思想で溢れたメモリー

やみくも

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7章―B ー消墨編ー

176.回収

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 俺はほぼ放任状態であり、思う存分暴れていた。それと並行して各七代思想宗派は裏で力を着け、着々と反逆者の排除に取り掛かっていた。計画は順調に進んでいたらしい。
 しかし、次第に我々の存在に気が付く者が現れ始め、その中でも“特に異彩を放つ存在”がRT-▓▓6殿に接触したのだ。



RT-▓▓6「ぐはぁぁぁッ!……お前…一体…何者……だ……」

???「……そのまま返すぞ、その言葉。」

 謎の男は異次元の速さでRT-▓▓6に接近し、斧を振りかぶった。すると地割れを起こしながら、奴は沈んだ。
 だが、黒い膜を纏い、息を上げながらも地上に復帰した。

RT-▓▓6「この恨み……いつか絶対晴らしてやるからな……」

 そう言って、RT-▓▓6はその場から姿を消した。



 マインダーが初めて敗走した。数日後にすぐに招集が掛かり、その内容が俺の元に伝達された。

RT-▓▓6「すまない。拙者が油断したばかりに、我々マインダーと大罪人の外出禁止が決定した。情勢が安定するまでは、裏方に回るように。」

喰墨「承知…しました……」



 つまらない。ただただ退屈だった。こんなのでは俺の欲求は満たされない。
 そもそも最初から、俺は彼らの計画なんてどうでも良かった。計画の過程自体が俺にとって都合が良かっただけだ。

喰墨「潮時か……」

 RT-▓▓6殿への恩は充分に返した。人間の寿命より遥かに長い時間尽くしたのだから。
 段々と飽きてきた俺は組織を抜け出す準備を始めた。






 しかし、準備が完了するよりも先に、奴は歪な気配を察知して待ち伏せしていたのだ。

喰墨「そこをどけ…ルミ。」

ルミ「……。」

喰墨「そうか。ならば一戦交えようじゃないか!」

 地上に繋がる門は目前であり、早期に決着を着ければ追手もすぐには来られないと思い、俺は邪力を纏って臨戦体勢に入った。

ルミ「…お手柔らかに……お願いしますね。」

喰墨「ッ!…身体が…痺…れる……」

 一瞬だった。ルミの抜刀した直後、俺の腹部に斬撃が加えられた。
 相手にもしていないような無気力な表情で刀を収納して、ルミは動けない俺に顔を近づけて言った。

ルミ「MP-71様からの代弁です。“情報漏洩防止のため、組織の秘密を知る者は誰一人として逃さない。”……排除対象にでもしたいところですが、教祖同士で無駄に血を流すのは不本意です。このことは私が黙っていてあげます。その代わりに……組織の決定に従ってください。」

 そして彼女は笑顔を向ける。マインダーに直接バレていないだけまだマシだが、処刑担当であるルミには目をつけられた。下手な動きをすれば排除されると俺は確信した。
 
喰墨「……覚えておけよ…」

__________________
 
喰墨「連中は上から抑えつける形で管理をしている。そのせいで、俺は未だに退屈な日々を強いられている。最後に本気で暴れたのは謎の男を返り討ちにした時で最後だ。」

サニイ「なるほど……そういうケースもあるのか……。」

 七代思想宗派の構成員は、信念の強い者ほど実力も伴っていた。だが、喰墨は少し違って単なる模造品に感じてしまう。地球人の空白の器に無理矢理魂を入れ込んだだけに思える。

サニイ「どちらにせよ……我々にとって君は敵となる。まともな感性しているとは到底思えないな。」

喰墨「褒め言葉として受け取っておこう。」

 喰墨にかけた魔力延命の時間も直に尽きるが、早急に始末するために俺は槍を突き付けた。

サニイ「……自分の爽快感のためだけに悪行の限りを尽くす君でも、“強欲”にはなれていない。……一体どれほどのものなんだ。強欲は。」

 以前レイズから聞いた。7つの大罪強欲は不動の強さを持っていることが伺えると。
 その真偽を確かめると、喰墨から想像通りの返答が返ってきた。

喰墨「“化け物”…その一言で説明がつくような奴だ。力に執着し、貪欲に成長を続ける元人間。……ずば抜けた強さを有するマインダーに最も近い存在だ。」

サニイ「……化け物…か…。」

喰墨「ああ。気を付けろよ。」

サニイ「ありがとうな。……それじゃあ…刑罰の時間だ。……ッ!」

 突き付けていた槍を前に押し出して喰墨を撃破しようとしたその時、奴から黒いオーラが放たれ、まともに立っていられないほどの強い風圧が襲ってきた。



サニイ「……居ない…。」

 風が止んで顔を上げると、そこに喰墨の姿はなかった。
 戦闘態勢を解いて思考を巡らせていると、嘶と抗が来た。

嘶「逃げられたのか……?」

サニイ「違う。恐らくは奴らに回収されたんだ。迂闊だった。」

抗「……面倒なことになりそうだ。」

サニイ「…考えても仕方がない。仲間の安否も心配だし、一旦戻ろうか。」

 荒れた戦場を後にして、俺達は避難所としていた前哨基地❂に向かった。



      ー恒星ー



Cos/35「ひとまず、回収には成功しました……それで、これを下にまだ置いときたいですか?RT-▓▓6。」

RT-▓▓6「使いたいようにどうぞ。」

Cos/35「合理的な判断だと思いますよ。……処分するには惜しいですし、狂騒者は“傀儡”がお似合いですよ。忠誠心が薄く、並々ならぬ思想の持ち主でもない。果たして自我が必要ですか?」

RT-▓▓6「同意する。拙者としても取り繕うのが疲れるくらい扱いにくかった。…その功績だけは、評価に値するものだったが。」

Cos/35「貴方もそう感じていましたか。とはいえ、そのきっかけを作ったのも貴方ですが……」

RT-▓▓6「もう掘り返すでない。それで今破綻しているわけではないだろ!」

Cos/35「そうですね…順調とは言えませんが。とりあえず、暴食は貰っていきます。またお会いしましょうか……。」

 邪力が抜け切って横たわっている喰墨を揺り籠に封じ込め、Cos/35はその場を去った。
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