89 / 150
ChapterⅥ:Signpost
No89.Don't miss anyone
しおりを挟む
ターゲット座標に到着した。仙台国家秘密研究区域。一般人お断りのこの地域は、警備が非常に厳しい。しかし、俺にかかれば余裕だ。僅か三時間で、研究所に到着した。
研究所は非常に巨大な建造物であり、ロボットが巡回していた。しかし、建物はコンクリート性の普通なものである。
「………行きますか……住処へ。」
調べた情報によると、この研究所にはHadesと呼ばれる防衛集団が常駐しているらしい。
その中でも元殺し屋の Asmodeus彼岸がリーダー格だ。任務目標は葵の奪還だが、そいつの撃破も避けては通れぬ道だろう。
相手は国の機関だ。しかし、俺が怖気づく事は無い。相棒を殺され、想い人を攫われ、挙句の果てに貴重で大切な時間を奪ったこいつを……生かす価値などない。
俺は仲間達の片割れに過ぎない。慈穏に慈悲の感情が宿されているなら、片割れの俺は無慈悲。つまり“負”の感情を担う事になる。
それ以外でもだ。先日、弟の記憶が消去されたという情報を耳にした。兄弟の片割れにもなってしまった。
この“対魂”というコードネームは、俺の負の未来を暗示していたように感じた。相方の魂の片割れという意味での命名だったはずが、今や“誰かの正反対の魂”。
合わさっているから均衡を保てるのであって、片方が潰れれば不安定になる不良品。
ならば……不良品らしく私怨を暴走させ、屈辱を晴らしてやる。そして、心残りなくこの名を捨てるまでだ。
「対魂。最終任務遂行。」
拳銃を構え、腰のロープをいつでも使える態勢を整え、俺は屋根から飛び降りた。
「敵襲!敵襲!直ちに射撃を行え!」
威嚇に一発煙幕を放つと、次々とHadesの下っ端共が射撃を開始した。
精度はそれなりに鍛えられている。だが。
「足元にも及ばないわ。……下等人。」
俺は壁を蹴りながら複雑に軌道を変えながら動き、奴らの攻撃を回避した。
そして、一発グレネードを投げ込むと、三十人余りの分隊は一瞬で命を落とした。
「目立ち過ぎたか。……いや、これは暗殺じゃねぇ。“虐殺だ。”」
その場を走り抜け、窓ガラスを銃弾で割り、内部へと侵入した。
研究所の内部は危険物だらけのため、無闇に爆破とかは出来ない。まとめて一掃する事はできないが、一人一人、確実に仕留めれば良いだけだ。
今回、潰すのはHadesだけじゃない。ここに居る奴漏なく全員だ。
「敵だ!撃て!」
三人の下っ端が廊下の死角から出てきて銃を構えるが、奴らが引き金を引くより先に、俺の弾が連中の一人の脳を破損させて。
「お、怖気づくな!」
一歩後退したものの、そう言って一人が発砲した。しかし、意外性が無さ過ぎる上、全く読めていない。
俺は隙かさず奴を撃ち抜いた。
「ヒィ!」
残りの一人は恐怖したのか、尻餅をついた。そして恐怖のあまりか、俺に震える手で銃口を突き付けた。
「重力が働く限り、遅延がある。なぁ、お前達はどこ狙って撃っている?相手の動きを予測して、偏差撃ちしなければ俺の心臓は貫けねぇよ。……お前達みたいに棒立ちの的じゃないんだからさ。」
ゼロ距離でスコープで狙いを定め、怯える最後の下っ端を撃ち抜いた。
にしても拍子抜けな奴らだ。こいつら弱いのか。それとも俺が強いのか。
どちらにせよ、ハッキングで抜いた情報だと、この程度の奴らとは思えない。まだ対面出来ていない。奴と。
戦闘員は数を減らし、研究員は逃げ惑い始めたが、当然逃がす気は無い。
既に二百メートルほど離れた奴であっても、俺の射撃からは逃れられない。速射可能スコープ式のリボルバーという敷居の高い機関銃だが、俺の腕にはすっかり馴染んでいる。最早第三の手だ。
気配を感じ取っては射抜き、抵抗者が現れたら回避して射抜く。これを繰り返しながら広い研究所内を探索し、遂に目的の場所に着いた。
正六角形の部屋。壁はガラスとなっており、様々な生物のキメラが液体の中で眠っていた。そんな中、ある一角に姿があった。
「葵……。」
禍々しい紫色の液体に閉じ込められている裸姿の葵。生死は確認できない。
施設内からはすっかり人の気配は消えていた。ここに辿り着くまでに、千七百の命が零れ落ちた。
しかし、まだ一つ気配はある。数時間前からずっと付き纏っているのに、中々アクションを起こさない奴が一人。
「そろそろ出て来いよ。ずっと気づいているぞ。」
部屋が自分の声を反響させる。すると、最後の気配の持ち主が天井の骨組みの上から飛び降りてきた。
「ここに来て油断したところを殺る気だったが……気づいていたか。」
「気色悪い奴だ。奇襲を警戒していたが、何もしてこないから逆に恐ろしかったな。……お前が彼岸か。」
「何故知っている?そう言えば、蝙蝠がサーバーにハッキングされた形跡があると言っていた。貴様の仕業か。」
「俺が直接やったわけじゃないが、まぁ、そんなところ。はぁ……テメェには聞きたい事が山程あるんだが……手合わせが先でいいな?」
「俺様は蹂躙のプロフェッショナルだ。ただ、貴様はどうやら退屈させないそうじゃないか!互いに半殺しで拷問権を得る。それでいこうか。」
「……臨む。」
互いに睨みつけ合い、俺は拳銃、彼岸はハンマーを構えた。
さぁ…“何倍にして返してやろうか”。
研究所は非常に巨大な建造物であり、ロボットが巡回していた。しかし、建物はコンクリート性の普通なものである。
「………行きますか……住処へ。」
調べた情報によると、この研究所にはHadesと呼ばれる防衛集団が常駐しているらしい。
その中でも元殺し屋の Asmodeus彼岸がリーダー格だ。任務目標は葵の奪還だが、そいつの撃破も避けては通れぬ道だろう。
相手は国の機関だ。しかし、俺が怖気づく事は無い。相棒を殺され、想い人を攫われ、挙句の果てに貴重で大切な時間を奪ったこいつを……生かす価値などない。
俺は仲間達の片割れに過ぎない。慈穏に慈悲の感情が宿されているなら、片割れの俺は無慈悲。つまり“負”の感情を担う事になる。
それ以外でもだ。先日、弟の記憶が消去されたという情報を耳にした。兄弟の片割れにもなってしまった。
この“対魂”というコードネームは、俺の負の未来を暗示していたように感じた。相方の魂の片割れという意味での命名だったはずが、今や“誰かの正反対の魂”。
合わさっているから均衡を保てるのであって、片方が潰れれば不安定になる不良品。
ならば……不良品らしく私怨を暴走させ、屈辱を晴らしてやる。そして、心残りなくこの名を捨てるまでだ。
「対魂。最終任務遂行。」
拳銃を構え、腰のロープをいつでも使える態勢を整え、俺は屋根から飛び降りた。
「敵襲!敵襲!直ちに射撃を行え!」
威嚇に一発煙幕を放つと、次々とHadesの下っ端共が射撃を開始した。
精度はそれなりに鍛えられている。だが。
「足元にも及ばないわ。……下等人。」
俺は壁を蹴りながら複雑に軌道を変えながら動き、奴らの攻撃を回避した。
そして、一発グレネードを投げ込むと、三十人余りの分隊は一瞬で命を落とした。
「目立ち過ぎたか。……いや、これは暗殺じゃねぇ。“虐殺だ。”」
その場を走り抜け、窓ガラスを銃弾で割り、内部へと侵入した。
研究所の内部は危険物だらけのため、無闇に爆破とかは出来ない。まとめて一掃する事はできないが、一人一人、確実に仕留めれば良いだけだ。
今回、潰すのはHadesだけじゃない。ここに居る奴漏なく全員だ。
「敵だ!撃て!」
三人の下っ端が廊下の死角から出てきて銃を構えるが、奴らが引き金を引くより先に、俺の弾が連中の一人の脳を破損させて。
「お、怖気づくな!」
一歩後退したものの、そう言って一人が発砲した。しかし、意外性が無さ過ぎる上、全く読めていない。
俺は隙かさず奴を撃ち抜いた。
「ヒィ!」
残りの一人は恐怖したのか、尻餅をついた。そして恐怖のあまりか、俺に震える手で銃口を突き付けた。
「重力が働く限り、遅延がある。なぁ、お前達はどこ狙って撃っている?相手の動きを予測して、偏差撃ちしなければ俺の心臓は貫けねぇよ。……お前達みたいに棒立ちの的じゃないんだからさ。」
ゼロ距離でスコープで狙いを定め、怯える最後の下っ端を撃ち抜いた。
にしても拍子抜けな奴らだ。こいつら弱いのか。それとも俺が強いのか。
どちらにせよ、ハッキングで抜いた情報だと、この程度の奴らとは思えない。まだ対面出来ていない。奴と。
戦闘員は数を減らし、研究員は逃げ惑い始めたが、当然逃がす気は無い。
既に二百メートルほど離れた奴であっても、俺の射撃からは逃れられない。速射可能スコープ式のリボルバーという敷居の高い機関銃だが、俺の腕にはすっかり馴染んでいる。最早第三の手だ。
気配を感じ取っては射抜き、抵抗者が現れたら回避して射抜く。これを繰り返しながら広い研究所内を探索し、遂に目的の場所に着いた。
正六角形の部屋。壁はガラスとなっており、様々な生物のキメラが液体の中で眠っていた。そんな中、ある一角に姿があった。
「葵……。」
禍々しい紫色の液体に閉じ込められている裸姿の葵。生死は確認できない。
施設内からはすっかり人の気配は消えていた。ここに辿り着くまでに、千七百の命が零れ落ちた。
しかし、まだ一つ気配はある。数時間前からずっと付き纏っているのに、中々アクションを起こさない奴が一人。
「そろそろ出て来いよ。ずっと気づいているぞ。」
部屋が自分の声を反響させる。すると、最後の気配の持ち主が天井の骨組みの上から飛び降りてきた。
「ここに来て油断したところを殺る気だったが……気づいていたか。」
「気色悪い奴だ。奇襲を警戒していたが、何もしてこないから逆に恐ろしかったな。……お前が彼岸か。」
「何故知っている?そう言えば、蝙蝠がサーバーにハッキングされた形跡があると言っていた。貴様の仕業か。」
「俺が直接やったわけじゃないが、まぁ、そんなところ。はぁ……テメェには聞きたい事が山程あるんだが……手合わせが先でいいな?」
「俺様は蹂躙のプロフェッショナルだ。ただ、貴様はどうやら退屈させないそうじゃないか!互いに半殺しで拷問権を得る。それでいこうか。」
「……臨む。」
互いに睨みつけ合い、俺は拳銃、彼岸はハンマーを構えた。
さぁ…“何倍にして返してやろうか”。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる