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4 『魔王の記憶』
しおりを挟むーー魔王視点ーー
いつからだろうか。
彼奴に希望を抱き始めたのは・・・。
今から6年前、新たな魔界の王が誕生した。
名をヴィルヘビア。
かつて魔界には二つの勢力が存在した。
当時の魔界王であり俺が付き従っていた方でもあったラヴァーナ様を支持するラヴァーナ派と現在の魔界王であるヴィルヘビアを支持するヴィルヘビア派。
ラヴァーナ様は人間界と友好関係を築き上げようと模索した。
だが、そんなラヴァーナ様を良しとしなかったのがヴィルヘビアだった。
ヴィルヘビアは当時から魔界王であったラヴァーナ様に匹敵する程の権力を持っていた。
そんな2人は目的の食い違いから争い始めることになる。
最初は俺達ラヴァーナ派が優勢だったが、ヴィルヘビアが送り込んだ3人の魔人の参入によって俺達は次第に蹂躙されていった。
俺たちも必死に足掻いたが、奴らの力は想像以上のもので手も足も出ずに敗北した。
その敗北で当然、ラヴァーナ派のトップであったラヴァーナ様は処刑された。
それも民達の前で。
ラヴァーナ様は最後に民達に向かってこう言っていた。
「我々は必ず救われます。1人の勇者によって。その時まで諦めずに希望を持って生き抜いてください。魔界は一度滅びます。ですが!必ず・・・勇者様が・・・あの方が・・・この世界に光をもたらしてくれるでしょう!」
ラヴァーナ様はその言葉だけを残し処刑された。
そしてラヴァーナ様の処刑から1年後。
ヴィルヘビアは本格的に神界の制圧へと動き出す。
ヴィルヘビアの配下である魔人3人。
マルファス、ヴォルス、フォルネウス。
そして俺を加えた4人で4つの世界の支配をすることになる。
俺が任された世界はイグニカ。
4つの世界の中で最も攻略が簡単な世界だと説明された。
人口も少なく、勇者もそれ程力を持っていない。
そんな世界の支配を任せるのは魔王達の中で1番弱い俺以外には居なかった。
そして、俺たち魔王は魔界王ヴィルヘビアの指示によって4つの世界を制圧するためにそれぞれの地に放たれた。
俺はこの世界に到着すると同時に支配するために直ぐに行動に移した。
ハッキリ言ってこの世界の人間達は話にならないレベルで弱かった。
兵士の数も少ない、勇者も単体の武勇では俺の軍の雑兵数十人を倒すのがやっとのレベル。
これならば1年以内には支配できるだろうとそう思っていたのだがそううまくいくことはなかった。
うまくいかなかった最大の理由は勇者アルキスの存在だ。
奴は弱い。だが、どんな絶望的な状況に陥ったとしても奴の目が曇ることはなかった。そんな彼の存在は兵士たちにとって希望の光だ。
兵士達は皆アルキスに感化され自分の死をも恐れずに突っ込む。
死を悟った兵士たちの目を一瞬にして引き戻すその力は恐ろしかった。
そして、そんな勇者の姿を見て俺は次第に心が奪われていった。
もしかするとこいつならばヴィルヘビアに打ち勝てるかもしれない。
こいつならば魔界を救えるのかもしれない。
そう思うようになっていった。
勇者がこの世界に光をもたらす。
ラヴァーナ様はそう言っていた。
その勇者がもし、アルキスなのだとしたら・・・と高揚した。
こいつならきっと俺を倒してこの世界を救い魔界を救ってくれると信じていた。
だが、現実は非情で勇者アルキスはこの俺如きに降伏してしまった。
「やはり、お前ではなかったのか。」
と落胆した。
けれど、少しでも可能性があるのならと俺は奴を生かすことにした。
当然、この行動自体ヴィルヘビアにすぐにバレてしまうだろう。
そうなれば奴はこの俺諸共この世界を壊すだろう。
だが、そうなったとしても俺は信じたい。
アルキス、お前が魔界にとっても・・・俺にとっても希望の光になることを。
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