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7章―A ー閉情編ー
146.いつかは、
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バレンタイン「それからは、インフィニット教教祖として、各地を転々としながら狩りをしていた。そして、この戦いに負けるまでが私の人生。」
曖人「………救いがあるなら救いたいかったが、双方メリットが無いんだよな。」
バレンタイン「ええ。……ルミの砲撃からは、逃れるのが難しいです。」
俺は剣に光を纏い、思念波を漲らせ、剣を構えた。
曖人「マインダーの真の目的は分かるか。和解の可能性はあるか。」
バレンタイン「私達もよく分かっていない。和解は……難しいかもしれません。私と貴方がそうだったように、人の対立はすれ違いから成りますから。」
曖人「お前を大罪人にしたマインダーはどんな奴だった?」
バレンタイン「常に感情が薄い方で、本性を全く現しません。ですが、時折何か思考を巡らせていました。意外と愛想がある人でしたよ。」
曖人「……もう、良いか?」
バレンタイン「いつでも覚悟は出来ている。最後に会う人が貴方で良かった。ラビリンスの英雄。威風曖人。」
曖人「こちらこそ、戦闘経験にレパートリーが増えて良かった。……バレンタイン、お前の意思は、俺が勝手に引き継ぐ。」
バレンタイン「はい。勝手にしてください。」
光を纏った剣が舌を斬ると、エネルギーの気配が消えた。
外へ出てみると、巨大化したバレンタインが倒れていて、アナーキーゾーンは解除されていた。
これで、この戦いは幕を閉じたのだ。
戦闘態勢を解くと、深雅が待っていたので、そちらへ向かった。
深雅「そっちも終わったようだな。」
曖人「ああ。手強かった。」
お互いに普段より口数が減っている。こちらも色々思うところがあるが、彼も何かあるのだろう。
すると、彼はゆっくりと口を開いた。
深雅「残念な報せが一つある。……李朱樹が死んだ。」
曖人「……そうか。」
遂に出てしまった。ラピスラズリとしても戦死者は出ているし、俺達も何百と命を手に掛けてきているが、顔馴染みにも戦死者が出てしまった。
戦場にいる以上、覚悟はしていたが、やはり受け入れ難いのも事実だ。
曖人「多分だけど、ここからもっとこういう事が起きる。戦争に片足突っ込みかけてる以上、避けられない。……彼の分まで、強く生きよう。代わりにはなれないけど……。」
深雅「……そうだな。」
戦場に情を持ち込むのは、苦しみを倍増させるだけ。今までは我儘が通用したが、これからはそうはいかなくなるだろう。
バレンタインの言っていたルミの砲撃によって、救われた人は無慈悲にも撃ち抜かれた。
その話をギルムから聞いた時、俺はこの戦いはもうそういうフェーズにと突入していると、理解らされた。
綺麗事なんて言える立場じゃない。ちゃんと笑っていられる時が来るまでは、乗り越えなければいけない。
下山し、俺達はジェット機に着いた。アナーキーゾーン内は感覚が歪んでいて分からなかったが、一週間は滞在していたようだ。
戻ってから仲間の話は色々と聞いた。チェインとファーマが覚醒したこと、李朱樹が戦死した事、奴らとの戦闘。
そうこう色々準備を済ませ離陸した。
あの戦いから、長い月日が流れた。そして、旅に出てもうすぐ3年が経過する。
この3年間、色々な事があったが、やはり一番印象に残っているのは、ホウキ教、インフィニット教との戦いだ。
あの戦いで、俺の思想はかなり変化した。その後もこの世界の文明や自然、能力を目の当たりにしたが、思想エネルギー程原理が分からないものは、無かった。
とはいえ、新たな力を取得するきっかけになったので、無駄では無かった。
心明「そろそろ着くよ!」
ファーマ「……なんか綺麗になってない?結界が追加されてるが。」
ここに来るのは2年ぶりだ。ゼノラ大陸。
到着早々、俺は時計塔へ向かった。すると、待っていたかのように、彼は出てきた。
スレイ「もう2年か。時の流れは早いな。それとも歳か?」
曖人「まだ全然肉体の全盛期だろ。」
スレイ「30いきかけてるが。」
曖人「約束の日はもうすぐだ。行こう。ラビリンスへ。」
スレイ「ああ。」
こうして再び離陸し、第二の故郷、約束の地ラビリンス大陸に向かった。
だが、正直3年も経ってどうなっているかは見当もつかない。
そこは他のリヴォリーターで何とかしているようにも思えるが、やはり期間としては相当だ。
そして、何より、本当の戦いは“これから”なのだから。
萌愛「長かったね。旅。」
曖人「本当にな。あの天使覚悟しとけよマジで……。」
そんな冗談を言い合いながら、空の旅を楽しんでいると、見えてきた。
ーラビリンス大陸がー
7章―A 閉情編 完
次回 8章 静夜の駆け引き編
曖人「………救いがあるなら救いたいかったが、双方メリットが無いんだよな。」
バレンタイン「ええ。……ルミの砲撃からは、逃れるのが難しいです。」
俺は剣に光を纏い、思念波を漲らせ、剣を構えた。
曖人「マインダーの真の目的は分かるか。和解の可能性はあるか。」
バレンタイン「私達もよく分かっていない。和解は……難しいかもしれません。私と貴方がそうだったように、人の対立はすれ違いから成りますから。」
曖人「お前を大罪人にしたマインダーはどんな奴だった?」
バレンタイン「常に感情が薄い方で、本性を全く現しません。ですが、時折何か思考を巡らせていました。意外と愛想がある人でしたよ。」
曖人「……もう、良いか?」
バレンタイン「いつでも覚悟は出来ている。最後に会う人が貴方で良かった。ラビリンスの英雄。威風曖人。」
曖人「こちらこそ、戦闘経験にレパートリーが増えて良かった。……バレンタイン、お前の意思は、俺が勝手に引き継ぐ。」
バレンタイン「はい。勝手にしてください。」
光を纏った剣が舌を斬ると、エネルギーの気配が消えた。
外へ出てみると、巨大化したバレンタインが倒れていて、アナーキーゾーンは解除されていた。
これで、この戦いは幕を閉じたのだ。
戦闘態勢を解くと、深雅が待っていたので、そちらへ向かった。
深雅「そっちも終わったようだな。」
曖人「ああ。手強かった。」
お互いに普段より口数が減っている。こちらも色々思うところがあるが、彼も何かあるのだろう。
すると、彼はゆっくりと口を開いた。
深雅「残念な報せが一つある。……李朱樹が死んだ。」
曖人「……そうか。」
遂に出てしまった。ラピスラズリとしても戦死者は出ているし、俺達も何百と命を手に掛けてきているが、顔馴染みにも戦死者が出てしまった。
戦場にいる以上、覚悟はしていたが、やはり受け入れ難いのも事実だ。
曖人「多分だけど、ここからもっとこういう事が起きる。戦争に片足突っ込みかけてる以上、避けられない。……彼の分まで、強く生きよう。代わりにはなれないけど……。」
深雅「……そうだな。」
戦場に情を持ち込むのは、苦しみを倍増させるだけ。今までは我儘が通用したが、これからはそうはいかなくなるだろう。
バレンタインの言っていたルミの砲撃によって、救われた人は無慈悲にも撃ち抜かれた。
その話をギルムから聞いた時、俺はこの戦いはもうそういうフェーズにと突入していると、理解らされた。
綺麗事なんて言える立場じゃない。ちゃんと笑っていられる時が来るまでは、乗り越えなければいけない。
下山し、俺達はジェット機に着いた。アナーキーゾーン内は感覚が歪んでいて分からなかったが、一週間は滞在していたようだ。
戻ってから仲間の話は色々と聞いた。チェインとファーマが覚醒したこと、李朱樹が戦死した事、奴らとの戦闘。
そうこう色々準備を済ませ離陸した。
あの戦いから、長い月日が流れた。そして、旅に出てもうすぐ3年が経過する。
この3年間、色々な事があったが、やはり一番印象に残っているのは、ホウキ教、インフィニット教との戦いだ。
あの戦いで、俺の思想はかなり変化した。その後もこの世界の文明や自然、能力を目の当たりにしたが、思想エネルギー程原理が分からないものは、無かった。
とはいえ、新たな力を取得するきっかけになったので、無駄では無かった。
心明「そろそろ着くよ!」
ファーマ「……なんか綺麗になってない?結界が追加されてるが。」
ここに来るのは2年ぶりだ。ゼノラ大陸。
到着早々、俺は時計塔へ向かった。すると、待っていたかのように、彼は出てきた。
スレイ「もう2年か。時の流れは早いな。それとも歳か?」
曖人「まだ全然肉体の全盛期だろ。」
スレイ「30いきかけてるが。」
曖人「約束の日はもうすぐだ。行こう。ラビリンスへ。」
スレイ「ああ。」
こうして再び離陸し、第二の故郷、約束の地ラビリンス大陸に向かった。
だが、正直3年も経ってどうなっているかは見当もつかない。
そこは他のリヴォリーターで何とかしているようにも思えるが、やはり期間としては相当だ。
そして、何より、本当の戦いは“これから”なのだから。
萌愛「長かったね。旅。」
曖人「本当にな。あの天使覚悟しとけよマジで……。」
そんな冗談を言い合いながら、空の旅を楽しんでいると、見えてきた。
ーラビリンス大陸がー
7章―A 閉情編 完
次回 8章 静夜の駆け引き編
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