思想で溢れたメモリー

やみくも

文字の大きさ
上 下
146 / 229
7章―A ー閉情編ー

146.いつかは、

しおりを挟む
バレンタイン「それからは、インフィニット教教祖として、各地を転々としながら狩りをしていた。そして、この戦いに負けるまでが私の人生。」

曖人「………救いがあるなら救いたいかったが、双方メリットが無いんだよな。」

バレンタイン「ええ。……ルミの砲撃からは、逃れるのが難しいです。」

 俺は剣に光を纏い、思念波を漲らせ、剣を構えた。

曖人「マインダーの真の目的は分かるか。和解の可能性はあるか。」

バレンタイン「私達もよく分かっていない。和解は……難しいかもしれません。私と貴方がそうだったように、人の対立はすれ違いから成りますから。」

曖人「お前を大罪人にしたマインダーはどんな奴だった?」

バレンタイン「常に感情が薄い方で、本性を全く現しません。ですが、時折何か思考を巡らせていました。意外と愛想がある人でしたよ。」

曖人「……もう、良いか?」

バレンタイン「いつでも覚悟は出来ている。最後に会う人が貴方で良かった。ラビリンスの英雄。威風曖人。」

曖人「こちらこそ、戦闘経験にレパートリーが増えて良かった。……バレンタイン、お前の意思は、俺が勝手に引き継ぐ。」

バレンタイン「はい。勝手にしてください。」

 光を纏った剣が舌を斬ると、エネルギーの気配が消えた。
 外へ出てみると、巨大化したバレンタインが倒れていて、アナーキーゾーンは解除されていた。
 これで、この戦いは幕を閉じたのだ。







 戦闘態勢を解くと、深雅が待っていたので、そちらへ向かった。

深雅「そっちも終わったようだな。」

曖人「ああ。手強かった。」

 お互いに普段より口数が減っている。こちらも色々思うところがあるが、彼も何かあるのだろう。
 すると、彼はゆっくりと口を開いた。

深雅「残念な報せが一つある。……李朱樹が死んだ。」

曖人「……そうか。」

 遂に出てしまった。ラピスラズリとしても戦死者は出ているし、俺達も何百と命を手に掛けてきているが、顔馴染みにも戦死者が出てしまった。
 戦場にいる以上、覚悟はしていたが、やはり受け入れ難いのも事実だ。

曖人「多分だけど、ここからもっとこういう事が起きる。戦争に片足突っ込みかけてる以上、避けられない。……彼の分まで、強く生きよう。代わりにはなれないけど……。」

深雅「……そうだな。」

 戦場に情を持ち込むのは、苦しみを倍増させるだけ。今までは我儘が通用したが、これからはそうはいかなくなるだろう。
 バレンタインの言っていたルミの砲撃によって、救われた人は無慈悲にも撃ち抜かれた。
 その話をギルムから聞いた時、俺はこの戦いはもうそういうフェーズにと突入していると、理解らされた。
 綺麗事なんて言える立場じゃない。ちゃんと笑っていられる時が来るまでは、乗り越えなければいけない。







 下山し、俺達はジェット機に着いた。アナーキーゾーン内は感覚が歪んでいて分からなかったが、一週間は滞在していたようだ。
 戻ってから仲間の話は色々と聞いた。チェインとファーマが覚醒したこと、李朱樹が戦死した事、奴らとの戦闘。
 そうこう色々準備を済ませ離陸した。 







 あの戦いから、長い月日が流れた。そして、旅に出てもうすぐ3年が経過する。
 この3年間、色々な事があったが、やはり一番印象に残っているのは、ホウキ教、インフィニット教との戦いだ。
 あの戦いで、俺の思想はかなり変化した。その後もこの世界の文明や自然、能力を目の当たりにしたが、思想エネルギー程原理が分からないものは、無かった。
 とはいえ、新たな力を取得するきっかけになったので、無駄では無かった。

心明「そろそろ着くよ!」

ファーマ「……なんか綺麗になってない?結界が追加されてるが。」 

 ここに来るのは2年ぶりだ。ゼノラ大陸。







 到着早々、俺は時計塔へ向かった。すると、待っていたかのように、彼は出てきた。

スレイ「もう2年か。時の流れは早いな。それとも歳か?」

曖人「まだ全然肉体の全盛期だろ。」

スレイ「30いきかけてるが。」

曖人「約束の日はもうすぐだ。行こう。ラビリンスへ。」

スレイ「ああ。」




 こうして再び離陸し、第二の故郷、約束の地ラビリンス大陸に向かった。
 だが、正直3年も経ってどうなっているかは見当もつかない。
 そこは他のリヴォリーターで何とかしているようにも思えるが、やはり期間としては相当だ。
 そして、何より、本当の戦いは“これから”なのだから。

萌愛「長かったね。旅。」

曖人「本当にな。あの天使覚悟しとけよマジで……。」

 そんな冗談を言い合いながら、空の旅を楽しんでいると、見えてきた。

   ーラビリンス大陸がー




7章―A 閉情編 完

次回 8章 静夜の駆け引き編
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何百回も転生した私は村人になりたかったけど魔界に転生してしまったので魔界に村を作ってそこで生活する!

しおん
ファンタジー
20XX年〇月△日… フリーターの蔵本 梨夢(くらもと りむ)は不慮の事故により死亡し、そして異世界に転生する。 そして梨夢の予想通り勇者として魔王討伐に使わされる。そして無事に帰還し天寿をまっとうする。 これで終わりかと思いきや次は王子として転生!? その次は大賢者、その次は魔王…様々な人生を送ってきたが、普通の人生を送りたい! そう思った彼女は宿命だの運命だのを完全スルーしどこにでもいる普通の村人Aとして生きていく… はずが何故か魔界に転生?! 村がなければ作ればいい! 「魔界に人が住めるような村を私は作ります!」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

名も無い忌子

蜘優桜
ファンタジー
初めまして、出会ってくれてありがとう 今これを読んでいるキミ達の時代には魔法も、亜人もいないんだよね? そっか。そうだよね これは、とある少年少女の物語だよ 『人間守護団』に入った、幼い少年少女のね これから、たくさんのことが起こる キミは耐えられるかな? 苦しいことも悲しいこともあるかもね でもキミがこの物語で守られて、愛を見て、勇気をもらって、幸福になれて、導きかれて、自由になって、支えられて、寄り添われて、包まれて___ 救われることを祈っているよ ん?ボクが誰かって? …誰だろうね?きっといつかわかるよ

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...