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やみくも

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7章―A ー閉情編ー

目覚める本能 〜vs悪戯好きの巨大鰐〜

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 最初は軽く応戦していたが、普通に苦戦している。無限に出てくるカボチャの怪物に対処しながら、奴の噛みつきを回避せねばならないため、体力が持っていかれる。

ハロウィン「弱過ぎない?期待して損したんだけど……早く僕に追い付いて?」

 すると、カボチャ弾が出現し、緑炎を纏った。

ハロウィン「魔術:グリーンナイト」

チェイン「魔術:鎖の狂乱舞」

 カボチャ弾は一斉に俺の方に飛ばされるが、鎖に蒼炎を纏って相殺した。
 そのまま本体に接近し、鎖で勢いをつけて跳び上がり、紫炎へと変換させて構えた。

チェイン「遊びは終わりだ。魔術:虚悪化す紫暁」
  
 紫炎の鎖は奴の頭部に絡まった状態で、激しく燃焼した。しかし。

ハロウィン「へぇー。これで終わらせるわけ無いじゃん。……詰めが甘いね。」

 奴は鎖を振り解き、身体に絡む電飾のような器官を点滅させた。
 すると、光に吸い込まれるようにして、俺の意識は消えた。







 チェインが倒れた。場を整えるためにカボチャを迎撃していたからよく見えなかったが、チェインの中技を簡単に受けきり、何かをしていた。
 すると、彼が起き上がった。

ファーマ「良かった。無事……か……ッ!たちの悪い悪戯だ……洗脳したのか。」

 起き上がったチェインの鎖は緑炎を纏っており、眼に光は灯っていなかった。
 そして、こちらに殺気を向けている。間違い無く洗脳されたのだ。

ハロウィン「僕、君達ほど動けないんだよねー。……僕が何百年もの間、人を食らい続けられた理由、それは洗脳による強制静止と狩り、カボチャによる包囲あってこそ。」

 確信した。こいつは厄介だ。グレインのようなものだろうか。

ファーマ「何かとよく遭遇するな……洗脳主体支援型戦術者とは。」

 そう呆れたように言って、弓を二丁ボウガンに変形させた。

ファーマ「俺の成長計測でもするか。どこまで通用するか。」

ハロウィン「さっきから一人で何言ってるの?まぁいいや。鎖の悪魔。」

 奴がそう名前を呼ぶと、チェインは一気に距離を詰め、命散の鎖文字の構えを取った。
 俺はそれを掻い潜り、矢をヒットさせた。だが、それを華麗な鎖さばきで防いできた。

ファーマ「命令するだけで操作は出来ないようだな。扱いが上手い。」

ハロウィン「操作するメリットない。ほら、次。」

 すると今度は、鎖が地面を埋め尽くすように展開され、上に交差して持ち上げられた。

ファーマ「魔術:エコピストル」

 矢にエネルギーを凝縮させ、連射して鎖をずらし、抜け出した。
 次にチェインは命散の鎖文字を重ねて放ってきたので、ワニの方に誘導してから、回避した。

ハロウィン「魔術:トリック・カーニバル」 
 
 小さなカボチャの怪物が複数体召喚され、緑炎を纏って退路を防いできた。

ファーマ「くっ!魔術:聖樹の春雨」

 空に矢を放ち、矢の雨を注いでカボチャには対処した。だが、鎖は目前に迫っている。
 
ファーマ「魔術:流樹液・二砲」

 二丁のボウガンから矢を撃ち出し、鎖をすり抜けて、チェインの足に矢をヒットさせた。
 怯んだ隙に俺はチェインに接近し、叫んだ。

ファーマ「上書きされた意識を潰せ!お前の自我はその程度じゃないだろ!」



ハロウィン「………はい?」

 奴は完全に困惑しているようだ。しかし、これは実際に有効な方法だ。高度能力者レベルになると、どれだけ強い洗脳を受けようが、元の自我は粘り強く耐える。
 それの活性化を促せば、戻ってくる奴はマジでいる。
 今の俺ではチェインもハロウィンも倒せない。こいつを信じるか、見捨てるしか方法が無い。
 ゼロよりイチに賭けるのは当然だ。







 真っ暗な精神世界。グレインの時も見た光景だ。自力で抜け出す事は一応可能だ。
 その唯一の方法は、目の前にいる上書きされた意識を撃破する事だ。
 しかし、こいつは疲れる事を知らない不変の存在だ。一方、俺は体力も精神も抉り取られる。だからこそ、大抵は外部から解いてもらうしか無いのだ。

チェイン「強い事は必ずしも良い事では無いな……倒せねェ。擬い物如きすら。」

 俺はこの数年の間で格段に強くなった。故に、抵抗はできても、上回るのが非常に難しい。
 それに付け加え、ファーマが今の俺に勝てるか分からない。彼も強いが、鎖と矢の相性が悪い。
 最悪の場合、完全に自我が潰れるだろう。

 “上書きされた意識を潰せ!お前の自我はその程度じゃないだろ!”

 突如、そんな声が響いた。すると続いてまた聞こえた。

 “目覚めろ!お前の最大出力。見せてみろ!”

チェイン「なんて強引な……。応えてやるよ。その期待。」

 俺は立ち上がり、鎖に蒼炎を纏い、上書き精神体を睨みつけた。

チェイン「そこを退け。貴様如きが俺を名乗るなァ!」

 蒼炎はより燃え上り、若干赤みがかった。遂に解放に成功したのだ。“覚醒状態”に。
 精神体は上書きされた時の能力値を基準にして造られている。つまり、今は自我である俺が上回っている。
 鎖を重ね合わせ、張り巡らせた鎖の中心に奴を捉え、圧縮させた。

チェイン「魔術:至難の超越・絡嘆破り」

 迫る鎖は上書き精神体を破壊し、暗黒の景色を晴れさせた。







 チェインを信じ、俺はカボチャとハロウィンの攻撃に対処して耐えていた。

ハロウィン「もう飽きた。魔術:グリーンナイト」

 先程チェインに対して放った量とは比にならないほどのカボチャ弾が降り注いだ。

ファーマ「多過ぎる。魔術:辛裏前線」

 矢の雨で一応抵抗するが、半分も迎撃できていない。地味に耐久性があるため、エネルギーを分散させると相殺しきれない。だが、一つ一つ撃ち落とす余裕は無い。

チェイン「魔術:壁墜の鎖文字」

 カボチャ弾に直撃する寸前の時、ゆらゆらと燃え盛る鎖が覆い被さり、カボチャ弾を相殺した。

ハロウィン「嘘でしょ?!洗脳を自力で解くなんて……。」

 そこに現れたのは紛れもなく本物の…。

ファーマ「チェイン…。覚醒までして。」

チェイン「一気に畳み掛けるぞ。お前も“本能を表面化”させてみろ。」

 俺はエネルギーを使い切る気で矢に凝縮させた。すると、身体が限界を突破させた。しかし、動ける。

ファーマ「活性化できたぞ。チェインはよく頑張った。後は俺で対処する。」

 そう言って飛び上がり、矢にエネルギーを凝縮させ、弓に戻して装填した。

ハロウィン「ああ!もう食すまで!」

 思考放棄したハロウィンは、顎を開き、俺との距離を詰めるが、無駄でしか無い。

ファーマ「さよなら。魔術:硝蹂の木滴」

 毒素を含む樹液矢がハロウィンを居抜くと、身体は溶けるように崩れた。
 俺達は覚醒を解き、膝をついた。

ファーマ「覚醒って疲れるな……。」

チェイン「あれを常時やってる連中は何者だよ本当に……。」

ファーマ「加勢……は無理だな。」

チェイン「ああ。」

 力尽きた俺達は、曖人を信じて、身体を休める事にした。

 


 
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