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Chapter Ⅱ:Vicious

No17.Footsteps on the night road

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 しばらく練習して、全員寝落ちしてしまった。俺が最初に目を覚まし、朝になっていた。

 「あの店長はさぁぁ。なんで起こさないかな!」

 ご丁寧に閉店はしているのに練習室の鍵は開いている。確信犯だ。それに店長……羽崎の靴が置いてある。住居と一体になってる店では無いので、完全に保護者ポジだ。

 「むにゃ。うーん。……ぁあ寝ちゃってたなぁ。」

 ドラムに顔を伏せて寝ていた凛が起きたようだ。前に寝起きを見た時も思ったが、無防備な可愛さがある。

 「おはよう。」

 「歪君。おはよう。」

 彼女は起き上がり、スマホから爬虫類の鳴き声の音声を真依と波瑠の耳元で流した。

 「ひゃあ!」

 「はい!ど、どどどどうしました!」

 真依が半ば悲鳴のような声を出し、波瑠がそれにびっくりして起きた。こんな面白過ぎるやりとりをしている間に旋梨は普通に起きたようだ。
 
 「……凛?分かってるよね?」

 「うん?何のこと?」

 彼女は本気で理解してなさそうな表情を浮かべた。天然小悪魔が強過ぎる。

 「はぁ……許す。」

 そんな会話を聞いていると、旋梨が店長を連れてどこかから戻って来た。

 「来やがったな元凶鬼畜趣味活店長。」

 「酷い言われようだな。否定は出来ないが。」

 「そこは否定してくれ。」

 珍しく旋梨が真面目なツッコミを入れたため、俺は録音していなかった事を悔やんだ。Mythologyのメンバーに見せてやりたかったのに。
 色々あったが、とりあえず我々はその場を解散した。







 ある日の静かなる夜。一人の女性が歩いていた。時間帯的には塾帰りといったところだろうか。

 「………。」

 妙な視線を感じる。この先を行けばコンビニエンスストアなどがある道に出るので、私は足を早めた。
 すると、背後から足音が聞こえてきたが、私は振り返らずに足を早めた。すると音は消えたみたいだ。

 「……ッチ。こちらXXX。取り逃がした。」

 ノイズまみれの無線ごしに会話をする声が聞こえ、私はコンビニエンスストアに逃げ込むように走った。
 しかし、死角となる曲がり角で誰かにぶつかったようだ。大体二十代位の男性といったところか。
 
 「任務達成。」

 「え?こ、来ないで!」

 男は女性を抱えて近くに停まっていた黒い車体に押し入れた。

 「そろ帰るぞ。長居はリスクが高い。」

 「今日の収穫は四人。ノルマまで良いペースじゃないか。」

 黒い車体は静かなエンジンで颯爽と町を走り、かの有名な無法地帯へと向かった。







 休日が明け、あのテロ以来変わりない日常を送っていた。俺はある日、新聞のとある内容が目に飛び込んだ。

 「……失踪事件?」

 それは失踪事件についての記事だ。しかも何件も“この付近”で起こっている。
 この付近は主な住宅街となっており、東京郊外なのでガードも少し甘い。
 これまでにこんなケースは無いので断定は出来ないが、テロの一環でない事を信じたい。

 そんな少し嫌な朝を迎えながら、登校の準備をした。







 無法地帯のとある建物。そこに黒薔薇と一緒に居た男が入って行った。

 「お疲れ様です。山田会長。」

 「おう。お疲れ。計画は順調か?」

 「はい。にしても会長は悪い人ですねぇ。まさか、政府に喧嘩を売りながら商売にまで手を出すなんて!政府陣の人格と反政府陣の人格を巧みにコントロールする会長は我々の尊者ですよ。」

 「サンキュ。では、この辺りで。ノルマ達成して店を開いた日から一ヶ月後に売り上げ確認に来る。」

 「了解しました。」

 山田は建物を出て、光沢の美しいバイクでスラムを駆け抜けて行った。







 ホームルームでも例の失踪事件については触れられていた。前例の通りだと、失踪しているのは十代後半から二十代前半の女性が中心のようだ。勿論誤差はあるが。なので注意するように伝えられ解散となった。
 基本夜遅くまでバンドの練習をしているため、今日は無しにするように伝えて俺は帰路…ではなく、とある場所に旋梨と共に向かっていた。

 「こんな緊急招集は久々だなぁ。やっぱり例の失踪事件の事本部は怪しんでるよな。歪はどう思う?」

 「立て続けに同じような条件の人が失踪している時点で誘拐の線が一番濃厚だろう。問題は目的だ。良からぬ事に利用されなければ良いが……。」

 そうこう話して集合場所に行くと、政府陣の車でいつもの運転手が待っていた。

 「あ、聖薇さん。紫藤さん。本部に向かいますよ。」

 俺達は車に乗り、本部へと向かった。


 
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