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ChapterⅥ:Signpost
No90.Black Rose
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睨み合いが終わると、先制したのは彼岸の方だった。地を蹴って跳び上がり、ハンマーを叩きつけようとしてきたが、俺はそれを容易く躱す。
「オラァァァ!」
しかし、奴はその怪力でハンマーを振り上げてきた。すぐに反応出来た俺は地を軽く蹴り上げ、危機一髪で回避した。
そして空中で照準を定め、奴の腹部を撃ち抜いた。
「がはっ!」
引き金を引き終えた俺はすぐに腰のロープを投げ、着地と同時に奴を引き寄せた。
奴は腹部の抑えていたため、引っ張られる際にハンマーを手放したようだ。
「誰が蹂躙のプロフェッショナルだって?……特製ロープが人間の力で引き千切れると思うか。お前の負けだ。」
聞いていた話より全然弱い。どうやら、過大評価し過ぎていた。
奴はまだ終わりじゃないと言わんばかりに暴れるが、無駄な抵抗となった。
「さぁ話せ。お前達は何がしたい。そして、葵が必要だった理由を。」
「はん!俺様は何も………ッ!」
「あー悪い。つい発砲したわ。……約束が守れないなら首が飛ぶぞ。覚えておきな。」
「……Hades、Zeus。この二大組織から派生し、それらが統合されて成るのが生命再起会だ。」
「……責任者は。」
「……。」
「あくまでも、自分の命より責務を全うしようとするか。……いいよ、手掛かり一つあれば特定出来るから。」
そう言い放し、銃口を奴の額に当てた。
「誰に従ったかは知らないが、葵を攫った張本人を生かす気は最初から無い。彼岸、お前の操者はいづれ破滅する。どちらを呪うかは心底どうでもいい。……選ばしてやるよ。俺は対魂で無くなる。お前の遺言は次の俺の命名で終わる。自分を殺した人間のな。」
引き金に指を掛け、奴の返答を待った。
「蝙蝠は黒薔薇がどうとか言っていたな。蓬萊の遺言らしい。」
「……伝えてくれて感謝する。」
そう口に零し、引き金を引いた。
Asmodeus彼岸銃殺。対魂としての任務を完遂し、俺は「黒薔薇」となった。
仙台国家秘密研究を制圧した俺は、すぐに葵の容態を確認しにいった。
間近で見ると、呼吸はある。つまり死んではいない。カプセルを展開して葵を出して、分析を開始した。
しかし、目を覚ます事は無かった。どうやら、“意識”が抜かれたようだ。研究対象のデータ資料には、『対象:恵蜜葵 に不要な意識及び記憶は、厳重に隔離保管をする。』と記載されていた。
「……違う。俺は身体だけが欲しいんじゃない。“心”も欲しいんだ…!」
今の彼女は、言わば植物状態。生きていたことには一安心だが、これでは意味が無い。“記憶”を取り戻さねば……。
その日は研究所内にあるデータを隅々まで閲覧しながら、死体や残骸を片付けていた。
判明したこともいくつかある。
一つは生命再起会は行政に携わる事。一つは人為的に気象を操作する技術を有する事。そして、もう一つは“有能な母体から人間を複製し、新たな社会の礎を構成しようとしている”事だ。
少子高齢化問題を強引に解決しようした計画にあたる。近い未来、確実に実害を及ぼす。俺だけでなく、全日本国民に。いや、下手したら全人類かもしれない。
葵(身体)奪還から年月が流れ、俺は旧Enterと合流した。愛沙は提案に応じてくれなかったが。
そこにLeviathanも招集し、計画阻止と葵の記憶を取り戻す手掛かりを探すために動き出した。
同時期、生命再起会の技術が暴走したからか、日本で異常気象が多発。
勿論、その正体が連中の仕業とは知らないが、政府が勝手に自爆したお陰で、日本の派閥が綺麗に分断された。
これを好機と見た俺は、反政府の荒れ狂う国民を一気に味方に付けるため、抵抗推進機構「プレデスタンス」を設立し、対政府戦に備えた。
そして、こんな情勢の中、政府側では清心将角という男が一気に権力を強めた。彼は生物の秩序に関して熱心であり、生命再起会の黒幕は間違いなくこいつだと確信した。
Episode:Black Rose Fin
「ここからは、お前が知っての通りだ。」
壮絶な過去だった。俺の前に現れなくなった兄上は、葛藤し続けていたのだ。
自身のため、仲間のため、国民のために。日陰で、日向に照らされ本性を隠す存在を探っていた。
絶望しても決して挫折しないその姿は、華隆さんの片割れとして、納得のいき過ぎるものだった。
「兄上……一生ついて行きたい。」
「信じてついて来い。闇夜に紛れて闇夜を払うぞ。」
士気が高まった俺は、身体を動かさずにはいられず、気づけば射撃場に移動していた。
関東。魔境と化したこの地域も、まだ活気が失われるほど侵食されているのは、中区のみだ。
俺達の住んだ町は、“今は”これまで通りの情景だ。
「ただいま。」
Episode:Melody
~Dissonance~
to be the continue
「オラァァァ!」
しかし、奴はその怪力でハンマーを振り上げてきた。すぐに反応出来た俺は地を軽く蹴り上げ、危機一髪で回避した。
そして空中で照準を定め、奴の腹部を撃ち抜いた。
「がはっ!」
引き金を引き終えた俺はすぐに腰のロープを投げ、着地と同時に奴を引き寄せた。
奴は腹部の抑えていたため、引っ張られる際にハンマーを手放したようだ。
「誰が蹂躙のプロフェッショナルだって?……特製ロープが人間の力で引き千切れると思うか。お前の負けだ。」
聞いていた話より全然弱い。どうやら、過大評価し過ぎていた。
奴はまだ終わりじゃないと言わんばかりに暴れるが、無駄な抵抗となった。
「さぁ話せ。お前達は何がしたい。そして、葵が必要だった理由を。」
「はん!俺様は何も………ッ!」
「あー悪い。つい発砲したわ。……約束が守れないなら首が飛ぶぞ。覚えておきな。」
「……Hades、Zeus。この二大組織から派生し、それらが統合されて成るのが生命再起会だ。」
「……責任者は。」
「……。」
「あくまでも、自分の命より責務を全うしようとするか。……いいよ、手掛かり一つあれば特定出来るから。」
そう言い放し、銃口を奴の額に当てた。
「誰に従ったかは知らないが、葵を攫った張本人を生かす気は最初から無い。彼岸、お前の操者はいづれ破滅する。どちらを呪うかは心底どうでもいい。……選ばしてやるよ。俺は対魂で無くなる。お前の遺言は次の俺の命名で終わる。自分を殺した人間のな。」
引き金に指を掛け、奴の返答を待った。
「蝙蝠は黒薔薇がどうとか言っていたな。蓬萊の遺言らしい。」
「……伝えてくれて感謝する。」
そう口に零し、引き金を引いた。
Asmodeus彼岸銃殺。対魂としての任務を完遂し、俺は「黒薔薇」となった。
仙台国家秘密研究を制圧した俺は、すぐに葵の容態を確認しにいった。
間近で見ると、呼吸はある。つまり死んではいない。カプセルを展開して葵を出して、分析を開始した。
しかし、目を覚ます事は無かった。どうやら、“意識”が抜かれたようだ。研究対象のデータ資料には、『対象:恵蜜葵 に不要な意識及び記憶は、厳重に隔離保管をする。』と記載されていた。
「……違う。俺は身体だけが欲しいんじゃない。“心”も欲しいんだ…!」
今の彼女は、言わば植物状態。生きていたことには一安心だが、これでは意味が無い。“記憶”を取り戻さねば……。
その日は研究所内にあるデータを隅々まで閲覧しながら、死体や残骸を片付けていた。
判明したこともいくつかある。
一つは生命再起会は行政に携わる事。一つは人為的に気象を操作する技術を有する事。そして、もう一つは“有能な母体から人間を複製し、新たな社会の礎を構成しようとしている”事だ。
少子高齢化問題を強引に解決しようした計画にあたる。近い未来、確実に実害を及ぼす。俺だけでなく、全日本国民に。いや、下手したら全人類かもしれない。
葵(身体)奪還から年月が流れ、俺は旧Enterと合流した。愛沙は提案に応じてくれなかったが。
そこにLeviathanも招集し、計画阻止と葵の記憶を取り戻す手掛かりを探すために動き出した。
同時期、生命再起会の技術が暴走したからか、日本で異常気象が多発。
勿論、その正体が連中の仕業とは知らないが、政府が勝手に自爆したお陰で、日本の派閥が綺麗に分断された。
これを好機と見た俺は、反政府の荒れ狂う国民を一気に味方に付けるため、抵抗推進機構「プレデスタンス」を設立し、対政府戦に備えた。
そして、こんな情勢の中、政府側では清心将角という男が一気に権力を強めた。彼は生物の秩序に関して熱心であり、生命再起会の黒幕は間違いなくこいつだと確信した。
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「ここからは、お前が知っての通りだ。」
壮絶な過去だった。俺の前に現れなくなった兄上は、葛藤し続けていたのだ。
自身のため、仲間のため、国民のために。日陰で、日向に照らされ本性を隠す存在を探っていた。
絶望しても決して挫折しないその姿は、華隆さんの片割れとして、納得のいき過ぎるものだった。
「兄上……一生ついて行きたい。」
「信じてついて来い。闇夜に紛れて闇夜を払うぞ。」
士気が高まった俺は、身体を動かさずにはいられず、気づけば射撃場に移動していた。
関東。魔境と化したこの地域も、まだ活気が失われるほど侵食されているのは、中区のみだ。
俺達の住んだ町は、“今は”これまで通りの情景だ。
「ただいま。」
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~Dissonance~
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