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やみくも

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7章―A ー閉情編ー

144.一触即発

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 俺は飛行形態に入り、剣に炎を纏った。そして、触手を切り払う構えをとった。

バレンタイン「ふふっ……ふふふ!」

 そんな笑い声が残響し、液体が跳ねて青白く発光した。

バレンタイン「想術:イノチ酸散」

曖人「ッ!」

 飛び散る液体に飲まれぬよう、俺は斬撃波を打ってすぐにその場を離れた。
 だが、待ち構えていたと言わんばかりに、触手が伸びてきた。

曖人「剣術:熱躪」

 それを切り払うが、休む間などなく、クリアーフェザーが飛ばされてきた。
 砂を纏い、ラピス砂風で相殺するが、今度は液体が飛ぶ。その工程を繰り返すうちに触手は再生し、また引きずり込もうとしてくる。

曖人「はぁ…はぁ……終わりがない。」

 現状、奴の思惑通りだ。このままでは俺ばかりが疲弊し、パフォーマンスが落ちる。持久戦なら、あちらが圧倒的に有利なはずだ。
 思考を巡らせようにも、隙間ないテンポで飛んでくる攻撃に対応し、微量の反撃しか出来ない。
 そんな中、あるものが目に止まった。上部を見てみると、光が差し込んでいる。そこにも舌があった。
 むしろ、今戦っているほうがフェイクなのかもしれない。

曖人「そうと決まれば!」

 俺は一気上昇した。しかし、ここでずっと唯一何もしていなかった巨大な舌が動いた。
 舌は液体を纏い、凄いスピードで伸びてきた。流石に避けざるおえない。

曖人「くっ…。」

 何とか回避には成功したが、触手が上部への入口を塞いだ。そして、巨大な舌が上に動くと共に、液体の水位が上昇した。
 セギンと対峙した時の水位上昇も凶悪だったが、こっちは一発アウトのため、より凶悪でシビアだ。







バレンタイン「(まさか本物に気づくなんてね……。これまでに攻撃用の舌に辿り着いた唯一の人でさえも、ここまでは見破れ無かったのに。)」

 巨大な舌は暴れ狂う。何とか飛行でそれを躱してはいるものの、隙を作るのは難しい。
 前提として、あの液体を纏う以上、斬撃波でした攻撃出来ない。その唯一の手段でさえも、周りを取り囲む触手がサンドバッグになってしまう。
 ただ、あの舌にも感覚はある事は分かっている。逆に、舌以外はダメージを通さない事も分かっている。ただ、一時的に機能は失われるようだ。

曖人「整理できた。……一触即発だぞ。」

 剣に黒雷を纏い、自ら舌に接近した。舌は左右に動き俺を溶かそうとしてくるが、コードのように素早く華麗に回避し、刃を引く。

曖人「剣術:鰤億雷列」

 舌をギリギリで避けながら触手を斬り、舌を囲むように半周した。だが、クリアーフェザーやイノチ酸散での迎撃が加わり、より弾幕が激しくなった。
 それでも僅かな隙間を縫い、何とか一周した。再生される前に剣に光を纏いながら上部付近に行き、上昇する準備をした。

曖人「さぁ……覚悟しろ!剣術・遠隔:フラッシュカッター」

バレンタイン「うぅ!」
 
 フラッシュカッターを舌に直撃させると、凝縮されていた触手が解かれ、隙間が出来た。
 そこに熱躪で追撃すると、触手はぐったりと倒れた。俺は上部に繋がる道へと入った。







バレンタイン「お願い!それ以上は……!やめて!」

 そんな声は響くが、抵抗してくる素振りは無い。さっきのところが最後の門番だったのだろう。
 かなりの速度が出ているはずだが、道のりは長い。それだけスケールが大きいのか、アナーキーゾーン内で距離感が変わっているのだろう。
 そして、本当の口内に着いた。先程までの異形の怪物のでは無く、人のと同じ構造のだ。

バレンタイン「許して……貴方の手下にもなりますし、何でもしますから!」

曖人「仮に生かされたとして、俺を裏切らなかったとしても、処刑されるだろう。セギンを貫いたあの能力……あれを喰らうくらいなら、ここで安らかに眠る方が良いはず。」

バレンタイン「……なら、最期に一つ…。話を聞いてくれますか?」

曖人「それくらいなら。」

 俺は飛行形態を解き、舌の上に着地した。そして、寝っ転がった。弾力があり、若干沈む。

バレンタイン「うぅ……く、くすぐったい……!」

曖人「一応抑制が必要だからな。……許しますか…。」

 そして、再び飛行形態に入った。
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