「やり直しなんていらねえ!」と追放されたけど、セーブ&ロードなしで大丈夫?~崩壊してももう遅い。俺を拾ってくれた美少女パーティと宿屋にいく~

風白春音

文字の大きさ
上 下
35 / 108

35話 ホワイトアリスは英雄になりました

しおりを挟む
 「くそ、撤退だ」


 フードを被った男がそう言って透明ドリンクを飲もうとする。

 だがリアが床を蹴って素早く移動しそれを制止する。


 「く、くそ離せ」
 「殺されたくなければ首謀者を教えろ」
 「誰が教えるものか」
 「じゃあ死ぬか?」


 俺がリアが組み伏せたフードの男のフードを取る。

 そして眼前にヴィクトリカから借りた剣を突き付けた。


 「ひ、ひいっ。わ、分かった。い、言う。だから、ゆ、許してくれ」
 「名前は?」
 「市民街の冒険者ダックだ」
 「特徴は?」
 「黒髪で太った奴だ。眼鏡をかけている」


 俺は腹部を殴り気絶させる。

 
 「警備部隊はこいつの確保と、ダックという人物を出国させるな」
 

 異変を察知し急いで駆けつけてきた宰相ルーティア率いる警備部隊。

 その警備部隊の一部が俺が気絶させた男を捕縛する。

 残りはすぐにダック捜索へ向かう。


 「セーブ」


 =========================

 スロット1 王族城寝室

 スロット2 王族城寝室

 =========================


 俺はスロット2に上書きセーブをした。


 「リア、ヴィクトリカ、ラフレア、アリス。急ぐぞ」
 「はい」
 「うむ」
 「ええ」
 「はい」


 俺達は急いでダックという人物捕獲へ向けて市民街へ移動する。

 国王陛下は腰を抜かして醜く地べたに座り込んでいた。

 呆れた様子でルーティアが見ていた。


 市民街に辿り着いた俺達はアリスの力を借りる。


 「マジックセンサー」
 「どうだアリス、同じ魔力を感じるか?」
 「あの者の残り香と同じ魔力が冒険者ギルドの中から感じます」
 「ナイス。行くぞ」
 「はい」


 俺達は急いで冒険者ギルドへと向かう。

 そして同時にダックと思わしき人物が急いで逃げようと冒険者ギルドの外へ出てきた。


 「おいどこに逃げる気だ? 逃がさねえぞ」
 「くそ、あの無能失敗しやがって」
 「お前がダックだな。悪いが捕縛させてもらう」
 「あんな無能の国王を庇う気か。殺された方が国の為だ」
 「正論だ。そして同感だ」
 「じゃあ何故だ!?」
 「クエスト報酬が美味しいからだよ」


 俺の言葉と同時にリアとヴィクトリカが鋼の剣を手にして地面を蹴ってダックへと向かう。

 ダックは太っていて鉄の鎧を着ている。

 眼鏡をかけたぽっちゃりだ。


 「甘いな」
 「何!?」


 ダックは透明ドリンクを急いで飲んで三十秒間透明になる。

 リアとヴィクトリカの攻撃がすり抜けた。


 「逃げる気よ。どうするの」
 

 透明ドリンクを何本持っているか分からないな。

 沢山持ってたら厄介だ。

 さてどうするか?

 一度ロードするか。

 そう思った時、アリスが言葉を口にした。


 「私に任せてください」
 「何か考えがあるのか?」
 「はい。このカースケインを使えば」
 「分かった頼む」


 そう言ってアリスはカースケインを両手で横にして持ち詠唱した。


 「呪術カースアビス」


 そう詠唱した瞬間カースケインが禍々しく光だし、周囲を黒き闇で覆った。

 すると突如ダックが苦しそうにして姿を現す。

 何が起こったんだ!?


 「このカースケインの能力です。一度認識した敵意のある対象を呪う事が出来ます」
 「呪う?」
 「はい。呪いの効果はこうです」


 アリスが呪いについて解説する。


 =====================

 呪術カースアビス

 能力 一度認識した敵意のある対象を一定時間呪う。

 呪われた対象は一定時間呼吸が苦しくなり動けなくなる。

 持続時間 三十秒

 魔力消費量は激しい。

 =====================


 何ていう恐ろしい能力。

 これは凄い能力だな。

 これを使いこなすアリスは天才かもしれない。


 俺は呪いを受けて苦しそうなダックを殴り気絶させる。

 これにて国王陛下暗殺計画は無事に阻止できた。

 警備部隊が直ぐに駆けつけダックを捕縛する。

 首謀者だから罪は重いだろう。

 処刑かもしれないな。


 そして現在――


 「私は認めぬぞ。Cランクパーティー如きに救われたなど」
 「そんな文句はいいからさっさと報酬を寄越せ」
 「誰に物を言っている。私は国王だぞ。報酬などやらん」
 「は!? お前何言ってやがる。殺されたいのか」
 「うるさいうるさい」


 プライドが凄く高い国王陛下はどうやらCランクパーティーに救われた事に納得がいかないようだ。

 子供のように駄々をこねている。

 俺は内心どころか苛立ちを顔に出していた。

 すると国王の間に宰相ルーティアが足を運ぶ。


 「失礼ながらホワイトアリス様のお陰で貴方の命は救われました。これは事実です」
 「事実ではない。こんな奴らいなくても私は自身で対処できたわ」
 「事実なのでランシード国民全員にこの事を公表しました」
 「は!? 貴様何を勝手に!!」
 「ついでに私も辞職します。もう我儘でクズな貴方には付き合っていられません」
 「ま、待て。お前がいなくなったらこの国はどうする」
 「ご立派な国王様なら何とかできるでしょう。大丈夫だと私は信じています」


 そう凄い皮肉を言って満面な笑顔で笑って退出するルーティア。

 俺達は全員内心ざまぁと思った。

 そしてルーティアの後に続いて退出する。


 「冒険者ギルドに報酬は渡してありますので、金貨二十枚はそちらでお受け取りください。国王の懐から抜いておきました」
 「ナイスだ。いやあスッキリしたな」
 「はい。これで私も自由の身」
 「これからどうするんだ?」
 「暫くは色々な国を周って旅をしたいと思います」
 「そうか。また会えるといいな」
 「はい。本当に今回の件ありがとうございました」


 そう言ってルーティアは俺達の前から消えた。

 その後国王陛下の醜態は全国民に晒された。

 ガクガクブルブル震えていた事実やCランクパーティーの俺達に縋りついた事など。

 国王は屈辱を受けることになった。

 赤っ恥をかいた国王は意気消沈して引きこもるようになった。

 国を実質指揮するのは帰国した息子であった。


 そして俺達は何故かランシード国の英雄となった。

 あれ? 何で俺達英雄扱いなんだ。

 どうやら差別を助長していた国王陛下を退位させた功績が国民に認められたようだ。

 貧民街は撤廃され貧民街の民は市民街に移動する事になった。


 「凄いじゃねえか。お前ら国の英雄だぞ」
 「本当に凄いわね。さあさあ今夜はパーティーよ」
 「イヤッホー」


 何故か俺の周囲が盛り上がっている。


 「これで良かったのか?」
 「まあいいであろう。妾達はクエストを成し遂げたのじゃ」
 「まあそうだが」
 「今夜は食べまくるのじゃー」
 「おい、待て」


 この日【ホワイトアリス】はこの国の英雄となった。

 貴族連中ですら前国王陛下の事は嫌いであった為、ホワイトアリスを称賛した。


 「よかったですね。一件落着で」
 「そうだな。アリスのお陰だよ」
 「そんな事ないですよ」
 「いや凄かったぞアリス」


 俺はアリスの頭をポンと撫でた。

 アリスは嬉しそうにしていた。

 さあセーブしよう。


 「セーブ」


 =========================

 スロット1 王族城寝室

 スロット2 ランシード王国冒険者ギルド

 =========================


 俺はスロット2に上書きセーブをした。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!

秋田ノ介
ファンタジー
 主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。  『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。  ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!! 小説家になろうにも掲載しています。  

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...