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ChapterⅤ:Crazy
No72.Artificiality
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雨に打たれ帰る中、絆から一通のメールが届いて例の場所へ向かった。
「来たか。」
「気分が良くないから手短に。」
「政府の動きが不審を感じる。あんたは?」
「否定はしないな。」
もう最近は本当に見なくなった。少し前までは政府配属の運転手が交通手段を担っていたが、今はサイレンス配属か歩きかだ。
毎日のように発生していたテロは、徐々に頻度が遅くなり、ここ数日は穏やかだ。
サイレンスの弾圧が効いたのか、Leviathanの敗北が影響を及ぼしたのかは分からないが、どのみち敵は現れない。
ただ、関東が安全だという確証は無い。奴隷商人だって居たし、噂じゃ底沼も潜伏していたって話だ。
「俺は政府の動きにも注意を見張りつつ、不穏を除去する。」
「了解。俺は引き続き情勢を分析する。そろそろ何か起こってもおかしくない頃合いだと思うけどな……。」
近況報告を終え、俺達はその場を後にした。長らく霧が掛かっている。この妙な日常からさっさと望む日常に戻りたいところだ。
落ち着いた生活が戻っていた。サイレンス本部にも出向かない日常。まさに本来あるべき学生生活だろう。
ただ、自分はこの空気感に靄を感じる。
「夜空。弁当食べよ。」
「……分かった。」
昼休み、夕憧に連れ出され、雨の中中庭玄関へと向かった。
「最近どう?なんか魂抜けてない?」
悪天候の下、夕憧はそう声を掛けてきた。
「何とも無い。……平和が一番とは言え、Mythologyが集結しないのは寂しいなぁと思って。」
「……それもあるかもね……。でも、足りてないんじゃない?大事なピースが。」
「大事な…ピース?」
「そう。明璃が居ない生活……。それまでは普通だったのに、今は違和感を感じるでしょ?」
「ッ!」
何か物足りなさがあった。その原因にようやく気付いた。それは“明璃”という存在だ。
自分は明璃を振った。正確には逃げた。これが自分にとっても彼女にとっても歯車を狂わすことだと感じたから。
なのに、引きずっている。多分、一生そうなるだろう。
「なんで振ったの?夜空だし理由あっての事だと思うけど……。」
「……界隈の人間ならある程度の危険は対処できる。だけど、彼女は違う。自分と関わる事で酷い目に合わないかが心配なんだよ。結局、幸せになってくれればそれでいいから……。」
「やっぱり夜空の他人第一は相変わらずね。そんなんだから、“何も掴めなくて後悔しちゃう”。これをあと人生で何回するつもりなのかな?」
そう挑発するように言ってくるが、返す言葉も無い。実際、空気を読んでばかりで何も干渉してこなかった。
だから、自分が活き活きとできる居場所が無いまま、コミュ障が加速した。
唯一、自分が本当の姿で居られる Mythologyでさえも、多少の遠慮はあった。
「夜空は昔からそうだよ。そんなクール過ぎても近寄り難いっての。」
クールキャラで押し通しているとは思えないほど煽る事を止めない夕憧に流石に苛立ち、自分は夕憧を押し倒した。
「へ……?」
「嘲笑ばかり繰り返してるんじゃないよ……!ありがとう。お陰で調子を取り戻せそうだよ。」
「あ……そ、そう。ならよ、良かった。」
赤面して面白いくらい噛んでいる。まだからかい足りないが、時間も時間なのでこの辺りでやめてあげておこう。
相反するところあるけど、双子だけあって何をしていて楽しいかは、共通のようだと、今日気付いた。
東京の地下。そこには得体の知れない装置の数々が保管され、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
「久しぶりだね蝙蝠。開発は順調か。」
「ええ。順調ですよ。これでまたあの混沌を引き起こせるでしょう。」
「そうか。」
「にしてもサイレンスは良い仕事をしてくれましたねぇ。まさかあの幻のチームLeviathanを撃破するとは。邪魔者はEnterのみとなりました。流石に彼らでは我々に勝てまいでしょうよ。」
「私は慢心だけは駄目だといつも言っているだろう!それと、そろそろ計画実行に向けて本格的に邪魔者排除に努めようと考えている。」
清心がそう言うと、蝙蝠と呼ばれる男は不敵な笑みを浮かべた。
「でしたら、我々Zeusに任せてください。ちょっと素体が不足していましてぇ。」
「当初よりその気だ。Hadesは馬鹿だからな。防衛に使うのが正しい。」
「まぁそうですよねぇ。仙台すらロクに取り返せない雑魚ですから。武力では科学には勝てないのですよ。……それをあの方共にも理解らせてやらないとですよぉ。」
国家秘密。それは、並大抵の人間は知らない、“支配者の企み”だ。それが、良い時もあれば、逆も然り。
この混沌した社会だって、人工的に仕向けられたルートなのかもしれない。
「来たか。」
「気分が良くないから手短に。」
「政府の動きが不審を感じる。あんたは?」
「否定はしないな。」
もう最近は本当に見なくなった。少し前までは政府配属の運転手が交通手段を担っていたが、今はサイレンス配属か歩きかだ。
毎日のように発生していたテロは、徐々に頻度が遅くなり、ここ数日は穏やかだ。
サイレンスの弾圧が効いたのか、Leviathanの敗北が影響を及ぼしたのかは分からないが、どのみち敵は現れない。
ただ、関東が安全だという確証は無い。奴隷商人だって居たし、噂じゃ底沼も潜伏していたって話だ。
「俺は政府の動きにも注意を見張りつつ、不穏を除去する。」
「了解。俺は引き続き情勢を分析する。そろそろ何か起こってもおかしくない頃合いだと思うけどな……。」
近況報告を終え、俺達はその場を後にした。長らく霧が掛かっている。この妙な日常からさっさと望む日常に戻りたいところだ。
落ち着いた生活が戻っていた。サイレンス本部にも出向かない日常。まさに本来あるべき学生生活だろう。
ただ、自分はこの空気感に靄を感じる。
「夜空。弁当食べよ。」
「……分かった。」
昼休み、夕憧に連れ出され、雨の中中庭玄関へと向かった。
「最近どう?なんか魂抜けてない?」
悪天候の下、夕憧はそう声を掛けてきた。
「何とも無い。……平和が一番とは言え、Mythologyが集結しないのは寂しいなぁと思って。」
「……それもあるかもね……。でも、足りてないんじゃない?大事なピースが。」
「大事な…ピース?」
「そう。明璃が居ない生活……。それまでは普通だったのに、今は違和感を感じるでしょ?」
「ッ!」
何か物足りなさがあった。その原因にようやく気付いた。それは“明璃”という存在だ。
自分は明璃を振った。正確には逃げた。これが自分にとっても彼女にとっても歯車を狂わすことだと感じたから。
なのに、引きずっている。多分、一生そうなるだろう。
「なんで振ったの?夜空だし理由あっての事だと思うけど……。」
「……界隈の人間ならある程度の危険は対処できる。だけど、彼女は違う。自分と関わる事で酷い目に合わないかが心配なんだよ。結局、幸せになってくれればそれでいいから……。」
「やっぱり夜空の他人第一は相変わらずね。そんなんだから、“何も掴めなくて後悔しちゃう”。これをあと人生で何回するつもりなのかな?」
そう挑発するように言ってくるが、返す言葉も無い。実際、空気を読んでばかりで何も干渉してこなかった。
だから、自分が活き活きとできる居場所が無いまま、コミュ障が加速した。
唯一、自分が本当の姿で居られる Mythologyでさえも、多少の遠慮はあった。
「夜空は昔からそうだよ。そんなクール過ぎても近寄り難いっての。」
クールキャラで押し通しているとは思えないほど煽る事を止めない夕憧に流石に苛立ち、自分は夕憧を押し倒した。
「へ……?」
「嘲笑ばかり繰り返してるんじゃないよ……!ありがとう。お陰で調子を取り戻せそうだよ。」
「あ……そ、そう。ならよ、良かった。」
赤面して面白いくらい噛んでいる。まだからかい足りないが、時間も時間なのでこの辺りでやめてあげておこう。
相反するところあるけど、双子だけあって何をしていて楽しいかは、共通のようだと、今日気付いた。
東京の地下。そこには得体の知れない装置の数々が保管され、どこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
「久しぶりだね蝙蝠。開発は順調か。」
「ええ。順調ですよ。これでまたあの混沌を引き起こせるでしょう。」
「そうか。」
「にしてもサイレンスは良い仕事をしてくれましたねぇ。まさかあの幻のチームLeviathanを撃破するとは。邪魔者はEnterのみとなりました。流石に彼らでは我々に勝てまいでしょうよ。」
「私は慢心だけは駄目だといつも言っているだろう!それと、そろそろ計画実行に向けて本格的に邪魔者排除に努めようと考えている。」
清心がそう言うと、蝙蝠と呼ばれる男は不敵な笑みを浮かべた。
「でしたら、我々Zeusに任せてください。ちょっと素体が不足していましてぇ。」
「当初よりその気だ。Hadesは馬鹿だからな。防衛に使うのが正しい。」
「まぁそうですよねぇ。仙台すらロクに取り返せない雑魚ですから。武力では科学には勝てないのですよ。……それをあの方共にも理解らせてやらないとですよぉ。」
国家秘密。それは、並大抵の人間は知らない、“支配者の企み”だ。それが、良い時もあれば、逆も然り。
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