【完結】 I は夏風と共に、詩を綴る

やみくも

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1章:長い夏の始まり

#3.早朝の運動

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 アラームに頼らず、カーテンの隙間から差す日差しで起きる気持ちのいい朝。時計を見ると今の時刻は午前6時だった。 
 
 「なんだ……まだ6時か。相変わらず夏の朝は早い……」

 そんなことを呟きながらカーテンを開き、リビングに降りていった。



 食パンをトースターに入れ、僕はスマホを開く。すると一件の通知が入っていた。

 『悪い、今日人が足りんから午前入ってくれね?』という内容だった。
 僕の叔父さんは軽い配達業を営んでおり、人手が足りないからという理由でおととしからアルバイトをさせてもらっている。
 確か去年の夏もほぼ毎日朝に2時間程度自転車で辺りを周っていたはずだ。
 
 「やっぱり初日からあると思った。」

 いい焼け具合になって食パンを取り出して、片手で了承のメッセージを送信し、僕は朝食を摂る。



 「あら、おはよう爽真。」

 「おはよう、母さん。今から叔父さんの手伝いに行ってくるね。」

 「そう、暑いから熱中症には気を付けて行ってくるのよー。」

 そう言って母は水筒にお茶を入れて軽く投げてきたため、それをキャッチして僕は玄関の戸を開けた。
 
 「分かった。」







 普段とは違う道を自転車で走っていると、ちょっとした坂道に出た。初めて通る場所だけど、何処と繋がっているのかは大体察しがつく。



 「あれ?爽真じゃん。やっほ~!」

 少し離れたところから聞き覚えのある声が聞こえたため自転車を停めて声のする方向を見ると、案の定美咲の姿があった。

 「おはよう。美咲は早起きだね。」

 「そっちこそでしょ?爽真は朝早くから自転車を走らせて何処に向かってたの?」

 「アルバイト…かな?叔父さんの手伝いだよ。去年の夏も朝から自転車でその辺りを走り回っていたと思うけど。」

 「言われてみればそうだったかも!」

 「美咲は何をしているの?」

 「私はランニングだよっ!いい日はいい運動からだからね。」

 「美咲らしいね。じゃあ頑張ってー。」

 「うん、お互いに頑張ろう!あ、また何か楽しいことをする時は連絡を入れてねっ!」

 朝から超元気な様子で美咲は再びランニングに戻った。
 元気を少し分けて貰った僕も暑さに負けないようにと、叔父さんの元に向かった自転車を走らせた。







 あれから10分程経ち、叔父さん倉庫に到着した僕は木に自転車を立て掛けた。そして倉庫奥の扉をノックした。

 「叔父さーん。来ましたよー。」

 すると扉が開かれて、二段重ねの段ボールを抱えた叔父さんが出迎えてくれた。

 「おぅ爽真。今月もよろしくな。早速だが、このメモを参考にして配達をお願いしたい。」

 抱えていた段ボールを一度床に降ろして、叔父さんはポケットから紙切れを取り出して僕の手に置いてきた。
 9軒回ることになっていて、距離もそれぞれそう遠くない。1時間弱で配達しきれるだろう。

 「配達物は正面ゲート右のフォークリクトに積んである段ボールの上2つだ。じゃあ、そういうことでよろしく。」

 「分かりました。では行ってきますね。」

 そう言って僕は段ボールを自転車のかごに紐で括り付け、タイヤの状態を確認した上で出発した。







 「………はい、サインは大丈夫です。ありがとうございました。」

 最後の配達物が届け終わり、僕は自転車にまたがって来た道を引き返していった。
 掛かった時間は大体予想通りであり、いい運動にもなった。

 「さて……水やりの手伝いに行きますか……」



 倉庫への帰路の途中で道を変え、学校の西門で自転車を降りた。
 
 「おはよう東風さん。」

 西門から少し進み、階段に沿って並べられたプランターやその奥に見える大きな花壇に水やりをしている東風さんの姿が目に入った。

 「あ……相葉君…来たんだ。」

 「昨日約束したじゃん。通り掛かったから手伝うよ。僕がプランターは全てやっておくから、東風さんは引き続き花壇の方をよろしくお願いします。」

 そう言って僕はホースを引っ張ってきて、上段から順に水やりを始めた。







 範囲の広い花壇ではあるものの、二人で行えばそこまでではなく、3分弱で全ての花に水を与えることができた。

 「お疲れ様。」

 「お疲れ様です。手伝ってくれてありがとうございました。」

 「いいよそのくらい。また明日ね。」

 僕は蛇口を捻って水を止め、自転車に乗って倉庫に戻って行った。





 「変わった人……」

 私には相葉君が何を考えているのか全く読めなかった。純粋な優しさもあるんだろうけど、どうしても引っ掛かるところがあった。
 
 「…深く考え過ぎてるのかな……」

 この暑い中にぽつんと立って考えていても仕方がないと思い、とりあえず部室に向かうことにした。
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