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Chapter Ⅱ:Vicious
No19.Kidnapping
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解散後、俺と旋梨、愁は帰りに週一位で通っている喫茶店に入った。
俺達はいつもと同じ物を注文し、近くの席に腰掛けた。
「ショゴスが終わったと思いきや新たな連中が出やがったな…。」
適当にスマホをいじって暇を潰していると、旋梨がそう言ってきた。
「奴らも一度入れたんだから抵抗が小さくなったのだろう。結局大元が分からない以上、迎え撃つ事しか出来ない。」
「そうだよなぁ…。」
そうは言うものの、あの無法地帯と化した地域を生きる割には団結力があり過ぎる。これが政府を恨む人々の意思の現れか、それとも誰かの陰謀なのかは、知る術が無い。
ただ、俺達が何が起ころうとも鎮圧させることに変わりは無い。
軽食(夕飯代わり)を食い、俺達はそれぞれ帰路に着いた。
私は司令から作戦内容を聞き、帰って準備をしていた。最初は私が潜入して情報を収集し、後に Mythologyの最適メンバーで失踪者の奪還に行くようだ。
内通者によると、失踪事件は外部からの誘拐で確定だそうだ。
私は条件も満たしているため、GPSを仕込んで周辺を夜に彷徨いていれば潜入は容易でしょう。
いつ彼らの動きが止まるか分からないため、今夜から早速作戦実行を試みるつもりだ。
…任務中なら嫌な事も忘れられるし。嘘であって欲しい。かつての仲間と対立するのだけは、絶対に避けたい。
歪君に言われた通り、私はすぐに家に帰って珍しく勉強をしていた。
失踪事件。あれほどまでに注意喚起されていただけあって、ほとんどの部活は休止しているらしい。帰宅時間にはもう暗くなり始めるからね。
でも、波瑠は今日委員会の集まりで帰りが遅くなるらしい。波瑠の両親も帰りが遅いため迎えには来てくれないと思う。少し心配になるけど、私の予感なんかただの予感だと思いたい。
その日の夜、私は多発場所周辺の路地裏などを無防備に歩いていた。まぁ私の顔、スタイルの良さは慈穏のお墨付きだし、流石に連れ去ってくれる……よね?
潜入出来ないと、誘拐犯の追跡が困難となるので、念のため多発場所に該当する高校付近を巡回している。
……あれ?怪しいの私じゃない?
そんな事を考えながら一時間以上歩いていた。
「そろそろ帰宅ラッシュに乗り遅れた人が帰る時間だ。」
「よし、ノルマ二人でもう必要数集まるし、学生狙いでいっとくか。」
「じゃ、今日も運転頼むぞ。」
二人の男は黒い車に乗り込み、安全圏方面に向かった。
委員会の集まりが終わって、私は急いで帰路に着いていた。
「……延長のせいでもう七時。早く帰らないとまずいかも。」
少し前から視線を感じていた。もしかしたら例の失踪事件に巻き込まれるかもと思ったので、私は足早に帰路を進んでいた。
「こちらXXX。多分勘付かれてる。」
「諦めて他を探すか?」
「いや、あれは稼げる。俺が保証しよう。」
「……了解。先回りしとく。」
男は無線を切り、標的を波瑠一点に定め、追跡を開始した。
……視線だけだったのが、確実に後をつけられていると確信したのはすぐの事だった。足音は少しずつ荒々しくなってきて、運動神経の低い私の息も徐々に切れ始めてきていた。
それでも力を振り絞って走った。この先を右に曲がって真っ直ぐ行けば、交番が見える。そこに逃げ込めれば私の勝ちだ。
でも、希望はすぐに打ち砕かれちゃった。
「きゃっ!」
曲がり角で誰かとぶつかってしまった。そのまま凄い握力で腕を掴まれてしまった。
「よく逃げる娘だ。手間かけさせてさぁ。」
私は何とか抵抗しようとしたけど、振り解く事は叶わなかった。
「な、何する気……なの…。」
「言う理由が無い。早く乗れ。」
二人の男性に包囲されていて、もう無理だと思っていたその時、通行人がわざとらしく一人の男性にぶつかった。
「いってぇ。何しやがる!」
「え?あ…すみません。少し疲れてて……。」
そのぶつかった通行人の女性は、男性に掴まれた。
「暗闇で気づきにくかったがお前良い顔してんなぁ。来いよ。」
そう言って男性はその女性を車に放り込んだ。その後で私も同じように放り込まれて、車が動き出した。
「ノルマ達成したし帰るか。」
「今回は大収穫だったな。こんな美人二人なんてそうそう拐えるものじゃないぞ。」
私はただ怯えながら、うずくまっていた。これからどうなっちゃうんだろう。そんな不安しか考えられなかった。
まず、真っ先に誰かに連絡しようとポケットに手を入れたが、そこにスマホは無かった。そう言えば、走っている途中に何かを落とした気がした。
抵抗の余地すら与えられなかった私は、どうすれば良いかなんて分かるはずもない。
強引なやり方だけど、何とか潜入には成功した。隣の少女はとても脅えている様子だ。
大丈夫。到着したらお姉さんがしっかりケアしてあげるからね。
俺達はいつもと同じ物を注文し、近くの席に腰掛けた。
「ショゴスが終わったと思いきや新たな連中が出やがったな…。」
適当にスマホをいじって暇を潰していると、旋梨がそう言ってきた。
「奴らも一度入れたんだから抵抗が小さくなったのだろう。結局大元が分からない以上、迎え撃つ事しか出来ない。」
「そうだよなぁ…。」
そうは言うものの、あの無法地帯と化した地域を生きる割には団結力があり過ぎる。これが政府を恨む人々の意思の現れか、それとも誰かの陰謀なのかは、知る術が無い。
ただ、俺達が何が起ころうとも鎮圧させることに変わりは無い。
軽食(夕飯代わり)を食い、俺達はそれぞれ帰路に着いた。
私は司令から作戦内容を聞き、帰って準備をしていた。最初は私が潜入して情報を収集し、後に Mythologyの最適メンバーで失踪者の奪還に行くようだ。
内通者によると、失踪事件は外部からの誘拐で確定だそうだ。
私は条件も満たしているため、GPSを仕込んで周辺を夜に彷徨いていれば潜入は容易でしょう。
いつ彼らの動きが止まるか分からないため、今夜から早速作戦実行を試みるつもりだ。
…任務中なら嫌な事も忘れられるし。嘘であって欲しい。かつての仲間と対立するのだけは、絶対に避けたい。
歪君に言われた通り、私はすぐに家に帰って珍しく勉強をしていた。
失踪事件。あれほどまでに注意喚起されていただけあって、ほとんどの部活は休止しているらしい。帰宅時間にはもう暗くなり始めるからね。
でも、波瑠は今日委員会の集まりで帰りが遅くなるらしい。波瑠の両親も帰りが遅いため迎えには来てくれないと思う。少し心配になるけど、私の予感なんかただの予感だと思いたい。
その日の夜、私は多発場所周辺の路地裏などを無防備に歩いていた。まぁ私の顔、スタイルの良さは慈穏のお墨付きだし、流石に連れ去ってくれる……よね?
潜入出来ないと、誘拐犯の追跡が困難となるので、念のため多発場所に該当する高校付近を巡回している。
……あれ?怪しいの私じゃない?
そんな事を考えながら一時間以上歩いていた。
「そろそろ帰宅ラッシュに乗り遅れた人が帰る時間だ。」
「よし、ノルマ二人でもう必要数集まるし、学生狙いでいっとくか。」
「じゃ、今日も運転頼むぞ。」
二人の男は黒い車に乗り込み、安全圏方面に向かった。
委員会の集まりが終わって、私は急いで帰路に着いていた。
「……延長のせいでもう七時。早く帰らないとまずいかも。」
少し前から視線を感じていた。もしかしたら例の失踪事件に巻き込まれるかもと思ったので、私は足早に帰路を進んでいた。
「こちらXXX。多分勘付かれてる。」
「諦めて他を探すか?」
「いや、あれは稼げる。俺が保証しよう。」
「……了解。先回りしとく。」
男は無線を切り、標的を波瑠一点に定め、追跡を開始した。
……視線だけだったのが、確実に後をつけられていると確信したのはすぐの事だった。足音は少しずつ荒々しくなってきて、運動神経の低い私の息も徐々に切れ始めてきていた。
それでも力を振り絞って走った。この先を右に曲がって真っ直ぐ行けば、交番が見える。そこに逃げ込めれば私の勝ちだ。
でも、希望はすぐに打ち砕かれちゃった。
「きゃっ!」
曲がり角で誰かとぶつかってしまった。そのまま凄い握力で腕を掴まれてしまった。
「よく逃げる娘だ。手間かけさせてさぁ。」
私は何とか抵抗しようとしたけど、振り解く事は叶わなかった。
「な、何する気……なの…。」
「言う理由が無い。早く乗れ。」
二人の男性に包囲されていて、もう無理だと思っていたその時、通行人がわざとらしく一人の男性にぶつかった。
「いってぇ。何しやがる!」
「え?あ…すみません。少し疲れてて……。」
そのぶつかった通行人の女性は、男性に掴まれた。
「暗闇で気づきにくかったがお前良い顔してんなぁ。来いよ。」
そう言って男性はその女性を車に放り込んだ。その後で私も同じように放り込まれて、車が動き出した。
「ノルマ達成したし帰るか。」
「今回は大収穫だったな。こんな美人二人なんてそうそう拐えるものじゃないぞ。」
私はただ怯えながら、うずくまっていた。これからどうなっちゃうんだろう。そんな不安しか考えられなかった。
まず、真っ先に誰かに連絡しようとポケットに手を入れたが、そこにスマホは無かった。そう言えば、走っている途中に何かを落とした気がした。
抵抗の余地すら与えられなかった私は、どうすれば良いかなんて分かるはずもない。
強引なやり方だけど、何とか潜入には成功した。隣の少女はとても脅えている様子だ。
大丈夫。到着したらお姉さんがしっかりケアしてあげるからね。
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