多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

やみくも

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Chapter Ⅳ:Stealth

No54.Intention of the previous day

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 金曜日の放課後、たまたま通りかかった俺達は強引なナンパ野郎をボコし終えたところだ。

 「うわぁぁぁ!」

 「……ッチ!覚えとけよ!」 

 そう言って二人の男は走り去ってしまった。

 「あ、ありがとうございます。」

 「気にしなくても良いです。人混みの激しい場所では誰かといた方が良いかもですね。では……。」

 俺と旋梨はそう言い残して、さっさと路地裏に向かった。
 理由は単純。ここは人混みが激しい。つまり奇襲が仕掛けやすいため、念のためだ。







 「ふぅ!やっぱ人助けは気持ちが良いなぁ!」

 「それは同感だが、明日は大事な日だぞ。エネルギーは温存しとけよ?」

 旋梨と居る時は、大抵こいつから乱入する。そういえば、こいつが波瑠とデートしてた時も真っ先に助けに行ったんだった。弱気な女の子を放置してどっか行くのは流石に俺も引いた。
 さっきの言葉は旋梨にも遠回しに言ったつもりだが、多分届いてないだろう。

 「まぁそろそろ解散でいいか。…っても本部待機だが。」

 俺達は早朝から会社に乗り込む。今回の潜入メンバーは俺、旋梨、愁、Orderとなっており、残りの Mythologyとプラスアルファで他のチームの人が防衛となる。
 今回、夜空には完全別行動で現地の状況を伝達してもらうつもりだ。
 二つの戦場の波長が合わないと、この要塞網の突破は不可能だ。そのレベルの相手と交戦することになる。撫戯が居なかったら無理な任務だった。

 明日は神経を極限まで擦り減らす事になるであろう。まだ夕方だが、さっさと仮眠するべきだ。







 金曜日。これに嬉しさを覚える学生は多いと思う。

 「凍白さん!明日の事、忘れてませんよね?」

 これで忘れたなんて言ったら切腹を要求されても文句は言えない。そうでなくとも覚えてるけど。

 「約束だからね。流石に忘れてない。」

 「じゃ、また明日会おう!」

 そう言って明璃は帰路を駆けた。
 先日、聖薇先輩に防衛側の指揮と状況把握を依頼された。なんせあっちはあのLeviathanと衝突する。こっちまで気にできないのだろう。
 勿論、頼まれたからには、自分で言い出したからには、全てやりきる覚悟は出来ている。……ごめんだけど、明日は楽しめそうに無い。ただ、楽しい明後日、明明後日を保証する。
 誰一人犠牲者を出させる気は無い。例え、利用された人であってもね。







 仙台。ライブジャックで盛り上がった熱も、時間と共に冷めてきていた。
 
 「黒薔薇。」

 俺達Enterが勢揃いの中、底沼がやって来た。

 「匿名と追跡は連れてないようだが。」

 「彼らは最終調整を終えて寝たよ。一日中虐殺ショーになるから。」

 「そんな大事な日が控えた中、深夜一時によくここに来やがったな。」

 事前に共有はされていた作戦だ。追跡が加わった事により、明らかに速いペースで数を減らせた。
 すると、底沼は口を開いた。

 「ここで何人落とせるかで、今後が決まる。僕らはかつて無い程慎重かつ本気でこれを計画した。……期待しててくれ。」

 リーダー同士が会話できる状況を作りたかったのか、他のメンバーは気付いたら去ってしまっていた。

 「底沼……いや、滲襲甘採。この勝負、お前達にとって凄く意味のあるものだと俺は思う。……やりきれ。何があっても遂行する意思を見せてくれよ。」

 「分かってる。聖薇薔羨。」 

 甘採はそれだけ言って帰った。意思表明のためだけに彼が来るなんて、この計画にかける熱意がよく伝わった。







 何の変哲も無い土曜日。しかし、特定の人達にとってはそれなりにでかいお祭りの日でもあり、その裏で遂に対面する、今後を左右しかねない緊張の日でもある。
 目に見えたテロでは無い。騒ぎの中秘密裏に行われる“情報戦”だ。

 開店前ではあるが、行列になりかけていた。自分は三十分前に到着したが、既にそこそこ並んでいた。

 「大丈夫かな……。」

 周りは楽しみにしている中、自分はとにかく恐れていた。こんな大仕事を最年少でこなせるだろうかと。
 いや、やるしかない。必ず、人々の表情を曇らせないためにこの“情報戦”を制す。
 聖薇先輩は自分を信じて前線に立った。その期待を決して裏切るわけにはいかない。
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