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4章:夜に散る火の色祭
#20.気づいたら
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ついさっきまで花火で彩られていた夜空もすっかり元通りになり、屋台も徐々に完売して片付けに入っていた。
「実際に現地で見るのは初めてだったけど、やっぱり迫力が違うね~!」
「美咲も楽しんでくれたようで何より……」
美咲が初めてのお祭りで楽しんでいるのを見て奏翔は満足そうな表情を浮かべていた。
「良かったな奏翔。」
「ずっと待ち焦がれていた日がようやく訪れたって感覚だよ…。改めて皆ありがとう。お陰で楽しい時間になった。」
珍しくストレートに感謝を伝える奏翔に、僕達は応えた。
「こちらこそ、また来年も行こうね。」
「その前にまた何処かに出掛けたりしたいよな。」
「私も皆と一緒にいると楽しいです!また誘ってくださいね!」
すると美咲はニコッと笑い、言った。
「今日はありがとう!これからもよろしくねっ!」
「お先に帰るね。また後日会おう。」
「ばいばいっ!」
別れの挨拶をして美咲と奏翔はそのまま帰路を辿って行った。
「あ、俺ちょっと連絡が来ててさ、しばらくここに残るから二人で先に帰っててもいいぞ?」
すると突然琉威はそう言い始めてベンチに座った。
「用事?」
「ああ。生徒会の用事でさ、昼の間に決まらなかったことを緊急で終わらせる必要が出てきたからさ……ちょうど祭りに来てるらしいから合流するんだ。」
「こんな時間まで大変ですね……お疲れ様です。」
「なぁに、普段はやってないよ。じゃあまた明日な。」
「うん。頑張ってね。」
「気をつけて帰ってくださいね。」
こちらも挨拶をして僕と早彩は人の流れに沿って帰路を辿って行った。
会場から離れてきてお祭りから帰る人々も散らばっていった頃、早彩から僕に話しかけてきた。
「今日はとっても楽しかったし、何より懐かしかったの。」
「中学生以来だっけ。」
「はい。一人じゃあまり行きたいと思わなかったので……。また特別な思い出になっちゃったかもしれません!」
そう言って少し口角が上がる彼女は、何処か可愛らしかった。
「……っ!」
僕はどうして早彩と仲良くなりたかったのか。単に同じ委員会だけどあまり言葉を交わさなかったから、波長が合いそうだと思ったから。もしかしたら最初は本当にそういう理由だったのかもしれない。
たった今、僕は知らなくてもいいことに気がついてしまったのかもしれない。いつの間にか彼女に惹かれ、友情は恋愛感情に置き換わってしまった。
「……ぁあ。やってしまった。」
「……?爽真…?」
「ううん。こっちの話……」
急に表に現れた感情に適応しきれず、会話もままならない状態になっていた。
「……そっか。」
それから口数が少し減り、気が付けば僕達の帰路も枝分かれした。
「じゃあまた明日ね!」
「うん。また明日……」
自分の帰路を行く早彩を見送り、僕も自分の帰路に辿った。
「明日…ね……今まで通りの日常が送れると良いのだけど……」
家に到着して、僕は今日撮った写真を眺めながら日記を書いていた。
『射的を通して早彩との距離も縮まって、毎年恒例の花火も見られていい夏祭りになりました。……けれど、どうやら行き過ぎてしまったようで明日からが不安です。今日は詩を綴れる心境じゃありません。』
「……本当の詩人さんなら、こういう時にこそ詩を書くんだろうけどね…全然気持ちが整理できてないや。」
複雑な気持ちを抱えたまま、早く平常心を保てるようになろうと眠りに就いた。
「ごめんなさい待ちましたか?」
「気にしないでください。莉緒副会長。それで、色園さんは見かけましたか?」
「見かけたよ~。でも今日は大人しくしてから声は掛けなかったよ。」
「そうですか。なら大丈夫です。」
そう言って俺は飲みかけのサイダーを空にすると、副会長は俺の隣に座った。
「本当は私がどうにかしなくちゃいけない問題なのに君ばかりにごめんね。」
「いいえ…これでも元彼ですから…俺が解決しなければいけません。できれば誰も傷つかない形で………。と、自分語りになってしまいましたね。明日の業務でお会いしましょう。」
「気をつけてね~」
俺は荷物を持ってベンチから立ち上がり、自宅に向かった。
「実際に現地で見るのは初めてだったけど、やっぱり迫力が違うね~!」
「美咲も楽しんでくれたようで何より……」
美咲が初めてのお祭りで楽しんでいるのを見て奏翔は満足そうな表情を浮かべていた。
「良かったな奏翔。」
「ずっと待ち焦がれていた日がようやく訪れたって感覚だよ…。改めて皆ありがとう。お陰で楽しい時間になった。」
珍しくストレートに感謝を伝える奏翔に、僕達は応えた。
「こちらこそ、また来年も行こうね。」
「その前にまた何処かに出掛けたりしたいよな。」
「私も皆と一緒にいると楽しいです!また誘ってくださいね!」
すると美咲はニコッと笑い、言った。
「今日はありがとう!これからもよろしくねっ!」
「お先に帰るね。また後日会おう。」
「ばいばいっ!」
別れの挨拶をして美咲と奏翔はそのまま帰路を辿って行った。
「あ、俺ちょっと連絡が来ててさ、しばらくここに残るから二人で先に帰っててもいいぞ?」
すると突然琉威はそう言い始めてベンチに座った。
「用事?」
「ああ。生徒会の用事でさ、昼の間に決まらなかったことを緊急で終わらせる必要が出てきたからさ……ちょうど祭りに来てるらしいから合流するんだ。」
「こんな時間まで大変ですね……お疲れ様です。」
「なぁに、普段はやってないよ。じゃあまた明日な。」
「うん。頑張ってね。」
「気をつけて帰ってくださいね。」
こちらも挨拶をして僕と早彩は人の流れに沿って帰路を辿って行った。
会場から離れてきてお祭りから帰る人々も散らばっていった頃、早彩から僕に話しかけてきた。
「今日はとっても楽しかったし、何より懐かしかったの。」
「中学生以来だっけ。」
「はい。一人じゃあまり行きたいと思わなかったので……。また特別な思い出になっちゃったかもしれません!」
そう言って少し口角が上がる彼女は、何処か可愛らしかった。
「……っ!」
僕はどうして早彩と仲良くなりたかったのか。単に同じ委員会だけどあまり言葉を交わさなかったから、波長が合いそうだと思ったから。もしかしたら最初は本当にそういう理由だったのかもしれない。
たった今、僕は知らなくてもいいことに気がついてしまったのかもしれない。いつの間にか彼女に惹かれ、友情は恋愛感情に置き換わってしまった。
「……ぁあ。やってしまった。」
「……?爽真…?」
「ううん。こっちの話……」
急に表に現れた感情に適応しきれず、会話もままならない状態になっていた。
「……そっか。」
それから口数が少し減り、気が付けば僕達の帰路も枝分かれした。
「じゃあまた明日ね!」
「うん。また明日……」
自分の帰路を行く早彩を見送り、僕も自分の帰路に辿った。
「明日…ね……今まで通りの日常が送れると良いのだけど……」
家に到着して、僕は今日撮った写真を眺めながら日記を書いていた。
『射的を通して早彩との距離も縮まって、毎年恒例の花火も見られていい夏祭りになりました。……けれど、どうやら行き過ぎてしまったようで明日からが不安です。今日は詩を綴れる心境じゃありません。』
「……本当の詩人さんなら、こういう時にこそ詩を書くんだろうけどね…全然気持ちが整理できてないや。」
複雑な気持ちを抱えたまま、早く平常心を保てるようになろうと眠りに就いた。
「ごめんなさい待ちましたか?」
「気にしないでください。莉緒副会長。それで、色園さんは見かけましたか?」
「見かけたよ~。でも今日は大人しくしてから声は掛けなかったよ。」
「そうですか。なら大丈夫です。」
そう言って俺は飲みかけのサイダーを空にすると、副会長は俺の隣に座った。
「本当は私がどうにかしなくちゃいけない問題なのに君ばかりにごめんね。」
「いいえ…これでも元彼ですから…俺が解決しなければいけません。できれば誰も傷つかない形で………。と、自分語りになってしまいましたね。明日の業務でお会いしましょう。」
「気をつけてね~」
俺は荷物を持ってベンチから立ち上がり、自宅に向かった。
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