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ChapterⅤ:Crazy
No68.Worst pick-up ever
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早朝。俺は待ち合わせをしていた。
「お待たせー!……待った?」
「多少は。」
「ふーん。行こっか。」
今日は凛とデートだ。旋梨の二の舞にはならないように気をつけているつもりだが、どうなるかは分からない。
ここまでガチでプランを考えて外出する事はこれまでなかったからだ。
行き先は水族館。確か前に凛が行きたいと言っていたのを思い出したため、厳選してきた。
午前中は適当に見て回り、それからイルカショーを見終わって昼食を取る事にした。
「何か食べたい物ある?一万までなら出せるが……。あ、俺も込みでな。」
大事件解決のMVPで報酬金を大量に貰っている。多分一般的な社会人の年収は超えるだろう。まぁお金のためでは無いとはいえ、命かけてるから少なくても困るのだが。
「じゃあ……この店で!」
そう言って凛はスマホの画面を見せてきた。
「分かった。」
水族館のまだ回っていないところを見つつ、水族館を後にして昼食予定の店に向かった。
大丈夫だろうか。そんな不安が頭の中から消えてなくならない。歪は多面性で適材適所が得意だから問題無いと思うが、彼は気づいていないだろう。
凛は目を離すと狙われやすい事に。交戦すれば余裕で勝てはするだろうが、状況次第では一人だときついはずだ。
彼の周りはスペックの水準が高い。普段の冷静さが無いであろう今、適した行動を取れるのか。
「何ぼぉーっとしてるの?」
「考え事?」
そんな事を考えていると、波瑠と真依に指摘された。
「あぁーごめん。」
軽く謝罪し、俺は二人に置いて行かれないように急いだ。
現在、店に到着して品物が来るのを待っていた。九千円はガチで飛んだ。だが、全く痛手にならない。それで凛が喜んでくれるなら安いものだ。
……なんでそう思ってしまうのだろう。
そうこう考えていると、料理が来た。
「おいしそう。いただきます。」
そう言って凛はオムライスを食べた。見てるだけでこっちも嬉しくなる。どうしてだろうか。
「あれ?歪君食欲無い?」
「え……あ、ああ大丈夫大丈夫。」
急に声を掛けられたため、少しビックリした。……いつものような判断が下せない。暗殺者とは思えない程視野が狭くなっているのだ。
そんな妙な感情を持ちながら、食事を終え、次の行き先へ向かった。
さっきから様子が違う。これまでに何度か一緒に出掛けたり、“二人きり”で居る事はあったけど、ここまで余裕の無さそうな歪君は珍しい。
もしかしたらと考えてしまいそうになるけど、期待はほどほどにした方が良いよね。
でも、全く動揺を隠せてないのはやっぱり違和感がある。……今日凸ればいける……のかな?
到着したのは楽器店。勿論いつもの場所で無い所だ。
「俺と一緒に演奏しないか?今の凛の上達具合も知りたいし。」
「でも…歪君のペースについていけるかな?」
「きっとできる。」
「……分かった。挑戦してみるね。」
「じゃあ俺は楽器や機材を受け取りにいってくる。」
そう言って俺はカウンターの方へ向かった。予め自分のギターを預けており、店内のドラムで一番凛に合うドラムを貸し出してもらった。
「嬢ちゃん。可愛いね。さっきの子彼氏?俺の方が絶対良いって。」
肩を叩かれ知らない男性がそう声を掛けてきた。
「すみません。」
「あ?美人は黙って付いて来れば良いんだよ!」
「きゃっ!や、やめっ!」
私は男性に引きづられ、店外に出された。
「凛。お待た………せ?」
手続きが終わり帰ってくると、そこに凛の姿は無かった。俺はすぐに凛に電話を掛けた。
「………出られない?そんな事あるはず……。あぁ、そういう事なんだな。」
俺は全てを察して走り出した。せいぜい三分程度しか経っていない。まだ近くにいるはずだ。
ここはストリート街だ。仲間と合流するにしろ、いかがわしい事をするにしろ、路地裏しか適した場所が無いだろう。俺は急ぐ。連れ去るあたり、相手は強引な輩だ。情状酌量の余地も無い。
「嬢ちゃん名前は?」
「………ひゃっ!」
無言を貫いていると、腹パンされた。
「黙ってんじゃねぇよ。」
中学生の頃に遭遇した人よりヤバいって直感でわかるほど、圧力があった。
「おい。……一発やらせろ。」
「……嫌です。」
「あ?」
大人しく従った方が身の安全はあるかもしれないけど、私のプライドが傷付くし、何より失うものも多い。
大丈夫。私は強い。耐えるだけなら……。
「はぁ……うぜぇな。うぜぇな!」
「うぅ!」
男性は私の胸ぐらを掴んで睨みつけた。ナンパの中でも最低に犯罪級かもしれない。
「大人しく従ってりゃいいんだよぉ。それが!……美貌に生まれたものの末路なんだよ!」
「それは違うな。」
「あ?」
「ッ!」
刹那、男性の手は私から離れた。やっぱり彼は私のヒーローだ。遅れても、手遅れになる前に必ず来る。そんな、心臓に悪いヒーローだ。
「なぁ……俺がこれまで対面した中で…一番終わってるんだが。……その先にはいかせないぞ。」
何とか間に合った。旋梨以上の戦犯になるところだった。俺は様々な分野で功績を残しているが、女心という観点では、平均以下のようだ。
だが、結果論だ。反省はこいつを理解らせてからでも遅くない。
「なんだテメェ……。嬢ちゃんの彼氏だろ?」
全然違うのだが、傍から見たらそうなのだろう。
「ハッ陰なイケメンじゃないか!……イケメンにもタイプがあるが、一番癪な奴じゃねぇか!」
世界で一番嬉しくない褒め言葉だ。まず、人を外見で決めつける奴は正直苦手だ。だからこそ、俺はナンパが嫌いなのだ。特にこういう奴は。(勿論、全員がそうで無い事は知っている。)
「黙ってんじゃねぇよ。まぁいい。力で捻じ伏せるのみ!」
「上等だ。見た目で判断するお前じゃ……多分後悔するかもよ。」
そう挑発して、俺は拳を固めてジャケットを脱ぎ捨てた。
「お待たせー!……待った?」
「多少は。」
「ふーん。行こっか。」
今日は凛とデートだ。旋梨の二の舞にはならないように気をつけているつもりだが、どうなるかは分からない。
ここまでガチでプランを考えて外出する事はこれまでなかったからだ。
行き先は水族館。確か前に凛が行きたいと言っていたのを思い出したため、厳選してきた。
午前中は適当に見て回り、それからイルカショーを見終わって昼食を取る事にした。
「何か食べたい物ある?一万までなら出せるが……。あ、俺も込みでな。」
大事件解決のMVPで報酬金を大量に貰っている。多分一般的な社会人の年収は超えるだろう。まぁお金のためでは無いとはいえ、命かけてるから少なくても困るのだが。
「じゃあ……この店で!」
そう言って凛はスマホの画面を見せてきた。
「分かった。」
水族館のまだ回っていないところを見つつ、水族館を後にして昼食予定の店に向かった。
大丈夫だろうか。そんな不安が頭の中から消えてなくならない。歪は多面性で適材適所が得意だから問題無いと思うが、彼は気づいていないだろう。
凛は目を離すと狙われやすい事に。交戦すれば余裕で勝てはするだろうが、状況次第では一人だときついはずだ。
彼の周りはスペックの水準が高い。普段の冷静さが無いであろう今、適した行動を取れるのか。
「何ぼぉーっとしてるの?」
「考え事?」
そんな事を考えていると、波瑠と真依に指摘された。
「あぁーごめん。」
軽く謝罪し、俺は二人に置いて行かれないように急いだ。
現在、店に到着して品物が来るのを待っていた。九千円はガチで飛んだ。だが、全く痛手にならない。それで凛が喜んでくれるなら安いものだ。
……なんでそう思ってしまうのだろう。
そうこう考えていると、料理が来た。
「おいしそう。いただきます。」
そう言って凛はオムライスを食べた。見てるだけでこっちも嬉しくなる。どうしてだろうか。
「あれ?歪君食欲無い?」
「え……あ、ああ大丈夫大丈夫。」
急に声を掛けられたため、少しビックリした。……いつものような判断が下せない。暗殺者とは思えない程視野が狭くなっているのだ。
そんな妙な感情を持ちながら、食事を終え、次の行き先へ向かった。
さっきから様子が違う。これまでに何度か一緒に出掛けたり、“二人きり”で居る事はあったけど、ここまで余裕の無さそうな歪君は珍しい。
もしかしたらと考えてしまいそうになるけど、期待はほどほどにした方が良いよね。
でも、全く動揺を隠せてないのはやっぱり違和感がある。……今日凸ればいける……のかな?
到着したのは楽器店。勿論いつもの場所で無い所だ。
「俺と一緒に演奏しないか?今の凛の上達具合も知りたいし。」
「でも…歪君のペースについていけるかな?」
「きっとできる。」
「……分かった。挑戦してみるね。」
「じゃあ俺は楽器や機材を受け取りにいってくる。」
そう言って俺はカウンターの方へ向かった。予め自分のギターを預けており、店内のドラムで一番凛に合うドラムを貸し出してもらった。
「嬢ちゃん。可愛いね。さっきの子彼氏?俺の方が絶対良いって。」
肩を叩かれ知らない男性がそう声を掛けてきた。
「すみません。」
「あ?美人は黙って付いて来れば良いんだよ!」
「きゃっ!や、やめっ!」
私は男性に引きづられ、店外に出された。
「凛。お待た………せ?」
手続きが終わり帰ってくると、そこに凛の姿は無かった。俺はすぐに凛に電話を掛けた。
「………出られない?そんな事あるはず……。あぁ、そういう事なんだな。」
俺は全てを察して走り出した。せいぜい三分程度しか経っていない。まだ近くにいるはずだ。
ここはストリート街だ。仲間と合流するにしろ、いかがわしい事をするにしろ、路地裏しか適した場所が無いだろう。俺は急ぐ。連れ去るあたり、相手は強引な輩だ。情状酌量の余地も無い。
「嬢ちゃん名前は?」
「………ひゃっ!」
無言を貫いていると、腹パンされた。
「黙ってんじゃねぇよ。」
中学生の頃に遭遇した人よりヤバいって直感でわかるほど、圧力があった。
「おい。……一発やらせろ。」
「……嫌です。」
「あ?」
大人しく従った方が身の安全はあるかもしれないけど、私のプライドが傷付くし、何より失うものも多い。
大丈夫。私は強い。耐えるだけなら……。
「はぁ……うぜぇな。うぜぇな!」
「うぅ!」
男性は私の胸ぐらを掴んで睨みつけた。ナンパの中でも最低に犯罪級かもしれない。
「大人しく従ってりゃいいんだよぉ。それが!……美貌に生まれたものの末路なんだよ!」
「それは違うな。」
「あ?」
「ッ!」
刹那、男性の手は私から離れた。やっぱり彼は私のヒーローだ。遅れても、手遅れになる前に必ず来る。そんな、心臓に悪いヒーローだ。
「なぁ……俺がこれまで対面した中で…一番終わってるんだが。……その先にはいかせないぞ。」
何とか間に合った。旋梨以上の戦犯になるところだった。俺は様々な分野で功績を残しているが、女心という観点では、平均以下のようだ。
だが、結果論だ。反省はこいつを理解らせてからでも遅くない。
「なんだテメェ……。嬢ちゃんの彼氏だろ?」
全然違うのだが、傍から見たらそうなのだろう。
「ハッ陰なイケメンじゃないか!……イケメンにもタイプがあるが、一番癪な奴じゃねぇか!」
世界で一番嬉しくない褒め言葉だ。まず、人を外見で決めつける奴は正直苦手だ。だからこそ、俺はナンパが嫌いなのだ。特にこういう奴は。(勿論、全員がそうで無い事は知っている。)
「黙ってんじゃねぇよ。まぁいい。力で捻じ伏せるのみ!」
「上等だ。見た目で判断するお前じゃ……多分後悔するかもよ。」
そう挑発して、俺は拳を固めてジャケットを脱ぎ捨てた。
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