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金剛石戦 予選トーナメント G組 第一回戦 立花富岳二段 vs 畠山京子初段
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400年前、徳川家康が始めたこの戦争。
人を殺し合う戦争ではなく領地を奪い合う侵略戦争。
徳川家康はより多くの領地を手に入れた者に褒美として宝玉を与えた。
宝玉は大中小合わせて50を超えた。
そしていつしか棋士達はその宝玉を賭け闘うようになった。
今回争奪する宝玉は金剛石。
エントリー数は514人。
一対一で闘い勝者は次のステージに進める。
こうして514人の頂点に立った一人のみが、前回王者である宝玉所持者への争奪挑戦の権利を与えられる。
挑戦者が前回王者に勝利すれば、新王者の誕生。
前回王者が勝てば、永世称号を得る権利に一歩近づく。
永世称号を得れば永遠にこの世界に名が残る。
これ以上無い栄誉だ。
彼等はこの栄誉を手に入れるため戦う。
●○●○●○
立花富岳は自分の最も得意とする戦場【分譲地】に降り立ち、自分のステータスを確認した。
フガク・タチバナ
【レベル】プロ二段
【職業】剣士
【永世称号】なし
【一時称号】なし
【HP】290,742/310,000
【MP】90,463/105,000
【攻撃力】400,135
【防御力】216,894
【発想力】A
【柔軟性】B
【勝負勘】S
【読みの早さ】131手/秒
【読みの深さ】576手
【スキル】石召喚。身体強化。剣術。気配察知。転移。武器強化。索敵。席巻。鑑定。錯乱。
【アイテム】原石の剣。原石の盾。シロイシくん31体
「よし、二段に上がってるな」
この【分譲地】はすでに区画が、
A-1、B-1、C-1
A-2、B-2、C-2
A-3、B-3、C-3
と整理されていて戦いやすい。
周りに障害となる建物もなく、見晴らしがいい。
富岳は『鑑定』スキルで目の前にいる畠山京子のステータスを確認する。
キョウコ・ハタケヤマ
【レベル】プロ初段
【職業】魔法使い
【永世称号】なし
【一時称号】なし
【HP】276,934/290,000
【MP】315,864/381,000
【攻撃力】278,103
【防御力】291,741
【発想力】B
【柔軟性】B
【勝負勘】D
【読みの早さ】351手/秒
【読みの深さ】4,129手
【スキル】石召喚。剣術。魔力制御。変化魔法。変身魔法。鑑定。
【アイテム】魔法使いの杖。魔導書(×4)。シロイシくん87体
「『転移』スキルが無い?」
得意とする戦場は人それぞれなので、自分の得意な戦場に相手を先手を取れるかが勝敗の鍵を握る。
このレベルで転移スキルが無い棋士は珍しい。
富岳は自分の得意な戦場に京子を転移できたわけだが、京子自ら富岳の戦場にやってきたと言ったほうがいいか。抵抗した様子が全く見られなかった。
つまり畠山京子はどの戦場でも戦える自信があるということか?
『鑑定』スキルはレベルが『プロ』にならなければ手に入らないレアスキルだ。
ちなみに『鑑定』は同レベルであればお互いのステータスを確認できるが、レベルが下の者は上の者のステータスを確認できない。
つまり京子は現時点では富岳のステータスを確認できない。
P10,000でプロレベルだ。
トッププロはP1,000,000を超える。
そう考えるとレベルこそまだプロ初段だが、京子はすでにプロ4段並みの実力があるということになる。
そしてこの世界ならではのルール。
『ジョブチェンジできる』
対戦する相手に合わせ戦いやすい職業にコロコロと職業を変えてる棋士もいる。
ただし魔法使いなど、魔力行使系は別だ。
魔法を使える者の弟子にならなければ魔法使いにはなれない。魔力を暴走させて自滅してしまうからだ。それだけ魔力制御は難しい。
現在魔法使いはこの畠山京子を含む岡本幸浩門下の5人だけだ。
戦場のルールを説明しよう。
全ての戦場は、すでに路が整備されている。
その路の交差点上に黒または白の石を召喚し、交差点を封鎖する。
一度召喚された石は移動不可。
封鎖された交差点は通行不可。
自分の石同士が路上に並ぶと壁に変化する。
ただし、敵の石に路の四方向から攻撃されると、自分の石を排除される。壁の場合も同様。
壁で囲まれた空き地が広い方が勝利となる。
石を召喚する位置によって変換できる攻撃及び防御指数は増減するため、慎重に石を召喚する位置を決めなければならない。
富岳は『原石の剣』をB-2地区の中央側の交差点に向けて叫んだ。
「出でよ、黒石!」
戦場で戦う者の共通スキル『石召喚』で黒石を召喚する。
現れたのは高さ1メートル、直径2メートルほどの黒石だ。広い戦場なので召喚される石も大きい。
しかし付近に黒石は無いため、壁に変化しない。
これは自分の石を壁にするため召喚したのではない。
相手に壁を作らせないための作戦だ。
こうして自分の石は壁になるようにし、逆に相手の石は壁にさせないよう、時には攻撃と防御、両方を兼ね備えた位置に石を召喚していく。
次は相手の手番だ。
いつ攻撃が来ても対応できるよう身構える富岳の身辺が突然暗くなった。
「なんで暗くなったんだ?」
不思議に思った富岳は頭上を見ると、白石が浮かんでいて落下してきた。
富岳は右に横っ飛びにギリギリでかわした。
「あいつ無詠唱で『石召喚』したのか?……そうか!魔法使いだからか!」
富岳は魔法使いと戦ったことがない。それだけ魔法を使える者は少ない。
魔法使いも詠唱しなければ石召喚できないと思っていた。
しかしそれ以前に今の京子の攻撃は問題がある。
『戦場では相手を直接攻撃してはいけない』
攻撃していいのは石のみ。
あくまで領地を奪い合う掠奪戦。対戦相手を殺すと反則負けになる。
「おい!俺を殺す気か⁉︎ルール違反だぞ!」
「まさか。そんな所にボーっと立ってるアンタが悪いんでしょ」
この野郎。俺の不注意だってのか⁉︎
まあいい。今のは仕方ない。魔法使いとは初めて対戦するんだ。二度目は無い。
次は富岳の手番だ。
先程京子が召喚した白石。ウインドウに表示されたこの白石の攻撃指数は71%、防御指数は3%。
圧倒的に防御指数が低い。つまり僅かな攻撃でも簡単に破壊できる。
攻撃するならこれだ。
富岳はその白石の隣に黒石を召喚した。
ウインドウに今召喚した黒石の攻撃指数と隣の白石の防御指数の新たな相互関係が表示される。
【黒90%<白1%】
「なんだ?このおかしな不等号は」
本来なら数字の大きな方に「黒90%>白1%」と表示されなければいけないはず。
バグか?気にする必要はないだろう。
富岳は『原石の剣』に『武器強化』する。現在富岳の攻撃力のMaxは400,135P。その90%の約360,000が『原石の剣』での攻撃指数となる。
対してこれから富岳が攻撃しようとしている白石の防御指数は1%。京子の現在の防御力Maxは291,741の1%で3,000以下。
圧倒的に黒石有利だ。
富岳は勢いをつけ『原石の剣』を白石に振り下ろした。
しかし剣はまだ白石に当たっていないのに細かく分裂した。
「なっ⁉︎」
富岳の『原石の剣』は空を切り、地面に突き刺さる。
よく見ると、白石が白い蝶に変化していた。
蝶はしばらくするとまた白石に戻った。
おそらく京子のスキル『変化魔法』だ。
「これがさっきのおかしな不等号の意味か。こんな防御方法があるのか……。これがコイツの戦い方……」
しかし富岳が聞いたことがある魔法使いの戦い方ではない。
棋譜によると、魔法には属性があり、主に火・水・土・風・雷魔法を駆使して石を破壊すると聞いた。
「もしかしてコイツ、ユニークマジシャンか?」
『鑑定』で京子の魔法スキルを確認する。
【『変化魔法』石を様々な物体に変化させる
『変身魔法』術者自身が変身できる】
他の魔法スキルは無いようだ。
そうなると話は変わってくる。
棋譜にある先人の魔法使い達の戦闘を参考にできない。
それにこんなふうに分裂されては肝心の石を攻撃できない。
(どうする?どうやって攻撃する?考えろ!)
また急に白石が現れた。今度は目の前に現れて富岳の鳩尾に当たり、弾き飛ばされ地面に大の字になって倒れた。京子がまた無詠唱で白石を召喚したのだ。
相手の手番なのを忘れていた。
(クソッ!こんなのどうやって戦えばいいんだ⁉︎)
今富岳が手にしている『原石の剣』を京子の胸に突き刺してやれば終わらせられるが、それは禁じ手だ。それでは勝ったことにはならない。
これは人を殺す戦いではなく、あくまで領地を奪い合う戦いなのだ。
見通しの良いこの【分譲地】を選んだのは失敗だった。
見通しの良さがかえって災いした。
こちらにとって見通しがいいということは、相手にとっても見通しがいいということだ。
何か突破口は無いか?この状況を覆す手立ては……。
「……待てよ。なにも勝敗の付け方は空き地の広さだけではないんだ」
相手を投了させる方法もある。
例えば、相手は魔法使いなんだから、魔力切れにさせるとか。
富岳は再びウインドウを開いて京子のステータスを確認する。
やはり最初に確認した時より京子のMPが急激に減っている。
あれだけの魔法だ。MPの消費も激しいのか。
「これだ!」
畠山京子を魔力切れで投了させる!
そうと決まれば後は相手にどう魔法を使わせるか作戦を練ればいいだけだ。
しかしこの戦場では持ち時間が決められている。
作戦を練る時間はあるのか?
戦場上空に高く掲げられたデジタル時計を見る。
残り時間は30分を切っていた。
まずいな。戦いながら作戦を練るしかなさそうだ。
富岳は念のためもう一度自分のステータスを確認した。
HPが急激に減っていた。
「どうしてこんなに……?あっ!白石召喚で受けたダメージか!」
まさかこんな形で急激にポイントを減らしていたとは。
自分のHPが0になるのが先か。
それとも相手のMPが0になるのが先か。
一瞬たりとも気の抜けない戦いになってしまった———。
人を殺し合う戦争ではなく領地を奪い合う侵略戦争。
徳川家康はより多くの領地を手に入れた者に褒美として宝玉を与えた。
宝玉は大中小合わせて50を超えた。
そしていつしか棋士達はその宝玉を賭け闘うようになった。
今回争奪する宝玉は金剛石。
エントリー数は514人。
一対一で闘い勝者は次のステージに進める。
こうして514人の頂点に立った一人のみが、前回王者である宝玉所持者への争奪挑戦の権利を与えられる。
挑戦者が前回王者に勝利すれば、新王者の誕生。
前回王者が勝てば、永世称号を得る権利に一歩近づく。
永世称号を得れば永遠にこの世界に名が残る。
これ以上無い栄誉だ。
彼等はこの栄誉を手に入れるため戦う。
●○●○●○
立花富岳は自分の最も得意とする戦場【分譲地】に降り立ち、自分のステータスを確認した。
フガク・タチバナ
【レベル】プロ二段
【職業】剣士
【永世称号】なし
【一時称号】なし
【HP】290,742/310,000
【MP】90,463/105,000
【攻撃力】400,135
【防御力】216,894
【発想力】A
【柔軟性】B
【勝負勘】S
【読みの早さ】131手/秒
【読みの深さ】576手
【スキル】石召喚。身体強化。剣術。気配察知。転移。武器強化。索敵。席巻。鑑定。錯乱。
【アイテム】原石の剣。原石の盾。シロイシくん31体
「よし、二段に上がってるな」
この【分譲地】はすでに区画が、
A-1、B-1、C-1
A-2、B-2、C-2
A-3、B-3、C-3
と整理されていて戦いやすい。
周りに障害となる建物もなく、見晴らしがいい。
富岳は『鑑定』スキルで目の前にいる畠山京子のステータスを確認する。
キョウコ・ハタケヤマ
【レベル】プロ初段
【職業】魔法使い
【永世称号】なし
【一時称号】なし
【HP】276,934/290,000
【MP】315,864/381,000
【攻撃力】278,103
【防御力】291,741
【発想力】B
【柔軟性】B
【勝負勘】D
【読みの早さ】351手/秒
【読みの深さ】4,129手
【スキル】石召喚。剣術。魔力制御。変化魔法。変身魔法。鑑定。
【アイテム】魔法使いの杖。魔導書(×4)。シロイシくん87体
「『転移』スキルが無い?」
得意とする戦場は人それぞれなので、自分の得意な戦場に相手を先手を取れるかが勝敗の鍵を握る。
このレベルで転移スキルが無い棋士は珍しい。
富岳は自分の得意な戦場に京子を転移できたわけだが、京子自ら富岳の戦場にやってきたと言ったほうがいいか。抵抗した様子が全く見られなかった。
つまり畠山京子はどの戦場でも戦える自信があるということか?
『鑑定』スキルはレベルが『プロ』にならなければ手に入らないレアスキルだ。
ちなみに『鑑定』は同レベルであればお互いのステータスを確認できるが、レベルが下の者は上の者のステータスを確認できない。
つまり京子は現時点では富岳のステータスを確認できない。
P10,000でプロレベルだ。
トッププロはP1,000,000を超える。
そう考えるとレベルこそまだプロ初段だが、京子はすでにプロ4段並みの実力があるということになる。
そしてこの世界ならではのルール。
『ジョブチェンジできる』
対戦する相手に合わせ戦いやすい職業にコロコロと職業を変えてる棋士もいる。
ただし魔法使いなど、魔力行使系は別だ。
魔法を使える者の弟子にならなければ魔法使いにはなれない。魔力を暴走させて自滅してしまうからだ。それだけ魔力制御は難しい。
現在魔法使いはこの畠山京子を含む岡本幸浩門下の5人だけだ。
戦場のルールを説明しよう。
全ての戦場は、すでに路が整備されている。
その路の交差点上に黒または白の石を召喚し、交差点を封鎖する。
一度召喚された石は移動不可。
封鎖された交差点は通行不可。
自分の石同士が路上に並ぶと壁に変化する。
ただし、敵の石に路の四方向から攻撃されると、自分の石を排除される。壁の場合も同様。
壁で囲まれた空き地が広い方が勝利となる。
石を召喚する位置によって変換できる攻撃及び防御指数は増減するため、慎重に石を召喚する位置を決めなければならない。
富岳は『原石の剣』をB-2地区の中央側の交差点に向けて叫んだ。
「出でよ、黒石!」
戦場で戦う者の共通スキル『石召喚』で黒石を召喚する。
現れたのは高さ1メートル、直径2メートルほどの黒石だ。広い戦場なので召喚される石も大きい。
しかし付近に黒石は無いため、壁に変化しない。
これは自分の石を壁にするため召喚したのではない。
相手に壁を作らせないための作戦だ。
こうして自分の石は壁になるようにし、逆に相手の石は壁にさせないよう、時には攻撃と防御、両方を兼ね備えた位置に石を召喚していく。
次は相手の手番だ。
いつ攻撃が来ても対応できるよう身構える富岳の身辺が突然暗くなった。
「なんで暗くなったんだ?」
不思議に思った富岳は頭上を見ると、白石が浮かんでいて落下してきた。
富岳は右に横っ飛びにギリギリでかわした。
「あいつ無詠唱で『石召喚』したのか?……そうか!魔法使いだからか!」
富岳は魔法使いと戦ったことがない。それだけ魔法を使える者は少ない。
魔法使いも詠唱しなければ石召喚できないと思っていた。
しかしそれ以前に今の京子の攻撃は問題がある。
『戦場では相手を直接攻撃してはいけない』
攻撃していいのは石のみ。
あくまで領地を奪い合う掠奪戦。対戦相手を殺すと反則負けになる。
「おい!俺を殺す気か⁉︎ルール違反だぞ!」
「まさか。そんな所にボーっと立ってるアンタが悪いんでしょ」
この野郎。俺の不注意だってのか⁉︎
まあいい。今のは仕方ない。魔法使いとは初めて対戦するんだ。二度目は無い。
次は富岳の手番だ。
先程京子が召喚した白石。ウインドウに表示されたこの白石の攻撃指数は71%、防御指数は3%。
圧倒的に防御指数が低い。つまり僅かな攻撃でも簡単に破壊できる。
攻撃するならこれだ。
富岳はその白石の隣に黒石を召喚した。
ウインドウに今召喚した黒石の攻撃指数と隣の白石の防御指数の新たな相互関係が表示される。
【黒90%<白1%】
「なんだ?このおかしな不等号は」
本来なら数字の大きな方に「黒90%>白1%」と表示されなければいけないはず。
バグか?気にする必要はないだろう。
富岳は『原石の剣』に『武器強化』する。現在富岳の攻撃力のMaxは400,135P。その90%の約360,000が『原石の剣』での攻撃指数となる。
対してこれから富岳が攻撃しようとしている白石の防御指数は1%。京子の現在の防御力Maxは291,741の1%で3,000以下。
圧倒的に黒石有利だ。
富岳は勢いをつけ『原石の剣』を白石に振り下ろした。
しかし剣はまだ白石に当たっていないのに細かく分裂した。
「なっ⁉︎」
富岳の『原石の剣』は空を切り、地面に突き刺さる。
よく見ると、白石が白い蝶に変化していた。
蝶はしばらくするとまた白石に戻った。
おそらく京子のスキル『変化魔法』だ。
「これがさっきのおかしな不等号の意味か。こんな防御方法があるのか……。これがコイツの戦い方……」
しかし富岳が聞いたことがある魔法使いの戦い方ではない。
棋譜によると、魔法には属性があり、主に火・水・土・風・雷魔法を駆使して石を破壊すると聞いた。
「もしかしてコイツ、ユニークマジシャンか?」
『鑑定』で京子の魔法スキルを確認する。
【『変化魔法』石を様々な物体に変化させる
『変身魔法』術者自身が変身できる】
他の魔法スキルは無いようだ。
そうなると話は変わってくる。
棋譜にある先人の魔法使い達の戦闘を参考にできない。
それにこんなふうに分裂されては肝心の石を攻撃できない。
(どうする?どうやって攻撃する?考えろ!)
また急に白石が現れた。今度は目の前に現れて富岳の鳩尾に当たり、弾き飛ばされ地面に大の字になって倒れた。京子がまた無詠唱で白石を召喚したのだ。
相手の手番なのを忘れていた。
(クソッ!こんなのどうやって戦えばいいんだ⁉︎)
今富岳が手にしている『原石の剣』を京子の胸に突き刺してやれば終わらせられるが、それは禁じ手だ。それでは勝ったことにはならない。
これは人を殺す戦いではなく、あくまで領地を奪い合う戦いなのだ。
見通しの良いこの【分譲地】を選んだのは失敗だった。
見通しの良さがかえって災いした。
こちらにとって見通しがいいということは、相手にとっても見通しがいいということだ。
何か突破口は無いか?この状況を覆す手立ては……。
「……待てよ。なにも勝敗の付け方は空き地の広さだけではないんだ」
相手を投了させる方法もある。
例えば、相手は魔法使いなんだから、魔力切れにさせるとか。
富岳は再びウインドウを開いて京子のステータスを確認する。
やはり最初に確認した時より京子のMPが急激に減っている。
あれだけの魔法だ。MPの消費も激しいのか。
「これだ!」
畠山京子を魔力切れで投了させる!
そうと決まれば後は相手にどう魔法を使わせるか作戦を練ればいいだけだ。
しかしこの戦場では持ち時間が決められている。
作戦を練る時間はあるのか?
戦場上空に高く掲げられたデジタル時計を見る。
残り時間は30分を切っていた。
まずいな。戦いながら作戦を練るしかなさそうだ。
富岳は念のためもう一度自分のステータスを確認した。
HPが急激に減っていた。
「どうしてこんなに……?あっ!白石召喚で受けたダメージか!」
まさかこんな形で急激にポイントを減らしていたとは。
自分のHPが0になるのが先か。
それとも相手のMPが0になるのが先か。
一瞬たりとも気の抜けない戦いになってしまった———。
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