多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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ChapterⅥ:Signpost

No88.The lost half soul

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 ある日の夜、俺は任務を終え、灯台に向かっていた。
 先月、華隆一族は破滅した。相手の素性は分からないが、家が放火され、家族の死体には銃痕が残されていた。
 元々実家にはあまり帰っていないが、もうあの場所に戻るのは危険だろう。
 俺が灯台の麓に滞在する理由、それは夜の海辺という危険な場所だからだ。素性的に警察とは関わりたくないものだ。







 明確な殺意の察知した俺は咄嗟に二丁拳銃を取り出し、水中から出てきたドローンを撃ち落とした。
 そして、視線の出処である灯台の上を見上げ、口を開いた。

 「随分巧妙なやり方だね。ただ、まだまだだ。」

 すると、ドローンを操っていたであろう男は、飛び降りてきた。ドローンに掴まって飛行し、無傷だった。

 「貴方に真っ向で戦うなんて無謀な手段は取りませんよぉ。本当なら、外に顔を出したくないんですがぁ。」

 その男に銃口を突き付けた。そして、言葉を連なれる。

 「何が目的?お前の仲間だよな?葵を攫った奴も、一族を壊滅させた奴も。」

 「ほぉ、見事です。どうして分かった。」

 「……何となく?この奇妙な連鎖が続くタイミングで、お前がここに来たことが、繋がりを感じさせてしまう。それを踏まえてもう一度聞く。…何が目的だ。」

 「名乗り遅れましたね。私は Zeus開発委員……」

 「答えろ。」

 語気を強め、問う。俺の長年の勘が、こいつに対し危険信号を出している。
 ただの暗殺者では無い。確実に裏があるはずだ。

 「私は私の信仰する議員様の望みを実現するために動いてるだけです。…その過程で貴方が邪魔。だから、排除する。」

 奴はそう言って、ドローンを起動させた。ドローンはタレットを積んでおり、それが複数台ある。

 「抱擁の神、蓬萊よぉ。私はただドローンを作り、指示を送ることしか出来ない。凶悪犯であっても殺すのを渋った貴方に私を撃てますかぁ?」

 「はっ……舐めるな。元々、俺は狂った。今更…だろ?」

 手始めに前方のドローンを破壊し、後方からの射撃を避けながら後ろに回り、撃ち壊した。
 そして奴の背後を取り、銃口を頭に突き付けた。

 「お前の持っている組織の情報を嘘偽り無く提示し、スパイ活動又は葵を解放するなら、お前の命は奪わない。選べ。生きるか、死ぬか。」

 そう問うと、奴は声を出して笑い始めた。

 「何がおかしい。撃つぞ?」

 「いやぁ何って……貴方が何故最強だったのか疑問に思いまして!」

 「ッ!」

 刹那、俺の身体は重くなり、地面に押さえ付けられた。上を見上げると、ドローンが落としたと見られる瓦礫の下敷きになっていた。
 奴は嘲笑しながら、地面に這いつくばる俺に目線を合わせる。

 「確かに貴方は強かった。ただ……捕縛できる奴はせいぜい頭の弱い雑魚共。私のような相手に油断を見せるのは、毒ですよ…。」

 完全に油断していた。ここまで追い詰めても抵抗してくる奴とは、今まで一度も会っていない。

 「殺せるタイミングはいくらでもあった。しかし!貴方の個性である“思いやり”が悪く作用したようですねぇ。この瓦礫は、筋肉質なガタイのいい成人男性でも保って十分で圧死する。貴方ならもっと早いんじゃないですか。」

 「はぁ……はぁ……とんだ畜生野郎だ。」

 「負け犬は吠えていて下さい。サイレンス元最強の暗殺者は、惨めに死を待つ事しか出来ない。憐れですねぇ。」

 そう煽り、奴はその場を後にしようとしたが、俺は引き止める。

 「待ちな。」

 「はい……?まぁ仕方がありませんねぇ。貴方の命が尽きるまで、遠吠えを聞いてあげましょう。」

 「お前達が何を望んでいるかは知らないが、俺の望む世界とはきっとかけ離れているだろう。だからこそ、邪魔なはずだ。それはこっちも同様で、他の誰かにとっても同様だ。」

 「つまり何が言いたい。」

 「……こんな世界で生きてきた人間だ。もし、俺が姿を消した時、意思を受け継ぐものは居る。そこで一つ予言しておこう。……お前達は俺が守り育ててきた仲間と、頼れる仲間に敗北する。黒薔薇、片割れを失い、憎悪を閉じ込める事をやめた相棒の弾丸は、お前達を破滅に導く。対魂そして白薔薇。……二輪の薔薇は、逆境を破る。あいつらは……俺以上に……貪欲だぞ?………薔羨……あいつは……“俺が失った片割れた魂”だ……。」

 蓬萊……華隆慈穏死去。

 「残念ですよぉ……変革者が居なくなるのは。ここからは我々の時代。」

 そう呟き、蝙蝠は今度こそその場を去って行った。







 「………は。……おい、冗談は不要だ。……だってあいつが……あいつがだぞ!……慈穏が…死んだ?」

 あまりのショックと驚きで、俺は放心状態に陥った。その間も、黄牙は言葉を続ける。

 『葵の件とも繋がりがあるようだ。何か組織が……動いてる。』

 「……それってさ…狂わされたんだよな。平穏を。……歯車を。」

 『………。』

 「はぁ……もう連絡してくるな。そして俺を止めるな。多分近々報道される。」

 『待て!お前何を……!』

 彼は何か言っていたが、俺は通話を切り、拳銃を見つめた。
 無性に湧き出続ける憎悪、殺意。このまま終わりたくは絶対に無い。







 面識がある中で一番情報に強い反社会的勢力。Leviathanの元を訪れ、そこで奴らの目的や組織全体の構成、施設などの情報を全て得た。天才ハッカー八のお陰で、十分な知識を入手した。

 「ありがとう。協力してくれて。」

 「対魂さんは我々に居場所を与えてくれた。……頑張ってください。」

 「ああ。」

 甘採にそう告げられ、俺は廃倉庫を後にした。
 明日、俺は仙台国家秘密研究所を襲撃する。目的は単純。葵の奪還と彼岸の抹殺及び、上層部の情報を聞き出す事だ。
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