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Chapter Ⅳ:Stealth
No51.Appetizer
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後日、今回の事件の全貌が浮き彫りになってきて、元マネージャーはクビとなった。関与していた警備隊の一部も本部からの命令に違反したとしてペナルティが課せられているらしい。
ただ、あくまでもマネージャーの指示に従っていただけなので、処罰を軽めにしてもらえるように土下座したようだ。
……撫戯と種田さんが。
「ご苦労だった。聖薇君。」
「とんでもないです。……黙って行動してすみませんでした。」
「ゆっくり休みたまえ。Leviathanとの戦いはまだ、終わっていないはずだ。」
俺は休暇を貰い、司令室を後にした。確かに撫戯の件は解決した。しかし、Leviathanがこの程度で終わるはずがない。
とはいえ、情報の持ち主が味方になったのは利益でしかない。
「聖薇。」
「愁か。先日はありがとう。お陰で事がスムーズに運べた。」
司令室を出ると、愁が壁にもたれて待機していた。愁が足止めと潜入をしてくれたお陰で、サーバーダウンに対応できた。
旋梨や絆に頼むと必要以上に暴れてきて話が余計にややこしくなるため、言われた事を淡々と行う愁が適任だったのだ。別に武力行使でなくとも解決できる事件だったから。
「あの後どうなった。」
「聞きたいか?ここじゃなんだし喫茶店でも行くか。」
そうして俺達は喫茶店に移動し、結論と彼らのその後について話した。
元マネージャーの連行後、愁は増援の指揮を取りつつ先に帰還した。
「もうこれで満足か?撫戯。」
皆が待機している場所に歩み寄り、俺はそう声を掛けた。脱力しきった様子だったよ。
「本当に申し訳無い。俺の起こした問題なのに……。」
「いいんだよ。お前と対峙するのだけは絶対に避けたかった。それにさ……恩師をこれ以上失いたくはない。」
俺には華隆さんの前例もある。人格形成に大きく影響した人物を失うことは、最も辛い事だって痛いほど理解しているから。
今度は撫戯から口を開く。
「社会の眼は恐ろしい。そう痛感しまくっていた。絶対的権力……これのお陰で統率が取れる時もあるが、それはただの“武器”になる時もある。何より、最も恐ろしいのは数だ。どんなに足掻いて真実を伝えても、無知には敵わない。……これでお前の教訓にもなるか…。」
「そうだな……。最強も数には敵わないよ…。」
彼が言いたい事は分かった。比喩に近い表現だが、何か裏を知っていそうだ。
これに関してはおいおい調べるとしよう。
「種田さん。勝手に話を進めてしまいましたが、了承してくれますか。」
彼だって力になりたいのは山々だろうが、別のグループのマネージメントもしているかつ大学にも通いつつの新米なので、過労死しないか心配だ。
単位には余裕があるようだが、中々に厳しい生活をしているらしいので、最悪どこかで踏み違えば、全て崩れかねない。
「難しい頼みですね……。でも歪君に助けられましたし、援助があるなら引き受けましょう。撫戯?」
「……分かったよ。」
「撫戯は面倒見が良いお兄ちゃんだからね!」
「ん?恋音?」
撫戯は明らかに困惑している。そりゃそうだ。Everyone's treasureの期待を膨らまして、ハードルを上げようとしているのだから。
そんなこんなで、解決した。
「本当に丸く収まって良かった。」
愁の言う事も結果で見ればそうだが、今回も例に漏れず死人が出ている。俺の願いはまたしても叶わなかった。
ただ、それすらも忘れそうになるほどにまだすべき事が山積みだ。
種田さんに暗示された俺の空白の記憶、Leviathanの今後の動向について。
正直、それらを解決したとて、逆に謎が深まりそうだ。
「とりあえずは……動きを待つしかないけどな。」
丁度会話も一区切りついて、コップも空になったので、会計を済ましてそれぞれ帰宅した。
株式会社ポピュラーラブ・スイートフラグ。元々廃倉庫に置いてあった設備は移動されており、正式にここの乗っ取りが完了していた。
最低限の労働力だけ残して、それ以外の邪魔になりかねない存在は追放したようだ。
「今回の件は果たして成功と言えるのか?」
そう八が口にすると、甘採は射撃訓練を止めて、口を開いた。
「八十人は死亡した。僕らにしては物足りないが、撫戯が良ければ良いんだ。」
「それには同感。映人もそう思うか?」
「勿論だ。彼を失ったのは痛手だが、プレデスタンスの希望の星にはなってくれたと思う。」
満場一致した彼らは円陣を組んだ。
「良い前菜にはなった。……メインディッシュを始めようか。全店舗、大型イベントを開催し、大物を一気に消すぞ。」
Leviathan、それは最恐精鋭部隊。この三人が集結した時、それは“悪夢の夜”が訪れる合図だ。
ただ、あくまでもマネージャーの指示に従っていただけなので、処罰を軽めにしてもらえるように土下座したようだ。
……撫戯と種田さんが。
「ご苦労だった。聖薇君。」
「とんでもないです。……黙って行動してすみませんでした。」
「ゆっくり休みたまえ。Leviathanとの戦いはまだ、終わっていないはずだ。」
俺は休暇を貰い、司令室を後にした。確かに撫戯の件は解決した。しかし、Leviathanがこの程度で終わるはずがない。
とはいえ、情報の持ち主が味方になったのは利益でしかない。
「聖薇。」
「愁か。先日はありがとう。お陰で事がスムーズに運べた。」
司令室を出ると、愁が壁にもたれて待機していた。愁が足止めと潜入をしてくれたお陰で、サーバーダウンに対応できた。
旋梨や絆に頼むと必要以上に暴れてきて話が余計にややこしくなるため、言われた事を淡々と行う愁が適任だったのだ。別に武力行使でなくとも解決できる事件だったから。
「あの後どうなった。」
「聞きたいか?ここじゃなんだし喫茶店でも行くか。」
そうして俺達は喫茶店に移動し、結論と彼らのその後について話した。
元マネージャーの連行後、愁は増援の指揮を取りつつ先に帰還した。
「もうこれで満足か?撫戯。」
皆が待機している場所に歩み寄り、俺はそう声を掛けた。脱力しきった様子だったよ。
「本当に申し訳無い。俺の起こした問題なのに……。」
「いいんだよ。お前と対峙するのだけは絶対に避けたかった。それにさ……恩師をこれ以上失いたくはない。」
俺には華隆さんの前例もある。人格形成に大きく影響した人物を失うことは、最も辛い事だって痛いほど理解しているから。
今度は撫戯から口を開く。
「社会の眼は恐ろしい。そう痛感しまくっていた。絶対的権力……これのお陰で統率が取れる時もあるが、それはただの“武器”になる時もある。何より、最も恐ろしいのは数だ。どんなに足掻いて真実を伝えても、無知には敵わない。……これでお前の教訓にもなるか…。」
「そうだな……。最強も数には敵わないよ…。」
彼が言いたい事は分かった。比喩に近い表現だが、何か裏を知っていそうだ。
これに関してはおいおい調べるとしよう。
「種田さん。勝手に話を進めてしまいましたが、了承してくれますか。」
彼だって力になりたいのは山々だろうが、別のグループのマネージメントもしているかつ大学にも通いつつの新米なので、過労死しないか心配だ。
単位には余裕があるようだが、中々に厳しい生活をしているらしいので、最悪どこかで踏み違えば、全て崩れかねない。
「難しい頼みですね……。でも歪君に助けられましたし、援助があるなら引き受けましょう。撫戯?」
「……分かったよ。」
「撫戯は面倒見が良いお兄ちゃんだからね!」
「ん?恋音?」
撫戯は明らかに困惑している。そりゃそうだ。Everyone's treasureの期待を膨らまして、ハードルを上げようとしているのだから。
そんなこんなで、解決した。
「本当に丸く収まって良かった。」
愁の言う事も結果で見ればそうだが、今回も例に漏れず死人が出ている。俺の願いはまたしても叶わなかった。
ただ、それすらも忘れそうになるほどにまだすべき事が山積みだ。
種田さんに暗示された俺の空白の記憶、Leviathanの今後の動向について。
正直、それらを解決したとて、逆に謎が深まりそうだ。
「とりあえずは……動きを待つしかないけどな。」
丁度会話も一区切りついて、コップも空になったので、会計を済ましてそれぞれ帰宅した。
株式会社ポピュラーラブ・スイートフラグ。元々廃倉庫に置いてあった設備は移動されており、正式にここの乗っ取りが完了していた。
最低限の労働力だけ残して、それ以外の邪魔になりかねない存在は追放したようだ。
「今回の件は果たして成功と言えるのか?」
そう八が口にすると、甘採は射撃訓練を止めて、口を開いた。
「八十人は死亡した。僕らにしては物足りないが、撫戯が良ければ良いんだ。」
「それには同感。映人もそう思うか?」
「勿論だ。彼を失ったのは痛手だが、プレデスタンスの希望の星にはなってくれたと思う。」
満場一致した彼らは円陣を組んだ。
「良い前菜にはなった。……メインディッシュを始めようか。全店舗、大型イベントを開催し、大物を一気に消すぞ。」
Leviathan、それは最恐精鋭部隊。この三人が集結した時、それは“悪夢の夜”が訪れる合図だ。
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