を固めてここに派遣されてきた。後戻りする気は無い。
朝、登校の時間。一人で歩いていると、手を取られた。その方向を振り向くと、彼女はそう言った。
「おはよう。旋梨君。」
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