多面性を持つ最強暗殺者はただ日常を望む

Chapter Ⅰ:Time limit

No7.Fellow

　俺達が向かった場所それは、本部裏にある墓地だ。帰る場所の無い暗殺者達の寝床となっている。最強のチームたるもの、常に仲間を思い、行動しなければならない。そう教えられてきた。

　「……華隆さん。」

　この墓に眠る人は、「華隆　慈穏」。Mythologyのリーダーであり、元最強の暗殺者だった。しかし、正体不明の存在に一族ごと消されてしまったのだ。俺達の思考は、彼の教えに影響を受けている。

　「慈穏先輩。また来ますね。この地で…。」

　そう言った彼は「凍白　夜空」。チーム最年少であり、温厚。双子の弟だ。

　「そろそろ解散しましょうか。またね。慈穏。」

　彼女は「葉桜　愛沙」。現まとめ役であり、慈穏さんと親しかった人物だ。

　「了解しました。行きましょう夜空。」

　「はい。」

　夜空と夕憧は階段を降りていった。彼女は「凍白　夕憧」。クールだが抜けてるところもある性格。双子の姉だ。

　「じゃ、俺達もそろそろ変えるかぁ。久々になんか話そうぜ。愁。」

　旋梨は、チーム…組織一の無口男「七瀬　愁」を連れて、階段を降りていった。

　「皆さん元気にやっていますよ。華隆さんに対して冷たいと感じるかもしれませんが、半年が経過しようとする今でも、現実を受け入れられないのでしょう。安心してください。華隆さんのように強く抱擁力のある暗殺者として、俺はこの時代を変えてみせます。だから……見ていてください。」

　俺はそう言い残して、墓地を出た。あの方は完璧だった。同じ地上に立っているとは到底思えなかった。しかし、彼の口癖は“この世に完璧なものは無い。全て何かが欠けている。それを補い合う為に仲間がいる。その人にしか無い強みがある。それを見つけられるのが、仲間を超えた信頼なのかもしれないね。”俺はこの言葉を聞いて初めて、気を楽にさせられた。
　いつか俺は彼を体現したい。勿論その過程で、今の自分を見失わないように。







　

　翌日、俺は変わらない日々を送っていた。やはり人生に刺激は必要無い。もううんざりする程地獄を見てきたから。
　ただ、そんな唯一の平穏だった学生としての俺の生活は、たった一日で崩れた。

　「聖薇歪！俺はお前に勝負を申し込む！」

　俺は意味を理解出来ず、固まっていた。彼は「東堂　風鳴」。学年一の実力者。学力、運動能力どれをとっても非の打ち所が無い。ちなみに暗殺機構の関係者では無い。

　「何故俺だ？大体何の勝負だよ。」

　「知らね。何となく勝負したくなった。」

　「えぇ…。」

　彼はいわゆる陽キャ。勢い任せな所がある。
なんか俺の事をライバル視してるらしい。確かによく俺の一つ下の記録が多い気がする。

　「じゃあ料理でもしてみたら？」

　凛が横からそう口を挟んだ。

　「そうだな！歪に料理のイメージは無い。遂に勝てるかもしれない！」

　「偏見が過ぎるな。まぁ実際料理はしないが。」

　「今モテる人は料理上手だからな？これを機に勝負しようじゃないか！」

　「お疲れ。俺負け確定。」

　「安心しろ。俺もほぼ未経験だ！」

　何なんだこいつは。意気込んでるから得意なのかと思いきや初心者か。
　とりあえず何やかんやあって、一週間後に勝負する事になった。
　ぶっちゃけ勝敗はどうでも良いが、こいつに負けるのは何か癪なので、猛特訓を開始した。