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2章:ジャンボ海水プール
#7.馴染むこと
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今日は一段と日差しが強い。その影響か地面がとても熱く、素足が火傷しそうだ。
「絶対来る日間違ってるでしょ……クーラー効いた部屋で作業してる方が涼しい気がしてる……」
「そう?奏翔がほとんど外に出ないからそう思うだけじゃない?自業自得じゃん。」
「グサッ…その正論パンチは俺にクリーンヒット…」
美咲と奏翔のそんないつも通りのやり取りを横目にしながら、僕達は日陰に避難していた。
今、僕達のいる場所は去年の秋に訪れた場所の一部。ナガシマスパーランドだ。
「うぅ……勢いでOKしちゃったけど、なんで今私はここに居るんだろう……」
____________
先日の出来事。
二人で水やりを終えて、ちょっと休憩しながら話をしていた。
「それで毎日あちこち回っているんですね。部活に手伝いにと大変じゃないですか?」
「うーん…慣れてるからそんなにかな。そういう繰り返しの生活でも、毎日が変化に満ち溢れていると思ってるから。」
「……相葉君は不思議な感性を持っていますね。」
「そう?まぁ……そうかも。多分見えてる世界に差異があると思うんだ。」
「……っ?」
時折、相葉君の言葉に何やら意味があるように感じてしまう。きっと私と同じで彼なりの背景があるんだろうけど、あまり訊かない方がいいと思い飲み込んだ。
「彼となら…仲良くなれるかも……」
そう小さく呟き空を見ていると、彼はいきなりこんな事を提案してきた。
「あ、そうだそうだ、近々友達と遊びに行こうと思ってるんだけど東風さんもどう?」
「………え?」
____________
本当に突拍子もない出来事で、暑さもあってか了承しちゃったけど、私は誰かと会話をすることさえも中々ないのに、いきなりアクティビティに行くことに……。
勿論、誘ってくれたのはとても嬉しいし楽しみにもしてたんだけど、冷静に考えてみると面識ない人がほとんど。
果たして、口下手な私は無事に一日を乗り切ることができるのだろうか。
「緊張する………」
そう硬直していると私の目の前に、スポーツドリンクが差し伸べられていた。
「はい、東風さん。体調は大丈夫?」
そう声を掛けてスポドリを渡してきたのは相葉君だった。
「あ…ありがとうございます。体調は大丈夫です。ただ、馴染めるかなと思いまして……」
「あぁ……大丈夫。ちょっと個性的なのはあの二人だけだから……」
「そうそう、あまり気にせんでいいから。」
相葉君に続いて、生徒会の人がそう付け足した。
「あ、自己紹介してないな。俺は琉威。爽真の親友だ。よろしく。」
「あ…はい。私は東風早彩です。今日は一日よろしくお願いします。」
「まぁそんな硬くなるなって。同級生なんだからさ。」
「すみません。まだ慣れていないので……」
「大丈夫大丈夫。僕は東風さんのペースに合わせるから。」
「おいおい、俺を空気の読めない奴みたいに言わないでくれ。」
そうして二人のレスバが始まった。だけど、それが口喧嘩のようには全然見えなかった。きっと信頼があってこその“相手を知ったやり取り”なんだと思う。
その中にも彼らなりの節度と線引きはあると思うけど、それが砕けた会話…友人との会話というものを形成している気がしてる。
「……ふふっ」
その仲睦まじい会話に、私は思わず微笑みを零した。
「……?どうしたの東風さん?」
すると相葉君は不思議そうに私にそう尋ねた。
「…ううん、何でもない。二人ともありがとう、ちょっとほぐれた気がするよ。」
「そっか。でも安心したよ。東風さんの笑った顔が見られて。」
「なら……良かったです。」
やっぱり私にとって彼は不思議な人だ。少なくともさっきのやり取りを見ていると、今まで私が出会った人達とは違う目で私を見てくれていると感じられた。
私にとっては、それが何よりも嬉しかった。
「さて……休憩も済んだ事だし、そろそろ俺らも動きますか。」
「そうだね。ほら行こ、東風さん。」
「は…はい!」
先を行く二人に続いて、私も日陰から動き出した。
今すぐに馴染めるとは思っていない。だけど、折角相葉君が誘ってくれたんだ。今日一日は、目一杯楽しむことを心に決めた。
「絶対来る日間違ってるでしょ……クーラー効いた部屋で作業してる方が涼しい気がしてる……」
「そう?奏翔がほとんど外に出ないからそう思うだけじゃない?自業自得じゃん。」
「グサッ…その正論パンチは俺にクリーンヒット…」
美咲と奏翔のそんないつも通りのやり取りを横目にしながら、僕達は日陰に避難していた。
今、僕達のいる場所は去年の秋に訪れた場所の一部。ナガシマスパーランドだ。
「うぅ……勢いでOKしちゃったけど、なんで今私はここに居るんだろう……」
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先日の出来事。
二人で水やりを終えて、ちょっと休憩しながら話をしていた。
「それで毎日あちこち回っているんですね。部活に手伝いにと大変じゃないですか?」
「うーん…慣れてるからそんなにかな。そういう繰り返しの生活でも、毎日が変化に満ち溢れていると思ってるから。」
「……相葉君は不思議な感性を持っていますね。」
「そう?まぁ……そうかも。多分見えてる世界に差異があると思うんだ。」
「……っ?」
時折、相葉君の言葉に何やら意味があるように感じてしまう。きっと私と同じで彼なりの背景があるんだろうけど、あまり訊かない方がいいと思い飲み込んだ。
「彼となら…仲良くなれるかも……」
そう小さく呟き空を見ていると、彼はいきなりこんな事を提案してきた。
「あ、そうだそうだ、近々友達と遊びに行こうと思ってるんだけど東風さんもどう?」
「………え?」
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本当に突拍子もない出来事で、暑さもあってか了承しちゃったけど、私は誰かと会話をすることさえも中々ないのに、いきなりアクティビティに行くことに……。
勿論、誘ってくれたのはとても嬉しいし楽しみにもしてたんだけど、冷静に考えてみると面識ない人がほとんど。
果たして、口下手な私は無事に一日を乗り切ることができるのだろうか。
「緊張する………」
そう硬直していると私の目の前に、スポーツドリンクが差し伸べられていた。
「はい、東風さん。体調は大丈夫?」
そう声を掛けてスポドリを渡してきたのは相葉君だった。
「あ…ありがとうございます。体調は大丈夫です。ただ、馴染めるかなと思いまして……」
「あぁ……大丈夫。ちょっと個性的なのはあの二人だけだから……」
「そうそう、あまり気にせんでいいから。」
相葉君に続いて、生徒会の人がそう付け足した。
「あ、自己紹介してないな。俺は琉威。爽真の親友だ。よろしく。」
「あ…はい。私は東風早彩です。今日は一日よろしくお願いします。」
「まぁそんな硬くなるなって。同級生なんだからさ。」
「すみません。まだ慣れていないので……」
「大丈夫大丈夫。僕は東風さんのペースに合わせるから。」
「おいおい、俺を空気の読めない奴みたいに言わないでくれ。」
そうして二人のレスバが始まった。だけど、それが口喧嘩のようには全然見えなかった。きっと信頼があってこその“相手を知ったやり取り”なんだと思う。
その中にも彼らなりの節度と線引きはあると思うけど、それが砕けた会話…友人との会話というものを形成している気がしてる。
「……ふふっ」
その仲睦まじい会話に、私は思わず微笑みを零した。
「……?どうしたの東風さん?」
すると相葉君は不思議そうに私にそう尋ねた。
「…ううん、何でもない。二人ともありがとう、ちょっとほぐれた気がするよ。」
「そっか。でも安心したよ。東風さんの笑った顔が見られて。」
「なら……良かったです。」
やっぱり私にとって彼は不思議な人だ。少なくともさっきのやり取りを見ていると、今まで私が出会った人達とは違う目で私を見てくれていると感じられた。
私にとっては、それが何よりも嬉しかった。
「さて……休憩も済んだ事だし、そろそろ俺らも動きますか。」
「そうだね。ほら行こ、東風さん。」
「は…はい!」
先を行く二人に続いて、私も日陰から動き出した。
今すぐに馴染めるとは思っていない。だけど、折角相葉君が誘ってくれたんだ。今日一日は、目一杯楽しむことを心に決めた。
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