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Prologue
No1.Mistake
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「……死亡状況は。」
「派遣した暗殺者は六名。警察は十二名。一般市民は三十八名です。」
「そうか……。」
血液が道路中に撒き散り、大勢の死人や負傷者が出た事が伺える駅前は、静寂に包まれていた。
現在、暗殺機構「サイレンス」によるテロの弾圧が終わった所だ。
「聖薇さん。後処理は我々で行うので、先に帰って報告をお願いします。」
「……了解した。」
俺、「 聖薇 歪 」はスタンガンを格納し、政府陣の車体に乗り込んで本部へと向かった。
「任務お疲れ様です。聖薇様。」
「テロ集団の目的に検討はあるか?」
「はい。彼らは有名歌手のファンだそうです。その有名歌手は持病を患っており、治療がとても難しいそうです。我々の選抜した医師のチームでオペを行いましたが、失敗に終わりました。」
いくら有名歌手とは言え、批判では収まらない程の騒動となっている。これまでだったらありえない事態だが、今のこの日本でなら、当然と言わざるおえないだろう。あの件から政府は国民の信頼を失ったのは、今から一年前の事だった。
その年は異常災害の年と言われていた。昨年四月、東北地方を中心に震度6強、マグニチュード6.8の大型地震が発生。被災地に対しての国の支援が不十分であると批判が殺到。
八月、近畿地方で落雷が多発し、重要文化財建造物等が燃焼。大阪でも火災が多発。批判を受け東北地方の復興に国は尽力していたが、近畿地方が放置気味で再び批判殺到。
十二月、中部地方北陸と北海道で類を見ないほどの大降雪。毎日死人が当然のように出る地獄絵図だった。ここでもまた同じような理由で批判殺到し、遂には首都東京に抗議デモを起こす者まで現れ始めた。
国に悪気は無く、恐らく全てをケアする事は不可能に等しい自然の怒りであるが、政府の事情説明や近況報告が不十分であったことから、国民の信用を失い、統率が不能都なったのだ。
やがてテロ集団も現れるようになり、本当に手が着けられなくなった日本政府は、あくまでも前面的には平和主義でいきたいが、善良な一般市民に影響が出る事を恐れ、我々暗殺機構サイレンスに秘密裏に依頼を申請した。
我々サイレンスは、日本を拠点とし、世界各国の警察に対応出来ない大規模騒動を弾圧する為に作られた特殊戦闘隊であり、裏社会では、どんな凶悪犯罪者でも目を付けられた時点で戦慄すると噂の天罰を下す神のような存在だ。
「到着しました。」
「ご苦労だった。」
俺は車を降りて、本部の司令室へと足を運んだ。
「失礼します。」
「聖薇君入りたまえ。」
ドアノブに手を掛け、司令室へと入った。司令室の椅子には、サイレンスの最高司令官である「柊」が座っている。
「報告します。地点は東京都渋谷駅前。死者五十六名。内六名が返り討ちにされました。テロ集団に死者はいません。現在、昏睡状態にし隔離しています。」
「そうか。今回は犠牲者が多いな。直近だとマシな方だがな。ご苦労だった。帰ってしっかり休みたまえ。」
「では、お先に失礼します。」
俺は司令室を出て、政府陣の車で自宅へと帰還した。
「到着しました。また次の任務の際にお会いしましょう。」
「ああ。さようなら。」
自宅へと帰還し、俺はすぐにベットで横になった。
「………犠牲者零名は大変だな。この地上から、永遠に脅威が排除されれば良いのにな。」
そんな事を口に零しながら、俺は瞼を閉じた。
一夜が明け、俺は目覚めた。簡単に朝食を済ませ、制服に着替えて自宅を出た。
俺はまだ高校生。こんな今だからこそ、進学せずに任務に専念する事も可能だが、俺には一生に一度のこの時期を、蹴る判断は出来なかった。後悔したくないから。
「おはよう歪。」
登校中、一人の男が声を掛けてきた。
「おはよう旋梨。」
彼は「紫藤 旋梨」。俺の親友であり、戦友でもある。彼も俺と同じで、サイレンス所属…つまり暗殺者の家系だ。
「昨日さぁ、俺達に指導して欲しいっていう変わった連中が訪ねてきてさぁ。放課後会ってみてくれね?」
「お前は?」
「東京タワーの捜査。先日の爆弾魔がばら撒いた爆弾の処理作業だよ。タワーで最後なんだよね。これまでに一つも発見されてないけど…。」
「そうか。気をつけろ。」
そんな会話をしながら歩いていたが、人通りが多くなってきたので、適当な雑談に話題を変えた。
俺達は暗殺機構の構成員だが、表向きは普通の学生となっている。裏社会に居たって、結局は二重生活しているケースが多い。
この社会の人間として生まれた宿命だ。力無き者として生まれていたら、もっと幸せだったのかもしれないが、こうやって普通の生活も送れていて、良かったと思う。……今日の夕方まではそう思っていた。
「派遣した暗殺者は六名。警察は十二名。一般市民は三十八名です。」
「そうか……。」
血液が道路中に撒き散り、大勢の死人や負傷者が出た事が伺える駅前は、静寂に包まれていた。
現在、暗殺機構「サイレンス」によるテロの弾圧が終わった所だ。
「聖薇さん。後処理は我々で行うので、先に帰って報告をお願いします。」
「……了解した。」
俺、「 聖薇 歪 」はスタンガンを格納し、政府陣の車体に乗り込んで本部へと向かった。
「任務お疲れ様です。聖薇様。」
「テロ集団の目的に検討はあるか?」
「はい。彼らは有名歌手のファンだそうです。その有名歌手は持病を患っており、治療がとても難しいそうです。我々の選抜した医師のチームでオペを行いましたが、失敗に終わりました。」
いくら有名歌手とは言え、批判では収まらない程の騒動となっている。これまでだったらありえない事態だが、今のこの日本でなら、当然と言わざるおえないだろう。あの件から政府は国民の信頼を失ったのは、今から一年前の事だった。
その年は異常災害の年と言われていた。昨年四月、東北地方を中心に震度6強、マグニチュード6.8の大型地震が発生。被災地に対しての国の支援が不十分であると批判が殺到。
八月、近畿地方で落雷が多発し、重要文化財建造物等が燃焼。大阪でも火災が多発。批判を受け東北地方の復興に国は尽力していたが、近畿地方が放置気味で再び批判殺到。
十二月、中部地方北陸と北海道で類を見ないほどの大降雪。毎日死人が当然のように出る地獄絵図だった。ここでもまた同じような理由で批判殺到し、遂には首都東京に抗議デモを起こす者まで現れ始めた。
国に悪気は無く、恐らく全てをケアする事は不可能に等しい自然の怒りであるが、政府の事情説明や近況報告が不十分であったことから、国民の信用を失い、統率が不能都なったのだ。
やがてテロ集団も現れるようになり、本当に手が着けられなくなった日本政府は、あくまでも前面的には平和主義でいきたいが、善良な一般市民に影響が出る事を恐れ、我々暗殺機構サイレンスに秘密裏に依頼を申請した。
我々サイレンスは、日本を拠点とし、世界各国の警察に対応出来ない大規模騒動を弾圧する為に作られた特殊戦闘隊であり、裏社会では、どんな凶悪犯罪者でも目を付けられた時点で戦慄すると噂の天罰を下す神のような存在だ。
「到着しました。」
「ご苦労だった。」
俺は車を降りて、本部の司令室へと足を運んだ。
「失礼します。」
「聖薇君入りたまえ。」
ドアノブに手を掛け、司令室へと入った。司令室の椅子には、サイレンスの最高司令官である「柊」が座っている。
「報告します。地点は東京都渋谷駅前。死者五十六名。内六名が返り討ちにされました。テロ集団に死者はいません。現在、昏睡状態にし隔離しています。」
「そうか。今回は犠牲者が多いな。直近だとマシな方だがな。ご苦労だった。帰ってしっかり休みたまえ。」
「では、お先に失礼します。」
俺は司令室を出て、政府陣の車で自宅へと帰還した。
「到着しました。また次の任務の際にお会いしましょう。」
「ああ。さようなら。」
自宅へと帰還し、俺はすぐにベットで横になった。
「………犠牲者零名は大変だな。この地上から、永遠に脅威が排除されれば良いのにな。」
そんな事を口に零しながら、俺は瞼を閉じた。
一夜が明け、俺は目覚めた。簡単に朝食を済ませ、制服に着替えて自宅を出た。
俺はまだ高校生。こんな今だからこそ、進学せずに任務に専念する事も可能だが、俺には一生に一度のこの時期を、蹴る判断は出来なかった。後悔したくないから。
「おはよう歪。」
登校中、一人の男が声を掛けてきた。
「おはよう旋梨。」
彼は「紫藤 旋梨」。俺の親友であり、戦友でもある。彼も俺と同じで、サイレンス所属…つまり暗殺者の家系だ。
「昨日さぁ、俺達に指導して欲しいっていう変わった連中が訪ねてきてさぁ。放課後会ってみてくれね?」
「お前は?」
「東京タワーの捜査。先日の爆弾魔がばら撒いた爆弾の処理作業だよ。タワーで最後なんだよね。これまでに一つも発見されてないけど…。」
「そうか。気をつけろ。」
そんな会話をしながら歩いていたが、人通りが多くなってきたので、適当な雑談に話題を変えた。
俺達は暗殺機構の構成員だが、表向きは普通の学生となっている。裏社会に居たって、結局は二重生活しているケースが多い。
この社会の人間として生まれた宿命だ。力無き者として生まれていたら、もっと幸せだったのかもしれないが、こうやって普通の生活も送れていて、良かったと思う。……今日の夕方まではそう思っていた。
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