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Chapter Ⅲ:Friendship

No28.Predastance

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 黒薔薇が仕切ると、黄牙が資料を配った。

 「へぇ。大したものだ。」

 そこに書かれていた内容はこれまでに功績を残した騒動の手口や、今後の政府の動きの考察材料になるような事がまとめられていた。この資料は黄牙が調査、制作をしたものだ。

 「単刀直入に言うと、サイレンス上位チームが今後いや、現在も相当邪魔になっている。これは早急に手を打たなければならない。」

 黄牙がそう説明していると、一人の男が挙手した。

 「何か言いたそうだな?映人。」

 Leviathan情報部「貴井 映人」。どんな手を使ってでも獲物を発見する追跡者であり、凄腕ハッカーでもある。

 「俺は今ある人に“内通者のフリ”をしている。連中を誘き寄せるために虚偽の情報を流し、動かざるおえない状況を作る事が可能です。しかも俺はサイレンスのみならず、構成員のプライベートも把握済みです。」

 「流石だ。この事は我々に一任してくれないか?黒薔薇。」

 底沼がそう言うと、黒薔薇は頷き了承した。

 「で、今後は何を目的にする?本題に移るのもありだぞ。」

 すると、Leviathan戦略部「矢匿 八」がそう質問した。

 「これから我々EnterとLeviathanで動きを大幅に変える。Enterでは当初の目的を果たすために裏で準備を進める。Leviathanは政府を引っ掻き回してやれ。それで問題無いか?」

 「問題無し。」

 「方針はこれで決定だな。今日はこれで解散だ。」

 黒薔薇がそう言うと、底沼以外のメンバーは散っていき、話し合いの少なすぎる会議が終わった。







 「いやぁにしても君の弟が相当暴れてんね。」

 肩の力を抜いた底沼は、ダンボールに座って黒薔薇にそう言った。

 「あいつは本当の弟じゃない。つまり今は赤の他人だ。……抹消すべき存在。」

 「彼はまだ政府が味方だと思ってるんだろうな。僕らは特に恨みは無いが、混乱に乗じて暴れまくっているだけさ。君には借りがあるからな。目標達成を祈っているよ。プレデスタンスの全てを利用してやれ。」

 そう言って底沼はフードに身を包み、何処かへと去って行った。そして黒薔薇も帰路に着いた。







 特訓を終えた俺は、SNSを見た。

 「………俺に帰る資格は無い。月に食われようものなら、誰かの幸福を、平穏を壊す事になってしまうから。」

 そう口に零し、俺は目を閉じた。




 「………まだ夕方だよ?小学生…園児でももっと遅寝だよ?」

 一人暮らしのはずの俺の部屋にある女の声が響いた。

 「……何でいるんだ。施錠したはずだぞ。」

 「合鍵作ってみた。Order全員分ね!」

 「プライベートの欠片もねぇ。」

 目を開くと彩良が居た。こいつは音も無く出没するから厄介だ。よく俺はこの神出鬼没女と即失踪女と共に高い成功率を保持出来ていると思う。
 Orderはサイレンス内でもイレギュラーな位置付けになっている。主にこいつが原因で。

 「帰れ。」
 
 「まぁそんなツンケンしなさんなって。」

 「は?な、何してんの?!」

 なんと彩良は机に仮で置いていたナイフを手に取り、腕から少し出血させた。

 「ほら?手当てしてくれるよね?」

 そう言って彼女は腕を差し出してきた。全く意図が読めない。

 「やるわけ無いだろ。………仕方無いな。」

 無視して寝ようと目を閉じたがずっと視線を感じるため、折れた。
 任務に支障が出ても困るし、リーダーである俺が責任を問われるだけだからな。

 「優しっ!なんだかんだ言ってやってくれるのが絆!」
  
 手当てをしてやると、彩良は感謝だけして帰って行った。

 「……何なんだ。」

 思わずそう呟いた。目的不明の彼女の行動に妙に疲れた。
 俺が歪にあの質問をした理由、それはこのOrderの奇妙な関係が本物の友情なのか疑っているからだ。
 最早“絆”の線引きが分からなくなっていた。







 復帰翌朝、絆からまた連絡が入ってきていた。

 「あいつ……最近どうした?」

 彼も学校は違えど表向きは学生だ。同じ町に住んでいるし遭遇しても不思議でないが、プライベートで彼を昨日まで見た事が無い。
 俺や旋梨と同じで訳ありな予感がするが、詮索するような真似はしない。自ら話されたら協力するだけだ。
 それも仲間、ライバルとの適切な距離と言えるだろう。
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