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ChapterⅤ:Crazy
No78.Black government
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東京の町を兄上の運転するスポーツカーで駆ける。今、俺は生きている心地がしない。まるで夢でも見ているかのようだ。
失っていた記憶は取り戻したが、状況が全く掴めていない。そして、もう一つ謎が生まれた。
それは、Asmodeusが何者なのかという事と、二度に渡って俺から記憶を消そうとした理由、大切な人を奪おうとした理由だ。
凛の生死は定かでは無いが、百合を事故らせるように仕向けたのは十中八九“薊”と名乗る男だ。
しかも、Asmodeusは集団なのか、異名なのか、バックに誰かが付いてるかすら分からない。何もかも振り出しというわけでは無いが、距離は縮まらない。
いや、確かHadesの特殊分隊とも言っていたか。しかし、その肝心のHadesに聞き覚えが無い。
「……困惑しているな。歪。」
そう考え込んでいると、兄上が声を掛けてきた。
「そりゃ…な…。話は変わるが、ずっと何処に居たんだ?生きてるかどうかすら不明だったじゃないか。」
兄上「薔羨」は家出して以降も俺の元にちょくちょく顔を見せていた。しかし、ある日を堺に姿を晦ました。
撫戯から彼が家出した理由は、聖薇一族の衰退を察し、嫌気が差したからだと聞いている。
俺の父は確かに強い人だった。しかし、あまりの気味悪さから人が寄り付かず、出会いに恵まれなかった。
そのため、暗殺者名門一族では子が四人が最低限安心できる指標だったが、聖薇は俺と兄上の二人。
そんな中、父の功績は低下中。俺も兄上も独学ばかりで実践的な経験は無かった。そりゃ逃げられても仕方が無い。
ただ、父が暗殺されて一人暮らしを余儀なくされた俺の事も考えてはほしかったと思う。
「俺はプレデスタンスを立ち上げた。政府の動きも悪い方向に進む予兆が見えたから、先手を打った。結果は見ての通りビンゴだ。」
「プレデスタンス……!あれの設立者は兄上だったのか。」
「ああ。黙っていてすまなかった。そして、お前を一人残した事も申し訳無い。ここで宣言させて欲しい。プレデスタンスは、抵抗機構であって、犯罪組織では無い。関東圏民には誤解をさせてしまっただろうが、無差別テロは部下が勝手にした事であり、契約違反だ。」
「恋音さんの件は?」
「あれは………Leviathanに一任した。私利私欲のオンパレードだった。それに関しては俺が責任を持って詫びる。」
別に俺は兄上を責めたいわけでは無い。恋音さんに関しては、撫戯の報復心が爆発して起きた産物だ。彼も反省しているし、諸悪の根源も叩いたので、丸く?収まった。
プレデスタンスに彼が関与していた事には少し驚いたが、今なら納得も出来る。
「教えてくれ。今、何が起こってるのか。」
「……政府…というよりはその一部が敵だ。それは俺がお前を迎えに来た事で、確信しているだろう。俺が不穏な予兆を感じたのは政策が強引になり始めたところだった。日本国憲法から大きく外れた事をし始めた。情勢を見れば仕方が無い事に思えるが、多分いづれ爆発すると思い、独立した。……「生命再起会」。政治家清心将角を中心とした組織だ。ここが少々危険な事に乗り出したのだ。」
「危険な事……。」
「ああ。膨大な金と技術力で政治を支配しようと動いた。だが、翌年に異常災害が頻発したため、あやふやに終わった。いや、結果的に国民を割れたから、意外と都合が良かったかもしれないな。」
「混沌社会……。災害直後からだと思っていたが、その前から雰囲気はあったのか。……奴らの目的は一体何なんだ。」
「恐らくだが、日本を作り変える事だ。」
「どういう事?」
「そもそもだが、予兆である強引な政策は、全て少子高齢化に対する動きだった。内心焦ってたのだろう。今連中がしようとしているのは、それの度が過ぎた政策……というか計画だ。クローン人間。勘づいてるだろ?」
「ッ!」
薊が仕向けた男。奴らは使命的に動いているように感じた。俄かには信じ難い話だが、その事を言っているのだろう。
「そう。最早日本の生態系を破壊する気だ。その母体となる細胞を入手するためにあの悲劇は起こった。……正気の沙汰じゃねぇよ。それともう一つ……柊司令は死んだ。清心の刺客だ。」
「はは………マジでやばい。政府にも清心反対派閥はまだ居るが、完全に支配された暁には……。」
「今の日本国民は終わるな。新たな時代の幕開けだ。我々若者からしたらたまったものじゃない結果に繋がるだろう。」
政治だって人間が運営している。人間なら失敗もあると思うし、そのための選挙であるが、これはもう度が過ぎた。
昔の逆戻りしたと言っても差し支え無いだろう。
「…兄上。俺も協力したい。日本の未来を取り戻したい。」
「ああ。プレデスタンスへようこそ。お前達のような学生の言葉は、強く響いてくれるだろう。」
丁度会話が一区切り着く頃、スポーツカーは止まった。
「仙台。プレデスタンスの本拠地だ。ついて来い。」
車を降り、俺は兄上について行った。
その日、政治家の失踪が相次いだ。共通点はただ一つ。“清心のやり方に反対する、道徳心のある人間”である事だ。
失っていた記憶は取り戻したが、状況が全く掴めていない。そして、もう一つ謎が生まれた。
それは、Asmodeusが何者なのかという事と、二度に渡って俺から記憶を消そうとした理由、大切な人を奪おうとした理由だ。
凛の生死は定かでは無いが、百合を事故らせるように仕向けたのは十中八九“薊”と名乗る男だ。
しかも、Asmodeusは集団なのか、異名なのか、バックに誰かが付いてるかすら分からない。何もかも振り出しというわけでは無いが、距離は縮まらない。
いや、確かHadesの特殊分隊とも言っていたか。しかし、その肝心のHadesに聞き覚えが無い。
「……困惑しているな。歪。」
そう考え込んでいると、兄上が声を掛けてきた。
「そりゃ…な…。話は変わるが、ずっと何処に居たんだ?生きてるかどうかすら不明だったじゃないか。」
兄上「薔羨」は家出して以降も俺の元にちょくちょく顔を見せていた。しかし、ある日を堺に姿を晦ました。
撫戯から彼が家出した理由は、聖薇一族の衰退を察し、嫌気が差したからだと聞いている。
俺の父は確かに強い人だった。しかし、あまりの気味悪さから人が寄り付かず、出会いに恵まれなかった。
そのため、暗殺者名門一族では子が四人が最低限安心できる指標だったが、聖薇は俺と兄上の二人。
そんな中、父の功績は低下中。俺も兄上も独学ばかりで実践的な経験は無かった。そりゃ逃げられても仕方が無い。
ただ、父が暗殺されて一人暮らしを余儀なくされた俺の事も考えてはほしかったと思う。
「俺はプレデスタンスを立ち上げた。政府の動きも悪い方向に進む予兆が見えたから、先手を打った。結果は見ての通りビンゴだ。」
「プレデスタンス……!あれの設立者は兄上だったのか。」
「ああ。黙っていてすまなかった。そして、お前を一人残した事も申し訳無い。ここで宣言させて欲しい。プレデスタンスは、抵抗機構であって、犯罪組織では無い。関東圏民には誤解をさせてしまっただろうが、無差別テロは部下が勝手にした事であり、契約違反だ。」
「恋音さんの件は?」
「あれは………Leviathanに一任した。私利私欲のオンパレードだった。それに関しては俺が責任を持って詫びる。」
別に俺は兄上を責めたいわけでは無い。恋音さんに関しては、撫戯の報復心が爆発して起きた産物だ。彼も反省しているし、諸悪の根源も叩いたので、丸く?収まった。
プレデスタンスに彼が関与していた事には少し驚いたが、今なら納得も出来る。
「教えてくれ。今、何が起こってるのか。」
「……政府…というよりはその一部が敵だ。それは俺がお前を迎えに来た事で、確信しているだろう。俺が不穏な予兆を感じたのは政策が強引になり始めたところだった。日本国憲法から大きく外れた事をし始めた。情勢を見れば仕方が無い事に思えるが、多分いづれ爆発すると思い、独立した。……「生命再起会」。政治家清心将角を中心とした組織だ。ここが少々危険な事に乗り出したのだ。」
「危険な事……。」
「ああ。膨大な金と技術力で政治を支配しようと動いた。だが、翌年に異常災害が頻発したため、あやふやに終わった。いや、結果的に国民を割れたから、意外と都合が良かったかもしれないな。」
「混沌社会……。災害直後からだと思っていたが、その前から雰囲気はあったのか。……奴らの目的は一体何なんだ。」
「恐らくだが、日本を作り変える事だ。」
「どういう事?」
「そもそもだが、予兆である強引な政策は、全て少子高齢化に対する動きだった。内心焦ってたのだろう。今連中がしようとしているのは、それの度が過ぎた政策……というか計画だ。クローン人間。勘づいてるだろ?」
「ッ!」
薊が仕向けた男。奴らは使命的に動いているように感じた。俄かには信じ難い話だが、その事を言っているのだろう。
「そう。最早日本の生態系を破壊する気だ。その母体となる細胞を入手するためにあの悲劇は起こった。……正気の沙汰じゃねぇよ。それともう一つ……柊司令は死んだ。清心の刺客だ。」
「はは………マジでやばい。政府にも清心反対派閥はまだ居るが、完全に支配された暁には……。」
「今の日本国民は終わるな。新たな時代の幕開けだ。我々若者からしたらたまったものじゃない結果に繋がるだろう。」
政治だって人間が運営している。人間なら失敗もあると思うし、そのための選挙であるが、これはもう度が過ぎた。
昔の逆戻りしたと言っても差し支え無いだろう。
「…兄上。俺も協力したい。日本の未来を取り戻したい。」
「ああ。プレデスタンスへようこそ。お前達のような学生の言葉は、強く響いてくれるだろう。」
丁度会話が一区切り着く頃、スポーツカーは止まった。
「仙台。プレデスタンスの本拠地だ。ついて来い。」
車を降り、俺は兄上について行った。
その日、政治家の失踪が相次いだ。共通点はただ一つ。“清心のやり方に反対する、道徳心のある人間”である事だ。
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