多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅳ:Stealth

No58.Physical attack

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 自分はそんな状況に置かれながらも、銃口を向けた。

 「上等。……何より怖いのは暗殺。交戦のチャンスがあるだけむしろありがたいよ。」

 「そうか………消えろ。」

 底沼は発砲した。自分はそれを回避して上にある看板を撃ち落として遮蔽物を作った。
 上からグレネードが投げ込まれたが、それを突き払った。

 「事前情報通り機転が効くんだな。……それでも一対一なら僕の方が器用に動けるけど。」

 まず、射撃精度が段違いだ。さっきはなんとか躱したが、並大抵の人じゃ無理だろう。反射神経の良さという特技が活きた。
 それにまだ力を隠していそうな予感がする。自分一人だといずれ限界を迎えるだろう。周りでは自由テロも発生している。
 仲間にこの銃声が届いている事を祈る。







 状況は変わった。何やら社員がライフルを持ち、動き始めた。こちらの存在に気付いたようだが、まだ位置バレしている様子は無い。
 そして恐らく関東でも物理戦闘が始まったのであろう。なぜなら、彼らはモニターの電源を落とした。もう必要が無くなったのであろう。

 「そのまま潜伏するか?強行突破するか?」

 Leviathanは少数精鋭だ。見た感じ指揮官的な人物が居ないため、恐らく何処かから遠隔で指示しているのだろう。

 「俺達の端末がハッキングされて位置情報がバレてる可能性があるなら、強行突破した方が楽じゃないか?歪の腕と俺達の制圧力があればいけるだろ。」

 「愁はそれで問題無いか?」

 愁は首を縦に振る。決まりだ。
 俺達はそれぞれ武器を構え、潜伏場所から飛び出した。

 「……!侵入者発見!撃て!」

 すると一斉に撃たれるが、親の顔より見た射撃精度だ。テロもそうだが、大体は素人で撃ち慣れていない。
 だからこそ、Leviathanとの交戦が未知で恐ろしくあるのだ。
 旋梨は不協和音ボムを投げ、社員を一斉気絶させた。
 豪馬の時とは違って利用されてるだけだと思うので、殺す以外の手段が取れるならその方向で行く。指揮官さえ消えれば彼らは解放されるだろう。
 
 「先に進むぞ。相手がハッカーなら、サーバー周辺にいるはずだ。」

 「「了解。」」

 俺達は慎重に先を急いだ。







 現在Orderは包囲されている。しかしこれも作戦の一環。
 潜入したところで匿名なら見破って逆奇襲を仕掛けるはずだ。
 ならいっそ普通に戦闘してヘイトを買う。そしたら歪んとこも動きやすいし、彩良と莉緒菜がその隙に準備を進められるだろう。
 結局、暗殺ならスナイパーが一強なのだ。ただ、室内のため少々きついだろう。そのフォローが俺の役目だ。

 「どうした?来いよ。手下が消耗し続けるだけだぞ?矢匿。」

 殺らなければ殺られる。彼ら全員が罪人じゃない事は承知だが、またこんな悲しい結末にしないためにも、あいつは潰す。







 社内が大分混乱している。向こうでも対面したようだし、情報戦はこれで終戦したようだ。
 
 「矢匿。こっちはシステムを使って援護する。そっちで片付けは任せた。」

 『承知。』

 サイレンス二強チームが相手だろうと、我々のやる事は変わらない。陰で破滅の道に誘導する。
 それがLeviathanのやり方だ。







 しばらく交戦が続いているが、奴は疲れないのだろうか。動きのキレが変わらない。だけど、こちらは鈍る一方だ。

 「まぁそうだよねー。……才能と経験は別のステータスだ。言ったよね?一対一なら僕の方が器用に動けるって。……この狭さでハンドガンに挑むには無謀な装備だ。退き際も見極めるべきだったな。」

 反論できない。実際そうだから。次の回避は間に合わない。相手は先読みもできるタイプだ。これもどれだけ裏をかけるかの“情報戦”だったとようやく理解した。

 「じゃあ………さよなら。」

 銃声が鳴り響く。しかし、自分の心臓はまだ動いていた。

 「あれ……確か回避できず……」

 「遅れてごめん。よくここまで一人で粘ったわね。」

 「ッ!」

 足から血を流す夕憧が、目の前に立っていた。
 ハンドガンの威力がそこまでだったのか、貫通しなかったようだ。
 
 「邪魔が………。」

 「私の弟いじめてたのは貴方?……底沼。」

 「そうだね。双子の姉……翠光。」

 「私だけじゃないわよ。」

 すると、底沼の後方から射撃された。しかし、底沼はそれを視界に入れずとも射線から離れた。

 「流石はLeviathan。一筋縄ではいかないですか……。」 

 「地雷……。」

 これで勢揃いだ。底沼の表情も少し変わった。

 「はぁ……君達は一体どこまで一人に執着するのか。……全員まとめて遊び相手になってやるよ。」

 これでも怯まない彼の強さがどれだけ別格かが分かった。しかし、僅かな勝ち筋が広がった気がした。


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