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ChapterⅤ:Crazy
No79.New system
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兄上について行き研究所を進むと、大量のモニターが貼り付けられた部屋に着いた。
そして、正六角形の部屋の一面が凹んでおり、その奥にはガラスに浸された液体に何か線が結ばれた女性の姿があった。
「ここがプレデスタンス本拠地の中枢部。俺の居間だ。生活スペースは別にあるが、あまり動かないな。」
「それより兄上……気でも狂ったか。」
実際、そう思わざるおえない。窓は無く、照明も無く、モニターから発せられるブルーライトと謎のカプセルの土台から発せられる電飾だけが部屋を包んでいる。
極めつけにはカプセル。人体実験でも行っているかのようだ。
「誤解されても仕方が無いか……。ちょっと訳あってな。また話してやるつもりだ。とりあえず今日はもう寝ろ。今後の事については、明日、揃ったら話すつもりだ。おやすみ。」
俺は兄上に客室へと案内され、色々疲れていた俺はすぐに寝付けたが、それは決して心地のよいものでは無かった。
狂う生活、狂う社会情勢。Mythologyの仲間の安否や、何より凛が不安だ。
歪を部屋に案内した後、俺は撫戯に連絡を試みた。
「撫戯。そっちは……。」
『荒れ放題だ。治安のちの字もねぇ。偶然に連中の犯行を目撃した民間人がデモを起こし、警察に銃撃されている。それに、真っ当な政府と生命再起会…暗黒政府と呼称しようか。奴らの銃撃戦に民間人も巻き込まれている。俺も事務所の人間をお借りして民間人の保護を手伝っている。』
「すまないな。お前の傷も癒えていないのに……。」
『今はそれどころでは無い。確かに腹立たしいが、嘆くだけでは始まらない。もうこれは裏社会でのスケールでは無い。日本全体に関わる話だから。』
俺はこいつの成長を深く感じている。決死の思いで取り返した日常をまた奪われたのに、立ち直りが早い。
今回の場合、個人レベルでは無く国レベルで元の日常が覆ろうとしているため、それも関係しているだろうが。
「……近隣地域だけでも保護が完了したら、東北に送ってくれ。今はここが国内で一番治安が良い。それと、明日に新生サイレンスの重要人物を仙台に来させろ。今後の方針を確認する。」
『了解。』
通話を切り、俺はある部屋をノックした。すると、扉が開いた。
「薔羨。何?」
「三日で慣れるのか。」
「元々の居場所だし多少は……。」
「決めろ。お前は正式にEnterに移籍するのか、それとも、Mythologyを支えるのか。現状は保護という形だ。これはお前が選択することだ。愛沙。」
そう問うと、彼女は少し下を向いて涙を浮かべながら、口を開いた。
「私なんかが戻っていいのかな……?守られてばかりなのに、全然活躍出来なくて……迷惑なんじゃないかなって…ずっと思っていました。」
確かにそうだ。愛沙は弱い。だが、そんな事はどうだっていい。Enterは精鋭部隊として結成された訳では無い。“いつまでも縁が途絶える事の無いようにという証”なのだから。
「愚問だな。守るために入れた奴だっている。Enterはコミュニティの一環だ。新体制になったとしても、その理念は不変だ。それがあの日誓った約束じゃないか。」
「ありがと……でもごめん。きっと迷惑を掛けられない行動をこれからするんだよね?暗殺でも弾圧でも無い。決闘が。」
暗黒政府が支配権を得れば、国民対政府の構図はより顕著になるだろう。
そうなれば、血を流す争いは避けて通れなくなる。説得が無理難題な相手に対して挑むのだ。降伏するという事は、自殺行為に直結する。
「……それがお前の本心か?」
「……はい。」
「なら、俺に止める資格は無いな。若きMythologyを支えてやってくれ。」
愛沙の件はこれで収まった。後は明日を待つだけだ。
東京。一週間前までは夢にも見なかった凄惨な光景が、目に映る。
先日、柊司令の死去に居合わせ託された俺はサイレンスを一度解体し、新体制として新たに設立した。
彩良、莉緒菜の同意を得て俺は最高決定官になり、前線で戦いながら全体の指揮もすることを誓った。
Mythologyなどの旧配属チームも雇い直し、形はある程度整ってきている。
柊司令の件で実質的な敵対宣言だと両者認識したと感じ、中部への新本拠地の建設に着手し始めた。
しばらくは簡易キャンプ的な形になるだろう。
「絆、お客様だよ。」
そう彩良が後ろから声を掛けてきたため、俺は振り返った。
「初めまして。私は元Leviathan所属の讐鈴撫戯と申します。……堅苦しいのは苦手なので敬語を解いても構わないでしょうか?」
「構わない。讐鈴さんの方が歳上ですよね?」
「ああ。急だが明日、仙台に来てほしい。音階と共に。」
俺は隣に居る彩良にこっそり質問した。
「交通機関は稼働しているか。」
「それは大丈夫そうだよ。治安は置いといて。」
災厄が降りかかったら振り払えば良いだけの話だ。
「了解。出席させてもらう。」
後日。プレデスタンス本拠地の会議室にて、重要人物達が集結していた。
「これより、今後の方針についての確認及び決定を行う。私、聖薇薔羨が進行を努めさせてもらいます。」
そして、正六角形の部屋の一面が凹んでおり、その奥にはガラスに浸された液体に何か線が結ばれた女性の姿があった。
「ここがプレデスタンス本拠地の中枢部。俺の居間だ。生活スペースは別にあるが、あまり動かないな。」
「それより兄上……気でも狂ったか。」
実際、そう思わざるおえない。窓は無く、照明も無く、モニターから発せられるブルーライトと謎のカプセルの土台から発せられる電飾だけが部屋を包んでいる。
極めつけにはカプセル。人体実験でも行っているかのようだ。
「誤解されても仕方が無いか……。ちょっと訳あってな。また話してやるつもりだ。とりあえず今日はもう寝ろ。今後の事については、明日、揃ったら話すつもりだ。おやすみ。」
俺は兄上に客室へと案内され、色々疲れていた俺はすぐに寝付けたが、それは決して心地のよいものでは無かった。
狂う生活、狂う社会情勢。Mythologyの仲間の安否や、何より凛が不安だ。
歪を部屋に案内した後、俺は撫戯に連絡を試みた。
「撫戯。そっちは……。」
『荒れ放題だ。治安のちの字もねぇ。偶然に連中の犯行を目撃した民間人がデモを起こし、警察に銃撃されている。それに、真っ当な政府と生命再起会…暗黒政府と呼称しようか。奴らの銃撃戦に民間人も巻き込まれている。俺も事務所の人間をお借りして民間人の保護を手伝っている。』
「すまないな。お前の傷も癒えていないのに……。」
『今はそれどころでは無い。確かに腹立たしいが、嘆くだけでは始まらない。もうこれは裏社会でのスケールでは無い。日本全体に関わる話だから。』
俺はこいつの成長を深く感じている。決死の思いで取り返した日常をまた奪われたのに、立ち直りが早い。
今回の場合、個人レベルでは無く国レベルで元の日常が覆ろうとしているため、それも関係しているだろうが。
「……近隣地域だけでも保護が完了したら、東北に送ってくれ。今はここが国内で一番治安が良い。それと、明日に新生サイレンスの重要人物を仙台に来させろ。今後の方針を確認する。」
『了解。』
通話を切り、俺はある部屋をノックした。すると、扉が開いた。
「薔羨。何?」
「三日で慣れるのか。」
「元々の居場所だし多少は……。」
「決めろ。お前は正式にEnterに移籍するのか、それとも、Mythologyを支えるのか。現状は保護という形だ。これはお前が選択することだ。愛沙。」
そう問うと、彼女は少し下を向いて涙を浮かべながら、口を開いた。
「私なんかが戻っていいのかな……?守られてばかりなのに、全然活躍出来なくて……迷惑なんじゃないかなって…ずっと思っていました。」
確かにそうだ。愛沙は弱い。だが、そんな事はどうだっていい。Enterは精鋭部隊として結成された訳では無い。“いつまでも縁が途絶える事の無いようにという証”なのだから。
「愚問だな。守るために入れた奴だっている。Enterはコミュニティの一環だ。新体制になったとしても、その理念は不変だ。それがあの日誓った約束じゃないか。」
「ありがと……でもごめん。きっと迷惑を掛けられない行動をこれからするんだよね?暗殺でも弾圧でも無い。決闘が。」
暗黒政府が支配権を得れば、国民対政府の構図はより顕著になるだろう。
そうなれば、血を流す争いは避けて通れなくなる。説得が無理難題な相手に対して挑むのだ。降伏するという事は、自殺行為に直結する。
「……それがお前の本心か?」
「……はい。」
「なら、俺に止める資格は無いな。若きMythologyを支えてやってくれ。」
愛沙の件はこれで収まった。後は明日を待つだけだ。
東京。一週間前までは夢にも見なかった凄惨な光景が、目に映る。
先日、柊司令の死去に居合わせ託された俺はサイレンスを一度解体し、新体制として新たに設立した。
彩良、莉緒菜の同意を得て俺は最高決定官になり、前線で戦いながら全体の指揮もすることを誓った。
Mythologyなどの旧配属チームも雇い直し、形はある程度整ってきている。
柊司令の件で実質的な敵対宣言だと両者認識したと感じ、中部への新本拠地の建設に着手し始めた。
しばらくは簡易キャンプ的な形になるだろう。
「絆、お客様だよ。」
そう彩良が後ろから声を掛けてきたため、俺は振り返った。
「初めまして。私は元Leviathan所属の讐鈴撫戯と申します。……堅苦しいのは苦手なので敬語を解いても構わないでしょうか?」
「構わない。讐鈴さんの方が歳上ですよね?」
「ああ。急だが明日、仙台に来てほしい。音階と共に。」
俺は隣に居る彩良にこっそり質問した。
「交通機関は稼働しているか。」
「それは大丈夫そうだよ。治安は置いといて。」
災厄が降りかかったら振り払えば良いだけの話だ。
「了解。出席させてもらう。」
後日。プレデスタンス本拠地の会議室にて、重要人物達が集結していた。
「これより、今後の方針についての確認及び決定を行う。私、聖薇薔羨が進行を努めさせてもらいます。」
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