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Chapter Ⅳ:Stealth
No47.Free happiness life
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復讐対象は目の前にいる。それなのに撫戯はワイヤーを弾かない。そして口を開く。
「俺と昨日会っただろ?あの場でお前を消すことは容易だった。ただ俺はそんな卑怯な真似はしない。……お前とは違ってな。」
暗殺は本来、何の前振りも無しに訪れるもの。それなのに正々堂々と宣戦布告する彼はズレているとも言えるが、それはサイレンスにも少し通ずる所がある。
「取り押さえろ。」
その挑発を無視してマネージャーは警備隊を迫らせた。
彼なら返り討ちにする事くらいは容易だが、設置済みのワイヤーは Everyone's treasureのメンバーにも絡む。つまり彼的には弾けない。
愁は彼の本質に気づき始めているが、それでも手を出す権利が無い。組織に従順な彼が、個人的に命を奪う行為を出来る度胸が無い。
「はぁ………もう嫌になるわ。」
これは俺達がまだ幼かった頃の話だ。
元は優秀な暗殺者の家系だった。しかし、讐鈴一族は壊滅。単純に裏社会への幽閉がつまらなかった俺は、暗殺者を辞退し、家出した。
幸い、任務にはほとんど出ていないので、わざわざ追っ手は来なかった。
両親含め家族は常に事務所に常駐しており、一応ある実家は無人状態だったので、俺はそこで生活していた。金ならいくらでもある。一人暮らしするスキルもある。
そして俺には幼馴染みがいた。それが隣に済んでいた四季恋音だ。
彼女はとても明るいが、泣き虫な所もあった。何かある度に俺の元に駆け寄り泣きつく。
それでも鬱陶しいと感じた事は無い。
……俺は彼女の事が好きだったからだ。
小学校高学年の頃。俺は生粋の自由人だった。表社会と裏社会を行き来し、よく友達を振り回したのも良い思い出だ。
聖薇を連れ出して色んな所に行ったり、友達と遊び尽くしたりしていた。
そんなある日、恋音からある相談を受けたのだ。
「私ね、アイドル目指してるんだ!でも全然踊れなくて…。」
「多少なら教えられるぞ。」
それから数年間、俺は彼女をプロデュースしていた。友達の種田は芸能界志望であり、相当な知識を持っていた。そこに俺の変換能力を加えれば、恋音の個性が最大限活きるように育成できた。
中学三年の頃。
「新人オーディション受かったよ!撫戯と種田君のお陰。ありがとう!」
大手事務所のオーディションに合格し、晴れて夢が叶いそうだ。俺達で教えられなくなるのは残念だが、もっとその道を極めた人が通を整備してくれるなら、それが一番良いに決まっている。
彼女の幸せが、俺にとっての幸せだから……。
でも、そんな幸せも終わった。彼女はとても売れっ子になったのだ。そこまでは良い。しかし、国内トップのアイドルとなった Everyone's treasure。そのセンターである恋音は国宝のような扱いを受けるようになってきた。
ストーカー被害などを受けていると時折相談され、俺は片っ端から警察に突き出してやった。それ以外にもトラブルが起きかけたが、事が起こる前に“俺が”対処し続けた。
そんな毎日が約一年間の間ずっと続いていた。しかし、遂に俺に解決出来ないトラブルが発生した。
それは握手会での出来事だった。まだ本格的では無いが、業界入りのために見学によく行っていた種田からとある情報を聞いた。
『この握手会はアイドルの同意を得ていない。横暴なマネージャーの強引な押しだ。』
その連絡を受けた時、俺は少し動揺した。そういえば恋音しばらく直接話してなかったので、お盆休みに会ってその辺りの事を聞こうと考えていた。
しかし、彼女は帰って来なかった。いくら忙しいとはいえ、流石に休みはあるはずだ。何かがおかしいと感じた俺は、事務所を凸った。
本当は駄目だが、これまで散々自由に生きてきた俺にとって、何一つ傷付く物は無い。それより、傷付きやすい恋音の方が心配だった。
「すみませんどちら様ですか?」
「四季恋音さんの関係者です。面談の時間を頂けないでしょうか。」
「そ、そう言われましても……上層の許可無く我々で判断する事は……。」
どうせ信用してないのだろう。某有名絵画に触らせるか?そんなベクトルの話だ。
しかし、奥の方で彼女の姿を確認できた。俺は名前を呼ぼうとするが、それは叶わなかった。
「おい、そこで何をしていた。」
振り向くと、警備隊と一人の男が居た。
「どなたですか。」
「私が彼女らのマネージャーだ。」
スーツ姿の金持ちそうなおじさんだ。筋肉質であり、俺のような命知らずでもなければ圧に屈しそうだ。
「ああそうですか。私は恋音の古くからの友達なんですが、お伺いしたい事が山程あります。まず、強引な押し進めに関し……」
まだ何も言い切ってないのに、取り押さえられた。
「冗談を言える余裕はあるのだな。……大人を舐めるなよ。連行しろ。話は後でじっくり聞いてやる。」
いくら裏社会で鍛えられていても、屈強な警備隊四人の固めは流石に突破出来なかった。
徐々に遠ざかっていく彼女とマネージャーを横目に、俺は虚しい抵抗を止めた。そして考える事も止めた。
「俺と昨日会っただろ?あの場でお前を消すことは容易だった。ただ俺はそんな卑怯な真似はしない。……お前とは違ってな。」
暗殺は本来、何の前振りも無しに訪れるもの。それなのに正々堂々と宣戦布告する彼はズレているとも言えるが、それはサイレンスにも少し通ずる所がある。
「取り押さえろ。」
その挑発を無視してマネージャーは警備隊を迫らせた。
彼なら返り討ちにする事くらいは容易だが、設置済みのワイヤーは Everyone's treasureのメンバーにも絡む。つまり彼的には弾けない。
愁は彼の本質に気づき始めているが、それでも手を出す権利が無い。組織に従順な彼が、個人的に命を奪う行為を出来る度胸が無い。
「はぁ………もう嫌になるわ。」
これは俺達がまだ幼かった頃の話だ。
元は優秀な暗殺者の家系だった。しかし、讐鈴一族は壊滅。単純に裏社会への幽閉がつまらなかった俺は、暗殺者を辞退し、家出した。
幸い、任務にはほとんど出ていないので、わざわざ追っ手は来なかった。
両親含め家族は常に事務所に常駐しており、一応ある実家は無人状態だったので、俺はそこで生活していた。金ならいくらでもある。一人暮らしするスキルもある。
そして俺には幼馴染みがいた。それが隣に済んでいた四季恋音だ。
彼女はとても明るいが、泣き虫な所もあった。何かある度に俺の元に駆け寄り泣きつく。
それでも鬱陶しいと感じた事は無い。
……俺は彼女の事が好きだったからだ。
小学校高学年の頃。俺は生粋の自由人だった。表社会と裏社会を行き来し、よく友達を振り回したのも良い思い出だ。
聖薇を連れ出して色んな所に行ったり、友達と遊び尽くしたりしていた。
そんなある日、恋音からある相談を受けたのだ。
「私ね、アイドル目指してるんだ!でも全然踊れなくて…。」
「多少なら教えられるぞ。」
それから数年間、俺は彼女をプロデュースしていた。友達の種田は芸能界志望であり、相当な知識を持っていた。そこに俺の変換能力を加えれば、恋音の個性が最大限活きるように育成できた。
中学三年の頃。
「新人オーディション受かったよ!撫戯と種田君のお陰。ありがとう!」
大手事務所のオーディションに合格し、晴れて夢が叶いそうだ。俺達で教えられなくなるのは残念だが、もっとその道を極めた人が通を整備してくれるなら、それが一番良いに決まっている。
彼女の幸せが、俺にとっての幸せだから……。
でも、そんな幸せも終わった。彼女はとても売れっ子になったのだ。そこまでは良い。しかし、国内トップのアイドルとなった Everyone's treasure。そのセンターである恋音は国宝のような扱いを受けるようになってきた。
ストーカー被害などを受けていると時折相談され、俺は片っ端から警察に突き出してやった。それ以外にもトラブルが起きかけたが、事が起こる前に“俺が”対処し続けた。
そんな毎日が約一年間の間ずっと続いていた。しかし、遂に俺に解決出来ないトラブルが発生した。
それは握手会での出来事だった。まだ本格的では無いが、業界入りのために見学によく行っていた種田からとある情報を聞いた。
『この握手会はアイドルの同意を得ていない。横暴なマネージャーの強引な押しだ。』
その連絡を受けた時、俺は少し動揺した。そういえば恋音しばらく直接話してなかったので、お盆休みに会ってその辺りの事を聞こうと考えていた。
しかし、彼女は帰って来なかった。いくら忙しいとはいえ、流石に休みはあるはずだ。何かがおかしいと感じた俺は、事務所を凸った。
本当は駄目だが、これまで散々自由に生きてきた俺にとって、何一つ傷付く物は無い。それより、傷付きやすい恋音の方が心配だった。
「すみませんどちら様ですか?」
「四季恋音さんの関係者です。面談の時間を頂けないでしょうか。」
「そ、そう言われましても……上層の許可無く我々で判断する事は……。」
どうせ信用してないのだろう。某有名絵画に触らせるか?そんなベクトルの話だ。
しかし、奥の方で彼女の姿を確認できた。俺は名前を呼ぼうとするが、それは叶わなかった。
「おい、そこで何をしていた。」
振り向くと、警備隊と一人の男が居た。
「どなたですか。」
「私が彼女らのマネージャーだ。」
スーツ姿の金持ちそうなおじさんだ。筋肉質であり、俺のような命知らずでもなければ圧に屈しそうだ。
「ああそうですか。私は恋音の古くからの友達なんですが、お伺いしたい事が山程あります。まず、強引な押し進めに関し……」
まだ何も言い切ってないのに、取り押さえられた。
「冗談を言える余裕はあるのだな。……大人を舐めるなよ。連行しろ。話は後でじっくり聞いてやる。」
いくら裏社会で鍛えられていても、屈強な警備隊四人の固めは流石に突破出来なかった。
徐々に遠ざかっていく彼女とマネージャーを横目に、俺は虚しい抵抗を止めた。そして考える事も止めた。
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