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5章:記憶に残る文化祭
#24.傑作のために
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「今日もお疲れさん。いつもより早く来てくれたお陰で、いつもより早く配り終えられたな。」
「はい。お疲れ様です。今日は学校で文化祭の集まりがあるので、時間を前倒ししました。」
いつものように配達業の手伝いが終わり、僕はお小遣いを受け取った。
そして水分補給をしていると、叔父さんは尋ねてきた。
「そういえば、もう八月の後半かぁ……今年の夏休みはどうだったか?楽しかったか?」
「楽しかったですよ。ナガシマに行ったり、キャンプに行ったりと充実していましたし、友達とちょっとした外出もしていたので。八月以降は文化祭準備漬けでしたけどね……」
八月もちょくちょく集まってはいたものの、まとまった時間が取れなかったため、遠出はキャンプが最後だ。
基本的に学校で何かしらやっているか、お盆の間とかはずっと家や親の実家で過ごしていた。
「それでもいい休暇にはなっただろうな。文化祭準備は大変かもしれないが、それ相応の達成感があることは爽真も知っているはずだ。頑張ってこいよ!」
「うん。行ってきます。」
木に立て掛けていた自転車に跨り、僕は学校へと向かった。
駐輪場に自転車を停めて玄関に向かおうとすると、美咲と奏翔に出会った。
「おっはー爽真!そっちのクラスも文化祭準備?」
「おはよう美咲、奏翔。うん。僕のクラスも文化祭準備だよ。」
「大変だよね~やる気のある人はこの日より前から下準備してるんだけど、方向性の違いで厄介事になるかもなんだから。」
「そうそう。昨年は半分完成したところで揉めて、一から作り直したクラスもあったよね。」
「ね~。私達は丸く収まったたから良かったものの……。奏翔は昨年その被害に遭っていたよね?」
「俺はずっとコンピュータいじってたから支障なかったよ。クラスの雰囲気はピリついて、二分化していたけどねぇ……。困ったらとりあえず、部室とか委員会室とか、自分の持ち場に避難すればいいと思う……」
確かに昨年、揉めそうな空気が流れた時は、すっと教室を出ている人もいた。僕は最後まで残っていたけど、琉威なんかは図書室に逃げていた。
「それが一番いいかもね。…ただ、誰かが仲介しないと溝が深まって労力が増えるから、難しいところ……」
「きっと大丈夫だよっ!皆こだわりがあるから対立しちゃうこともあるかもしれないけど、その先に待つものは最高傑作なんだからっ!」
「まぁ美咲の言う通りではあるけど……」
「その対立が解消されないことが問題なんだよねぇ……」
そんな話をしていると既に頭が痛くなってくるが、仮にトントン拍子で進めば最高傑作になることは確かだった。
とりあえず、みさかなのクラスは美咲のポジティブさもあって安心感がありそうだった。
「それより、美咲も爽真も…そろそろ行かないと……」
時計を見ると、けっこう立ち話が長くなってしまったことに気がついた。
「あっ…そうだね。じゃあ二人とも、また帰りかどこかで!」
「また上手く話が進んだか聞かせてねっ!」
僕達はそれぞれの教室に、少し急ぎ足で歩いていった。
教室に入ると、もう人がけっこう集まっていて黒板に書き込みがされていた。
とりあえず僕は自分の席に座り、あちこちから聞こえてくる話を聞いていた。
「おはよ爽真。」
すると、残り僅かの書類を手に持った琉威がそう声を掛けてきた。
「おはよう。それは昨日の残り?」
「いや、新しいものだ。発注品が毎日のように届くから、その都度確認が必要なんだ。ところで、本格準備前の話し合いは順調そうか?」
「僕も今来たところだから何とも……」
そう言いながら辺りの様子を伺っていると、早彩が近くに来て言った。
「今のところは順調そうだよ。でも、ちょっと怪しいかも……」
「あ、早彩。おはよう。」
「うん。おはよう。」
「ちょっと怪しいって?あまりそうは見えないけど……」
「大元の話し合いはね。だけど、周りの話し声をよく聴いてみると……?」
早彩にそう言われて、教室の窓際の方に固まってる人の会話を聴いてみた。
_____________
「土台はできたみたいだけど……何かイメージしてたものと違うくない?」
「分かる分かる!でも、何だか言い出しづらいよねー」
「だよねー。級代を中心に話がまとまってきているし、掻き乱すわけには……」
_____________
「……なるほどね…意見することを躊躇している感じか…」
僕がそう呟くと、琉威は少し悩んでいる様子だった。
「どうしたの琉威?」
「正面対立で二分化することは無さそうだけど、黙っている人達は決定にあまり乗り気じゃないみたいだ。後で拗れるかもな……」
そう言うと、琉威はメインで話し合っている人達の方へと歩み寄った。
「お話し中のところすみません。ここからは俺に仕切らせてもらってもよろしいですか?」
そうして級代に同意を求める視線を送った。
「構わないが…今回はけっこう順調だぞ?反対意見も出されていないし。」
「確かに反対意見も出されてなくて一見順調かもしれない。だが、仮に意見を主張をしなかった人でも、集まれば声を揃えて主張してくる。今のうちに吐き出せるものは吐いて、後でいざこざにならないようにした方がいいんじゃないかと思って。」
「ふむ…一理あるな……。分かった。再度全体で確認を取るから、援助を任せてもいいか?」
「勿論。」
そう話をつけて、琉威は僕達の方へ戻ってきた。
「そういうことで、今から多分対立する。仲介して上手く調和するぞ。その先に“傑作”は眠っているはずだからな。」
「あれ、なんかデジャヴが……」
「自ら面倒事にするタイプなんですね……琉威さんは…」
僕と早彩はそう呆れながらも、彼に協力することに決めた。
「はい。お疲れ様です。今日は学校で文化祭の集まりがあるので、時間を前倒ししました。」
いつものように配達業の手伝いが終わり、僕はお小遣いを受け取った。
そして水分補給をしていると、叔父さんは尋ねてきた。
「そういえば、もう八月の後半かぁ……今年の夏休みはどうだったか?楽しかったか?」
「楽しかったですよ。ナガシマに行ったり、キャンプに行ったりと充実していましたし、友達とちょっとした外出もしていたので。八月以降は文化祭準備漬けでしたけどね……」
八月もちょくちょく集まってはいたものの、まとまった時間が取れなかったため、遠出はキャンプが最後だ。
基本的に学校で何かしらやっているか、お盆の間とかはずっと家や親の実家で過ごしていた。
「それでもいい休暇にはなっただろうな。文化祭準備は大変かもしれないが、それ相応の達成感があることは爽真も知っているはずだ。頑張ってこいよ!」
「うん。行ってきます。」
木に立て掛けていた自転車に跨り、僕は学校へと向かった。
駐輪場に自転車を停めて玄関に向かおうとすると、美咲と奏翔に出会った。
「おっはー爽真!そっちのクラスも文化祭準備?」
「おはよう美咲、奏翔。うん。僕のクラスも文化祭準備だよ。」
「大変だよね~やる気のある人はこの日より前から下準備してるんだけど、方向性の違いで厄介事になるかもなんだから。」
「そうそう。昨年は半分完成したところで揉めて、一から作り直したクラスもあったよね。」
「ね~。私達は丸く収まったたから良かったものの……。奏翔は昨年その被害に遭っていたよね?」
「俺はずっとコンピュータいじってたから支障なかったよ。クラスの雰囲気はピリついて、二分化していたけどねぇ……。困ったらとりあえず、部室とか委員会室とか、自分の持ち場に避難すればいいと思う……」
確かに昨年、揉めそうな空気が流れた時は、すっと教室を出ている人もいた。僕は最後まで残っていたけど、琉威なんかは図書室に逃げていた。
「それが一番いいかもね。…ただ、誰かが仲介しないと溝が深まって労力が増えるから、難しいところ……」
「きっと大丈夫だよっ!皆こだわりがあるから対立しちゃうこともあるかもしれないけど、その先に待つものは最高傑作なんだからっ!」
「まぁ美咲の言う通りではあるけど……」
「その対立が解消されないことが問題なんだよねぇ……」
そんな話をしていると既に頭が痛くなってくるが、仮にトントン拍子で進めば最高傑作になることは確かだった。
とりあえず、みさかなのクラスは美咲のポジティブさもあって安心感がありそうだった。
「それより、美咲も爽真も…そろそろ行かないと……」
時計を見ると、けっこう立ち話が長くなってしまったことに気がついた。
「あっ…そうだね。じゃあ二人とも、また帰りかどこかで!」
「また上手く話が進んだか聞かせてねっ!」
僕達はそれぞれの教室に、少し急ぎ足で歩いていった。
教室に入ると、もう人がけっこう集まっていて黒板に書き込みがされていた。
とりあえず僕は自分の席に座り、あちこちから聞こえてくる話を聞いていた。
「おはよ爽真。」
すると、残り僅かの書類を手に持った琉威がそう声を掛けてきた。
「おはよう。それは昨日の残り?」
「いや、新しいものだ。発注品が毎日のように届くから、その都度確認が必要なんだ。ところで、本格準備前の話し合いは順調そうか?」
「僕も今来たところだから何とも……」
そう言いながら辺りの様子を伺っていると、早彩が近くに来て言った。
「今のところは順調そうだよ。でも、ちょっと怪しいかも……」
「あ、早彩。おはよう。」
「うん。おはよう。」
「ちょっと怪しいって?あまりそうは見えないけど……」
「大元の話し合いはね。だけど、周りの話し声をよく聴いてみると……?」
早彩にそう言われて、教室の窓際の方に固まってる人の会話を聴いてみた。
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「土台はできたみたいだけど……何かイメージしてたものと違うくない?」
「分かる分かる!でも、何だか言い出しづらいよねー」
「だよねー。級代を中心に話がまとまってきているし、掻き乱すわけには……」
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「……なるほどね…意見することを躊躇している感じか…」
僕がそう呟くと、琉威は少し悩んでいる様子だった。
「どうしたの琉威?」
「正面対立で二分化することは無さそうだけど、黙っている人達は決定にあまり乗り気じゃないみたいだ。後で拗れるかもな……」
そう言うと、琉威はメインで話し合っている人達の方へと歩み寄った。
「お話し中のところすみません。ここからは俺に仕切らせてもらってもよろしいですか?」
そうして級代に同意を求める視線を送った。
「構わないが…今回はけっこう順調だぞ?反対意見も出されていないし。」
「確かに反対意見も出されてなくて一見順調かもしれない。だが、仮に意見を主張をしなかった人でも、集まれば声を揃えて主張してくる。今のうちに吐き出せるものは吐いて、後でいざこざにならないようにした方がいいんじゃないかと思って。」
「ふむ…一理あるな……。分かった。再度全体で確認を取るから、援助を任せてもいいか?」
「勿論。」
そう話をつけて、琉威は僕達の方へ戻ってきた。
「そういうことで、今から多分対立する。仲介して上手く調和するぞ。その先に“傑作”は眠っているはずだからな。」
「あれ、なんかデジャヴが……」
「自ら面倒事にするタイプなんですね……琉威さんは…」
僕と早彩はそう呆れながらも、彼に協力することに決めた。
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