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 両手をぱんっと景気よく叩き、色事に染まりそうなこのもんもんとした空気を払う。
「よし!じゃあ、なんて言い訳するのか考えましょう!」

 部屋の外では未だにドッコンバッコン音が聞こえている。このままではオリバーは投獄されるかもしれない。
 魔術の残証は消せないと思うからごまかせないとして、使用した理由くらいはなんとか取り繕えないだろうか。
 
 アリアはオリバーの両腕に拘束されたまま、思案に耽る。
 そうしたら、なぜかもにゅりとお尻が揉まれた。

「ちょっと!何してるの!?」
「尻も柔らかい。」
 
 両方の尻タブを、大きな固い手で、もにゅりもにゅりと揉まれる。
 アリアは思いっきり、オリバーの両腕をバシバシと叩いた。
 
「自分のことでしょ!?遊んでいる暇はないの!正気に戻って!」
「俺は正気だ。そして本気だ。」
「嘘つくなー-----っ!」

 バシリと、オリバーの顔を平手で叩く。
 かなり本気で叩いたので、さすがのオリバーも顔を横に背けた。しかし横を向いたその体制のまま、お尻をもにゅもにゅと揉んでいる。

 叩かれた頬がじわりと赤くなり、その顔向きのまま視線だけをチラリとアリアに向けて、オリバーは口を開いた。

「解いていいか?」
「え?」
「俺もさすがにやばいと思っている。だから、解いていいか?」

 きっと部屋に張り巡らせている、水の魔術のことだろう。それを解くということは、警備隊が突入してくるということだ。
 アリアは自分の恰好を見た。
 いつの間にかボタンは5つも外れ最後の1つを残すのみで、ほぼ前は見えている。肩は片方出ているし、上半身はレースの胸当てのみで、ほとんど裸と言っていい。
 
 少し恥ずかしくなって、アリアは頬を染めた。
 大人しくオリバーの紳士的な行動〔お尻は揉んでいる〕に甘え、肩をそっとシャツの中に戻す。
 
「オリバーが大丈夫なら、早く解いちゃったほうがいいかも。遅くなればなるほど、罪が重くなりそうだし。」
「そうか。」
 
 その途端、バリッと、アリアの胸当てが外れた。
 前から真っ二つである。
 衝撃すぎて、その瞬間がスローに見えたアリアには、胸当ての左右のつなぎ目が、何かの魔術で切り裂かれたのが見えた。

「赤くてエロい。」

 大きな両手が、アリアの真っ白な胸を鷲掴む。
 頂上にくっついている熟れた赤い蕾を、ぎゅっと摘ままれて、アリアは正気に戻った。

「何してんのっ!?」

 もうわけが分からなくて、アリアは泣き声である。

「すごいエロい。」
「やめて、やめて、離して~~~~っ!」

 手を突っぱねて離れようとしたら、勢いで後ろに数歩下がった。
 その先に机があったので、アリアはお尻を乗せて、乗りあがるような形で机の上に押し倒された。

「はあはあ………これは舐めていいやつだよな?」
「だめなやつっ!」
「そんな無茶な。」

 オリバーは両手で胸をもみもみしながら、谷間に顔を埋めている。
 そこですぅ~~~~っと、思い切り息を吸うものだから、アリアはゾクゾクして鳥肌がたった。

「ちょっとほんとにやめて!ストップ!ストーーーーップ!」
 
 オリバーは谷間から顔を離さず、視線だけ向けて、胸の先端の赤い蕾をぎゅっと摘まむ。
 力が強すぎて痛い。
 しかしアリアの体がビクリと震えたことで、オリバーは勘違いしたらしい。

「気持ちいいのか?」
「そんなわけあるかっ!この変態っ!いいから離れろっ!」
「女はここが性感帯だと聞いたことがある。」
「そんなに強く潰されたら、普通に痛い!」
「じゃあどうしたらいい?こうか?」

 オリバーは赤い蕾をくりくりと捏ねると、優しくそっと押し潰した。
 なんか違う。なんか違うけど、壊れ物を扱うように優しくされると、下腹が自然と熱くなってしまう。
 さわさわと胸を触るオリバーを見ながら、アリアはこのままじゃまずいと思った。

 なんだかんだ言って、オリバーのやりたいようにやられている。警備隊も全然来ないし、このままだと最後までやられてしまう。
 そんなの絶対に嫌だ。

 アリアは胸の谷間に顔を埋めているオリバーの頬に両手を添えると、優しくこちらを向くように促す。
 目が合うと、にこりと微笑んで口を開いた。

「ねえ、オリバー。キスして。」

 ぴしりとオリバーの動きが止まる。
 そしてアリアの瞳からゆっくりと視線が下がり、プルプルとみずみずしく潤った赤い唇を凝視した。

「ん」

 アリアはツンと唇を突き出して、オリバーにキスをおねだりした。
 この誘惑にこの男が勝てるわけがない。絶対だ。

「い…いいのか?」

 オリバーは困惑気味に、おそるおそるアリアに尋ねる。

「うん。して。」

 かわいく見えるように、アリアは小首を傾げながら、オリバーにお願いをした。

「責任は取る。」
「ん?」

 何を言われたのか理解するよりも早く、アリアの唇に柔らかく温かい唇が押し付けられた。
 ちょんっと触れて、すぐ離れる。でもその距離は今にも触れそうな距離から退くことはない。

「柔らかいな。」
「……うん。」

 まるで恋人同士だなと、アリアは遠い目をした。
 部屋の外では、ギーコギーコガガガガと、何かを削る大きな音がしているが。

 アリアは腕をオリバーの首に回すと、自分からオリバーに口づける。
 舌で唇をなめてやれば、閉ざされていたオリバーの唇はすぐに開き、アリアはオリバーの舌を優しくしごいた。

 ハッハッと荒い息をしながら、オリバーは一生懸命に答えようとしている。
 一生懸命になりすぎて、舌をアリアの口の中に押し込んで、ベロベロと口の中のいろんなところを舐めまくっている。
 おかげでアリアの後頭部は机に押し付けられ、とても痛い。

 ちょっと本当に後頭部痛いし、さすがに圧迫されて息も苦しいので、アリアはギブだと示すようにオリバーの肩をバシバシと叩いた。

 しかしオリバーは気づかない。
 いや、気づいているのかもしれないが、反応がない。
 
 加減してやろうと思っていたのに、アリアは腹が立って、思い切り力を使った。
 
 アリアは闇属性の使い手である。
 接吻を用いて対象の魔力を奪う魔術が、一番得意なのだ。

 魔力切れでオリバーが机に突っ伏して倒れ、水の魔術が解けるのと、部屋の壁が物理の力で、外側から崩れるのとはほぼ同時だった。
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