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Chapter Ⅱ:Vicious

No25.Just look in the eyes

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 俺は一体何をやっているのだろうか。気付けば口が開いていて、波瑠を押し倒していた。とは言え下が思いっきりコンクリートなので、片手で頭を抱えながらの構図にはなっているが。
 力は相当抜いたが、彼女は抵抗する様子が無く簡単に目と目が合った。

 「は、はわわわわわ!ど、どどどういう事ですか?!」

 彼女はとても困惑しているようだ。それもそうか。

 「目……合わせれるじゃん。……ごめんね。」

 正気に戻った俺はすぐに謝罪して離れようとしたが、波瑠が浮いている俺を引き寄せて抱くように手を背中に回した。
 
 「お、おい。どういう……。」

 「……仕返し。絶対に許さないよ。」

 俺達の顔は至近距離だ。彼女は耳元でそう囁いたが、声色的に怒っては無さそうだ。

 「………。」
  
 先程のような沈黙とは違う。この空間だけがまるで別世界のような雰囲気になっていたが、それはすぐに破壊された。

 「なに外でイチャイチャしてるの?」

 「……え。ま、真依ちゃん凛ちゃん!」

 驚いたように波瑠は声をあげ、俺をどかして立ち上がった。
 真依は何かからかいたそうにニヤニヤしていて、凛は大量のエコバッグを持ってキョトンとしていた。

 「へぇ。そういう関係だったんだー。」

 「ちょ、マジでやめて。」

 「……否定は出来ないかも。」

 「ん?波瑠さん?!」

 雲行きが怪しい。真依は明らかに意図して喋っているし、波瑠も絶対面白がってやっている。お願い誰か助けて。

 「冗談冗談!ちょっと驚いたけどね。じゃあまたね。あ、波瑠。一緒に帰ろ。」

 「あ、うん。またね旋梨君。」

 そう言って三人は去って行った。駄目だ今日はさっさと帰って寝るべきだ。疲れている。
 気付けば日没寸前のため、俺はサイレンスに連絡して車をこちらに向かわせた。







 「一体何があったの?」

 真依ちゃんは私にそう問うた。凛ちゃんは何故かルンルンと歩いている。

 「まだ……話す決心が着いてないかな……。」

 「そう。ゆっくり気持ちを整えてからでいいわよ。でも…敵になるんだったら負けないんだからね。」

 「ッッ!」

 私は顔を赤くした。そっか…真依ちゃんは気づいているんだね。

 「……臨むところだよ。ただ、友達としてもよろしくね。」

 「勿論よ。」

 私達はそれぞれの帰路に別れて、自宅に向かった。







 「てか凛大丈夫なの?かなり夜遅くなるんじゃない?」

 私が頼まれた買い物の荷物が多いから手伝って欲しいとお願いしたけど、私の家と凛の家は距離がある。もう日没だし少し危険な気がした。
 すると、凛が私に持ってもらっていた荷物を押し付けてきた。

 「確かにそうだね。距離が離れ過ぎる前に帰るね。」

 「じゃあね。凛。」

 私が凛にそう言うと、凛は笑顔で手を振って走っていった。
 凛も波瑠も中学の時より変わった。私も含めてだけど。これが青春の色ってものなのかな。







 午前二時、俺は目が覚めた。旋梨からの連絡の後すぐ寝た俺は、懐かしいが心を締め付ける夢を見ていた。

 「百合……。俺はあいつらと同じになってしまうのかな。」

 そう口に零し再び目を閉じようとしたが、絆からメールがきた。

 『あんたが何に苦しんでるかは分かっている。けどよ、彼女がそんな情けない姿を見たいと思うか?第三者の俺が言える事じゃないけど。もし立ち直る気があるんだったら明日本部に来てほしい。相談したい事があるんだ。』と、書かれていた。
 
 「はぁ…気晴らしに行くか。」

 そう呟いて、俺は珍しくアラームをセットして眠りについた。







 歪は来るのだろうか。そんな事がふと頭に浮かぶ。あいつが来てくれないと俺は最善な判断が出来ない。誰かに言わないと結論を出せない。
 本当にリーダー失格だといつも思っている。それを明日こそは変えてやる。それが今の俺に課せられた使命だと感じるから。
 そう思考を巡らせ、俺はナイフに反射する自分の目を見て呟いた。

 「偽りの友情…。絆。」










 ある暗闇の路地裏、山田は誰かに追われて逃げていた。

 「はぁ…はぁ……なんでだ!なんでこんな事になった!」

 「それは使えないからに決まってんだろ。少しは頭使え。」

 「クッ!俺はお前達から逃げ政府に寝返ってやる!お前達の計画を台無しにしてやる!」

 そう叫んで山田はバイクに乗って逃走するが、男は冷静に無線機に話し掛けた。

 「バイクで逃げられた。多分関東に脱出する気だ。」

 「オッケー。そんな悪い人は僕が直々に葬る。」

 そして無線が切れた。捨て駒山田は最恐の捕食者達のターゲットに定められたようだ。
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