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布石編
大駒を手に入れるための布石(前編)
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京子は研究会部屋に入るなり、三嶋が持ち込んだ自作パソコンの電源を入れた。
今日は1月4日。時刻は午前6時。気温5度だが暖房器具をつける必要はない。興奮とパソコンからの放射熱ですぐに暖かくなる。
思っていたより時間が掛かってしまった。それもこれもあの垂れ目オヤジのせいだ。
去年の夏休みをもう少し有意義に過ごせていたら、ここまで時間は掛からなかったのに。でもパソコンの事を考えれば、夏より冬の方がいいに越したことはないので、これはこれで良しとしよう。
この自作パソコンがいつでも使いたい放題使えるのは僥倖だった。「子供にはまだ早い」と、パソコンに触ることすら許されないと思っていたのに。理解のある人達に出会えて幸運だと思う。
この自作パソコン。京子は三嶋から許可を得て色々部品を交換してきたが、パソコンの頭脳であるCPUだけは許可を得ずこっそり変えた。何故CPUを交換したいのか、理由を説明するのが面倒臭かったからだ。もしバレたらなんて説明しようかと悩んだが、3ヶ月経った今も三嶋は交換に気づかない。何かにつけて抜けてる兄弟子だが、大学やらパソコンやら、事あるごとに京子にとっていい方向に転がるきっかけを持ってきてくれる。普段三嶋を見下してはいるが、その辺は本当に感謝している。
画面が切り替わる。USBメモリを差し込む。京子が対局中にコツコツと書き上げ、ノートパソコンを介して打ち込んだプログラムだ。
「お願いします」
まるで対局を開始するかのようにパソコンに向かって礼をすると、京子はキーボードを叩き始めた。
できれば朝食前に捕まえたい。時間との勝負だ。
●○●○●○
いつものように昼過ぎに起きると両親はすでにいなかった。日曜祝日のこの時間はいつも買い物に行く。今日は成人の日で世間は三連休最終日だ。
外は50センチほど雪が積もっている。今年はこの時期にしては少ない。しかし冬はまだこれからだ。
トイレを済ませ顔を洗って、飯を食おうとキッチンに入ると、テーブルの上に水色の封筒が置かれてあった。自分宛てだ。
「『日本棋院東京本院』……なんだコレ?新手の詐欺か?」
『日本棋院』に心当たりは全く無い。今時コスパの悪いダイレクトメールを送りつけてくる悪徳業者なんてあるのか?電子メールなら絶対に開けてはいけないやつだ。だが紙のメールなら開けても破いても捨てても問題無い。薄っぺらで軽いし、開けても害はないだろう。中身を見るだけ見てみようと、鋏を使わず手で封筒を千切って開けた。中には白い紙、便箋しか入っていないようだ。中身を出そうとした時だ。
2台分の車のエンジン音が聞こえてきた。
なんだ?1台は親父の車だが、もう1台は?隣の家の車のエンジン音じゃないな。それに俺の家の前で止まったようだ。
キッチンからは家の駐車場は見えない。居間に行って外の様子を見てみようかと思っていたら、バタンと車のドアが閉まる音と車が走り去るエンジン音が聞こえてきた。
タクシーだったのか。隣の家の客か?ウチの客ではないのは確かだ。
しかし何故か胸騒ぎがする。タクシーならこんなに不安になる理由などないのに。
飯をどうしようかと暫く考えていると、玄関のドアが開いた音とお袋の声が聞こえてきた。
「どうぞお入り下さい」
げ!さっきのタクシー、ウチの客かよ!
タクシーが走り去ってから今まで間があったのは、買い物から帰ってきたお袋と話し込んでいたからか!
水色の封筒を持ったまま、急いで2階の自室に戻った。部屋は階段を上がってすぐなので、玄関からの話し声は筒抜けだ。
「すぐにお茶をご用意しますので……」
長居する客かよ!
「どうぞお構いなく」
若い女の声だ。でも聞き覚えは無い。誰だ?
「早速ですけど、息子さんのお部屋はどちらでしょう?」
……は?俺に用?誰が?なんのために?
まさか警察……?
心臓が早鐘を打つ。腋の下に嫌な汗が流れる。
「階段を上がって一番手前の部屋です」
ババァ!言うんじゃねぇ!
「では失礼して」
階段をトントンと登ってくる音が2つ聞こえてくる。客は2人いるようだ。
俺、しくじったか?いつ?
それよりどうする⁉︎この部屋のドアには鍵は付いていない。付けておけばよかった!バリケードを築くか?でも、この部屋のドアは廊下側に開くドアだ。バリケードを築いてもドアは開けられるんだから意味がない。
窓から逃げる?氷の上に降り積もった雪の上を裸足で⁉︎凍傷になるだろ!最悪、両足切断だ。
となるとドアノブを回せないよう、固定するか?と言っても、ドアノブをしっかり握って回せないようにするぐらいしかできないが。いや、相手が女なら力技でなんとかなるかもしれない。待てよ。二人とも女とは限らない。
足音が自室のドアの前で止まった。コンコンとドアを叩く音が部屋に響く。もうここまで来たらどうしようにもない。ドアノブをしっかり握った。
「こんにちは」
ドア越しに聞こえてきた声は、さっきの若い女の声と違う。女子高生の声?もしかしたら中学生か?子供の声だ。
片割れは成人男子ではなかった。警察ではないようだ。となると、なぜ子供が来たんだ?子供が俺に何の用だ?
ノックを無視すると、今度はドンドンとドアを叩いてきた。築40年の家がちょっと揺れている。
「こーんにーちはー!」
うるせぇ!
ドア越しとは思えないデケェ声だな、この子供。
「……返事がありませんね。お母さん。息子さん、出掛けられました?」
「いいえ。靴があるので……」
だからババァ!言うんじゃねぇ‼︎
「という事は居留守ですか?しょうがないですね。強行突破しますか」
「ちょっと待って!それはダメ!不法侵入よ」
さっきの若い女の声だ。
「強行突破といっても、こちらからドアを開けるだけです」
「それでもダメ!本人の了承を得てからでないと!私、警察官じゃないのよ!」
やっぱり警察ではないのか。ホッと息を吐く。しかし胸の鼓動はすぐにはおさまらない。
「じゃあ、本人が開けるまで待てと?モタモタしてる時間なんて無いですよ?今日中に帰らなきゃいけないんですから」
「時間がなくてもダメ!」
そうだそうだ!頑張れ大人の女!俺はどこの馬の骨かわからない子供と話す気はない!
「見たところ鍵は付いていないようですし、ちょこっとドアノブを回してみるだけでも……」
「本当やめて。庇いきれなくなるから」
「そうですか。わかりました」
お。諦めて帰るか?帰れ帰れ!
「突然申し訳ありませ———ん!」
雷が落ちたのかと思わせるほどの大音量が部屋だけでなく家の中に響いた。しかも家が揺れている。
「私、日本棋院東京本院所属囲碁棋士、畠山京子と申しま—す!」
にほんきいん?あの封筒か⁉︎
「お願いがありまして、東京から参りました——っ!どうか開けて頂けないでしょうか———ッッッ‼︎」
「だ———ッ‼︎うるせえ‼︎近所に聞こえるだろ!静かにしろ‼︎」
俺はあまりの煩さに堪らずドアを開けた。
ドアの向こうにいたのは、肩までの黒髪を靡かせた、ぞっとするほど整った顔だちの少女だった。
●○●○●○
「えー、では改めまして。先程も申し上げましたが私、日本棋院東京本院所属の囲碁棋士で初段の畠山京子と申します」
ドアの前、絨毯の上に正座していた小娘は少し腰を浮かせて、椅子に座る俺に名刺を差し出した。が、俺は受け取りを拒否した。子供のくせに制服ではなく黒いスーツを着ている。
俺は何年も着ているパジャマ代わりのトレーナー姿だってのに。顔を洗っただけで髪は寝癖でボサボサだし、髭だって剃ってない。
それにしてもなんて図々しい小娘なんだ。
居間で話すと言ったのに、小娘と若い女は六畳の狭い俺の部屋に乗り込んできた。狭いのはセミダブルのベッドとモニターのずらりと並んだ机に部屋を占拠されているからだ。
こんな超至近距離に初対面の人間がいるのは、はっきり言って居心地が悪い。
暴れて騒ぎを起こして無理矢理帰らそうかと思ったが、あいにく俺はバイオレンス系は滅法弱い。それにコイツらに怪我でもされたら警察を呼ばれる。自分の首を自分で締めるようなものだ。
俺はコイツらの要望通り、コイツらの話を聞くという選択肢しかとれなかった。
「本当にお前が囲碁棋士か、今は確かめようがない。どうして信じられる?」
「私があなたに嘘を吐かなければならない理由がありません。それに調べればすぐバレるような嘘を吐いても、私には何のメリットもありません」
近所迷惑になるような大声出して乗り込んできたくせに、言うことはまともだな。
「そして、こちらは弁護士さんです」
「弁護士の新井雅美と申します」
弁護士を名乗る女も名刺を渡してきた。長身、ショートヘアで濃紺のパンツスーツを着こなしている。25歳前後だろうか。こちらは素直に受け取った。
「囲碁棋士と弁護士が何の用だよ」
「用があるのは私、美少女囲碁棋士畠山京子です」
今、サラッとなんか言ったな?
「その前に、ひとつ確認が。日本棋院から水色の封書が届いていると思うのですけど」
「ああ、これか?」
封を開けただけの封筒を持ち上げた。さっきのドアを開ける開けない騒動で、床に落として踏みつけてしまいクシャクシャにしてしまった。
「そう、それです。お目を通して頂けましたか?」
てっきり『その封筒が私が囲碁棋士である証明です』とか言い出すのかと思いきや、封筒だけでは証明できる根拠に乏しいと理解しているようで、小娘は何も言ってこない。
「見ての通りだよ。封を開けてたらお前らが来た」
「わお、グッドタイミング!」
「何がだよ!ふざけるなよ、ガキが!」
少し声を荒げれば少しは子供らしくビクつくかと思いきや、全く顔色すら変えない。それどころか、ずっとニコニコしている。なんて可愛げのないガキだ!
「失礼しました。では今すぐ目を通して頂けないでしょうか?」
ガキの命令に従うのは癪だが、それ以上にさっさと帰って欲しかったので、渋々従った。
皺を伸ばし封筒の口を開ける。中には便箋が2枚入っていた。便箋を広げる。毛筆で書かれてある。印刷ではない、手書きだ。しかし、毛筆のせいか、この状況のせいか、果たし状にしか見えない。
「……『拝啓 山の雪化粧が厚化粧になる季節となりました。』……。間違いなくふざけてるよな?」
「あ。その辺はすっ飛ばして頂いて結構です。その次を」
なんなんだ、このガキ。大人の顔色を窺わないし、神経は図太いし。Z世代とかいう奴等はみんなこうなのか?
「『お願いがありまして、来る成人の日に、そちらにお伺いしたいと思います。かしこ』……って、これだけしか書いてないぞ」
手紙は1枚目にしか書かれてないのに、律儀にも白紙の便箋を1枚入れてある。その辺の常識は持ち合わせているらしい。
「結局お前ら何しに来たんだ?この日本棋院って所の回し者か?子供を使いにやるなんて、よっぽど人員不足なんだな」
「いいえ。私の個人的なお願いで参りました。面識の無い私の名前で出しても、開封すらされずに捨てられる可能性があったので、団体の名前を使いました」
勘がいいな。知らない人間から来た封筒など、間違いなく捨てていた。
「では、今から説明します。単刀直入に申し上げます。私がこれから立ち上げる会社で正社員として働きませんか?」
「はあ⁉︎」
ガキが会社を立ち上げる?しかもこれから?何考えてんだ、このガキ。
「お前、たった今「自分は囲碁棋士だ」と言ったばかりだよな⁉︎しかもまだ学校に通ってる年齢じゃないのか?学校通いながら囲碁の仕事して会社経営もする気か?」
「はい」
即答したよ。でも待てよ?業種によっては可能か?それに勤務形態にもよるか。
「どんな会社なんだ?」
「まだ決めてません」
「決めてない⁉︎決めてないのに人だけ集める⁉︎求人情報が空欄じゃあ、人なんか集まらないだろ!」
「あなたにはIT部門の主任として働いていただきます」
一旦収まった心臓の鼓動がまた早鐘を打つ。
なんなんだ。このガキは……?
「……なんで俺をIT部門の、しかも主任に?」
「だって日本中どこを探しても加賀谷伸行さん以上の適任者はいないでしょう?」
小娘はニコニコというより、ヘラヘラと笑って俺の名前を口にする。
「なぜ俺を適任だと?」
「それはもちろん。日本一のハッカー『アラクネ』さんだからです」
今、日本企業だけでなく、世界中のトップ企業も恐れるランサムウェア、『アラクネ』だ。
俺の心臓がドクンと音を立てる。
「私、『アラクネ』って聞いた時、てっきり女性かと思っちゃいました」
このガキ……!
どうする?とぼけてみるか?いや、無駄だな。このガキ、確信を持ってここに来ている。それにこの部屋にすんなり入れなかった時点で、俺に後ろ暗いことがあると白状したようなもんだ。
それに、あまりにも突拍子の無い話に、思わず自分から質問しまくっている。早く帰ってほしいのに、俺は何やってんだ?
そう考えたら頭が冷えて、今の状況が見えてきた。
ここまでの流れ、このガキは俺の質問にきちんと答えているから俺が主導権を握っているように錯覚していたが、ずっとコイツが主導権を握ったまま話が進んでいる。これまでの話っぷりからするとこのガキ、相当頭がキレるし弁も立つようだ。おまけに俺が怒鳴りつけてもビビらない度胸もあり落ち着いている。俺がしらを切ったとしても、論破されて時間の無駄になるだけだろう。
そうだ。この家に見ず知らずの人間が俺を訪ねて来ることがあれば『アラクネ』が目当てだろうと予想はしていた。
それが警察か警察でないかの違いでしかない。さすがにこんな小娘がやって来るのは予想外だったが。
ならば腹を括るか。まずは『コイツがここに来た本当の目的は何か』。それを見極める。
加賀谷は「ふぅ」と息を吐いた。
「……どうやって俺が『アラクネ』だと知った?」
「1月4日午前6時過ぎに、ちょこちょこっと加賀谷さんのパソコンにお邪魔しました」
「は?つい最近?全く異常は無いぞ」
思わず机の上の自分のマシンに目をやる。ハッキングされた気配は無い。
「ええ。個人情報を閲覧しただけですから。何も悪さはしてません」
「……つまりお前自ら俺のマシンをハッキングしたと?」
すると小娘はニッコリと笑って口を開いた。
「加賀谷伸行。41歳。東京の某私立大学に学費全額免除の優待生として入学。卒業後、某大手貿易会社に入社。しかし、上司のパワハラと同僚の嫌がらせに遭い退社。自身を退職に追い込んだ企業と上司と同僚に復讐するためハッカーに転身。復讐は見事成し遂げられ某貿易会社は倒産。元上司と元同僚の再就職先にもサイバー攻撃をしかけ、セクハラもしていた元上司は離婚後ホームレスに、元同僚は会社の金を横領していたのを暴いて塀の中。
『アラクネ』がランサムウェアの標的にしているのは全てブラック企業。顧客や社員の個人情報ではなく、理不尽な経営方針やハラスメントをマスコミに暴露すると脅して金銭を要求。
現在、表向きはトレーダー。儲けた分は両親に生活費として渡している。
ただしスイスの銀行に億単位の預金あり。……間違いありませんね?」
加賀谷は無言で返答した。これだけの情報を盗まれていたのに、気づかないなんて……。
1月4日。マシンに何か異変は無かったか、必死に思い出す。が、やっぱり何も心当たりが無い。
でも、それ以上に気になる事がある。
「……ちょっと待て。どこから侵入した?」
「ああ、それは本当ラッキーでした。囲碁の仕事でとある企業の囲碁部にお邪魔した時、「『アラクネ』にやられた」という話を運良く聞けまして。そこから、ですね。聞いてもいないのに必要な情報をベラベラ喋って下さいました」
囲碁棋士にならちょっとぐらい情報を漏らしても平気だろうと、軽い気持ちで話してしまったのか。しかもコイツは女子供。そりゃ油断するよな。
「……で、どうやって俺のパソコンに侵入した?」
考えうる全ての策を講じてハッキング対策ウイルス対策してある俺のマシンに侵入してきた。おまけに痕跡を残さず。
「それでしたら、こちらをご覧下さい」
と言って小娘はバックバックからノートを1冊取り出して俺に渡した。
「対局中、暇だったので、これに書き留めておいたんです」
暇?囲碁って片手間で打てるのか?
ぎっしりと書かれた数字とアルファベットと記号。鉛筆で書かれてある。ゴシック体のような読みやすい文字だ。それを最初から1ページずつ加賀谷は読んでいき、半分ほど目を通してノートを閉じた。
「大体わかった。お前が俺より優れたハッカーだってことは」
「あら、私のこと認めてくださるんですか?」
「これを見れば一目瞭然だろ」
加賀谷は渡されたノートを京子に返した。
「それに加賀谷さん、『アラクネ』を捕獲したのが子供だと分かっても、さほど驚かれませんでしたね」
「そりゃな。子供のほうが好きなことだけを思いっきりやれる時間を作りやすいしな。これは知識と時間さえあれば誰にでも出来る。
……で?日本2位のハッカー『アラクネ』を囲って何をしようってんだ?」
こんなノートを見せて自分の手の内を晒すような真似をしたんだ。コイツに敵意はなさそうだ。コイツの目的はおそらく『アラクネ』である『加賀谷伸行』だ。話を聞くぐらいはしてもいい。
「説明の手間が省けて助かります。実は私、どうしても死ぬまでに実現させたい夢があるんです」
黒髪の少女がまたヘラヘラと笑う。
「ほう。アンタのことだ。相当、大層な夢なんだろうな」
二人称が「お前」から「アンタ」に変わり、小娘は笑顔を見せる。しかしその口からは、俺の予想のはるか斜め上を行くとんでもなく浮世離れしたセリフが出てきた。
「私、どこでもドアを作りたいんです」
かなりの間があった。
「……えーと、たしか数年前にどこかの大学だったかで『どこでもドアっぽく見える』のを作ったっていう芸能ニュースは聞いたことあるが……」
「『ぽく見える』ものではなくて、実際に移動手段として使える物を作りたいんです」
「……つまり、ワームホールの謎を解き明かしたいと?」
「はい!それです!色々説明の手間が省けて本当助かります!」
「で、研究費やら何やらで金がかかるから、俺に稼いでこいと?」
「えっ⁉︎違います違います!すみません!説明の順番を間違えました!」
小娘はまたバックパックからノートを1冊取り出し、俺に渡した。何冊入ってるんだ?
「このノートはお持ち下さい。これに私の計画の概要をまとめておきましたので」
渡されたキャンパスノートには表題が付いていた。
「『畠山京子 50年計画』……?」
今日は1月4日。時刻は午前6時。気温5度だが暖房器具をつける必要はない。興奮とパソコンからの放射熱ですぐに暖かくなる。
思っていたより時間が掛かってしまった。それもこれもあの垂れ目オヤジのせいだ。
去年の夏休みをもう少し有意義に過ごせていたら、ここまで時間は掛からなかったのに。でもパソコンの事を考えれば、夏より冬の方がいいに越したことはないので、これはこれで良しとしよう。
この自作パソコンがいつでも使いたい放題使えるのは僥倖だった。「子供にはまだ早い」と、パソコンに触ることすら許されないと思っていたのに。理解のある人達に出会えて幸運だと思う。
この自作パソコン。京子は三嶋から許可を得て色々部品を交換してきたが、パソコンの頭脳であるCPUだけは許可を得ずこっそり変えた。何故CPUを交換したいのか、理由を説明するのが面倒臭かったからだ。もしバレたらなんて説明しようかと悩んだが、3ヶ月経った今も三嶋は交換に気づかない。何かにつけて抜けてる兄弟子だが、大学やらパソコンやら、事あるごとに京子にとっていい方向に転がるきっかけを持ってきてくれる。普段三嶋を見下してはいるが、その辺は本当に感謝している。
画面が切り替わる。USBメモリを差し込む。京子が対局中にコツコツと書き上げ、ノートパソコンを介して打ち込んだプログラムだ。
「お願いします」
まるで対局を開始するかのようにパソコンに向かって礼をすると、京子はキーボードを叩き始めた。
できれば朝食前に捕まえたい。時間との勝負だ。
●○●○●○
いつものように昼過ぎに起きると両親はすでにいなかった。日曜祝日のこの時間はいつも買い物に行く。今日は成人の日で世間は三連休最終日だ。
外は50センチほど雪が積もっている。今年はこの時期にしては少ない。しかし冬はまだこれからだ。
トイレを済ませ顔を洗って、飯を食おうとキッチンに入ると、テーブルの上に水色の封筒が置かれてあった。自分宛てだ。
「『日本棋院東京本院』……なんだコレ?新手の詐欺か?」
『日本棋院』に心当たりは全く無い。今時コスパの悪いダイレクトメールを送りつけてくる悪徳業者なんてあるのか?電子メールなら絶対に開けてはいけないやつだ。だが紙のメールなら開けても破いても捨てても問題無い。薄っぺらで軽いし、開けても害はないだろう。中身を見るだけ見てみようと、鋏を使わず手で封筒を千切って開けた。中には白い紙、便箋しか入っていないようだ。中身を出そうとした時だ。
2台分の車のエンジン音が聞こえてきた。
なんだ?1台は親父の車だが、もう1台は?隣の家の車のエンジン音じゃないな。それに俺の家の前で止まったようだ。
キッチンからは家の駐車場は見えない。居間に行って外の様子を見てみようかと思っていたら、バタンと車のドアが閉まる音と車が走り去るエンジン音が聞こえてきた。
タクシーだったのか。隣の家の客か?ウチの客ではないのは確かだ。
しかし何故か胸騒ぎがする。タクシーならこんなに不安になる理由などないのに。
飯をどうしようかと暫く考えていると、玄関のドアが開いた音とお袋の声が聞こえてきた。
「どうぞお入り下さい」
げ!さっきのタクシー、ウチの客かよ!
タクシーが走り去ってから今まで間があったのは、買い物から帰ってきたお袋と話し込んでいたからか!
水色の封筒を持ったまま、急いで2階の自室に戻った。部屋は階段を上がってすぐなので、玄関からの話し声は筒抜けだ。
「すぐにお茶をご用意しますので……」
長居する客かよ!
「どうぞお構いなく」
若い女の声だ。でも聞き覚えは無い。誰だ?
「早速ですけど、息子さんのお部屋はどちらでしょう?」
……は?俺に用?誰が?なんのために?
まさか警察……?
心臓が早鐘を打つ。腋の下に嫌な汗が流れる。
「階段を上がって一番手前の部屋です」
ババァ!言うんじゃねぇ!
「では失礼して」
階段をトントンと登ってくる音が2つ聞こえてくる。客は2人いるようだ。
俺、しくじったか?いつ?
それよりどうする⁉︎この部屋のドアには鍵は付いていない。付けておけばよかった!バリケードを築くか?でも、この部屋のドアは廊下側に開くドアだ。バリケードを築いてもドアは開けられるんだから意味がない。
窓から逃げる?氷の上に降り積もった雪の上を裸足で⁉︎凍傷になるだろ!最悪、両足切断だ。
となるとドアノブを回せないよう、固定するか?と言っても、ドアノブをしっかり握って回せないようにするぐらいしかできないが。いや、相手が女なら力技でなんとかなるかもしれない。待てよ。二人とも女とは限らない。
足音が自室のドアの前で止まった。コンコンとドアを叩く音が部屋に響く。もうここまで来たらどうしようにもない。ドアノブをしっかり握った。
「こんにちは」
ドア越しに聞こえてきた声は、さっきの若い女の声と違う。女子高生の声?もしかしたら中学生か?子供の声だ。
片割れは成人男子ではなかった。警察ではないようだ。となると、なぜ子供が来たんだ?子供が俺に何の用だ?
ノックを無視すると、今度はドンドンとドアを叩いてきた。築40年の家がちょっと揺れている。
「こーんにーちはー!」
うるせぇ!
ドア越しとは思えないデケェ声だな、この子供。
「……返事がありませんね。お母さん。息子さん、出掛けられました?」
「いいえ。靴があるので……」
だからババァ!言うんじゃねぇ‼︎
「という事は居留守ですか?しょうがないですね。強行突破しますか」
「ちょっと待って!それはダメ!不法侵入よ」
さっきの若い女の声だ。
「強行突破といっても、こちらからドアを開けるだけです」
「それでもダメ!本人の了承を得てからでないと!私、警察官じゃないのよ!」
やっぱり警察ではないのか。ホッと息を吐く。しかし胸の鼓動はすぐにはおさまらない。
「じゃあ、本人が開けるまで待てと?モタモタしてる時間なんて無いですよ?今日中に帰らなきゃいけないんですから」
「時間がなくてもダメ!」
そうだそうだ!頑張れ大人の女!俺はどこの馬の骨かわからない子供と話す気はない!
「見たところ鍵は付いていないようですし、ちょこっとドアノブを回してみるだけでも……」
「本当やめて。庇いきれなくなるから」
「そうですか。わかりました」
お。諦めて帰るか?帰れ帰れ!
「突然申し訳ありませ———ん!」
雷が落ちたのかと思わせるほどの大音量が部屋だけでなく家の中に響いた。しかも家が揺れている。
「私、日本棋院東京本院所属囲碁棋士、畠山京子と申しま—す!」
にほんきいん?あの封筒か⁉︎
「お願いがありまして、東京から参りました——っ!どうか開けて頂けないでしょうか———ッッッ‼︎」
「だ———ッ‼︎うるせえ‼︎近所に聞こえるだろ!静かにしろ‼︎」
俺はあまりの煩さに堪らずドアを開けた。
ドアの向こうにいたのは、肩までの黒髪を靡かせた、ぞっとするほど整った顔だちの少女だった。
●○●○●○
「えー、では改めまして。先程も申し上げましたが私、日本棋院東京本院所属の囲碁棋士で初段の畠山京子と申します」
ドアの前、絨毯の上に正座していた小娘は少し腰を浮かせて、椅子に座る俺に名刺を差し出した。が、俺は受け取りを拒否した。子供のくせに制服ではなく黒いスーツを着ている。
俺は何年も着ているパジャマ代わりのトレーナー姿だってのに。顔を洗っただけで髪は寝癖でボサボサだし、髭だって剃ってない。
それにしてもなんて図々しい小娘なんだ。
居間で話すと言ったのに、小娘と若い女は六畳の狭い俺の部屋に乗り込んできた。狭いのはセミダブルのベッドとモニターのずらりと並んだ机に部屋を占拠されているからだ。
こんな超至近距離に初対面の人間がいるのは、はっきり言って居心地が悪い。
暴れて騒ぎを起こして無理矢理帰らそうかと思ったが、あいにく俺はバイオレンス系は滅法弱い。それにコイツらに怪我でもされたら警察を呼ばれる。自分の首を自分で締めるようなものだ。
俺はコイツらの要望通り、コイツらの話を聞くという選択肢しかとれなかった。
「本当にお前が囲碁棋士か、今は確かめようがない。どうして信じられる?」
「私があなたに嘘を吐かなければならない理由がありません。それに調べればすぐバレるような嘘を吐いても、私には何のメリットもありません」
近所迷惑になるような大声出して乗り込んできたくせに、言うことはまともだな。
「そして、こちらは弁護士さんです」
「弁護士の新井雅美と申します」
弁護士を名乗る女も名刺を渡してきた。長身、ショートヘアで濃紺のパンツスーツを着こなしている。25歳前後だろうか。こちらは素直に受け取った。
「囲碁棋士と弁護士が何の用だよ」
「用があるのは私、美少女囲碁棋士畠山京子です」
今、サラッとなんか言ったな?
「その前に、ひとつ確認が。日本棋院から水色の封書が届いていると思うのですけど」
「ああ、これか?」
封を開けただけの封筒を持ち上げた。さっきのドアを開ける開けない騒動で、床に落として踏みつけてしまいクシャクシャにしてしまった。
「そう、それです。お目を通して頂けましたか?」
てっきり『その封筒が私が囲碁棋士である証明です』とか言い出すのかと思いきや、封筒だけでは証明できる根拠に乏しいと理解しているようで、小娘は何も言ってこない。
「見ての通りだよ。封を開けてたらお前らが来た」
「わお、グッドタイミング!」
「何がだよ!ふざけるなよ、ガキが!」
少し声を荒げれば少しは子供らしくビクつくかと思いきや、全く顔色すら変えない。それどころか、ずっとニコニコしている。なんて可愛げのないガキだ!
「失礼しました。では今すぐ目を通して頂けないでしょうか?」
ガキの命令に従うのは癪だが、それ以上にさっさと帰って欲しかったので、渋々従った。
皺を伸ばし封筒の口を開ける。中には便箋が2枚入っていた。便箋を広げる。毛筆で書かれてある。印刷ではない、手書きだ。しかし、毛筆のせいか、この状況のせいか、果たし状にしか見えない。
「……『拝啓 山の雪化粧が厚化粧になる季節となりました。』……。間違いなくふざけてるよな?」
「あ。その辺はすっ飛ばして頂いて結構です。その次を」
なんなんだ、このガキ。大人の顔色を窺わないし、神経は図太いし。Z世代とかいう奴等はみんなこうなのか?
「『お願いがありまして、来る成人の日に、そちらにお伺いしたいと思います。かしこ』……って、これだけしか書いてないぞ」
手紙は1枚目にしか書かれてないのに、律儀にも白紙の便箋を1枚入れてある。その辺の常識は持ち合わせているらしい。
「結局お前ら何しに来たんだ?この日本棋院って所の回し者か?子供を使いにやるなんて、よっぽど人員不足なんだな」
「いいえ。私の個人的なお願いで参りました。面識の無い私の名前で出しても、開封すらされずに捨てられる可能性があったので、団体の名前を使いました」
勘がいいな。知らない人間から来た封筒など、間違いなく捨てていた。
「では、今から説明します。単刀直入に申し上げます。私がこれから立ち上げる会社で正社員として働きませんか?」
「はあ⁉︎」
ガキが会社を立ち上げる?しかもこれから?何考えてんだ、このガキ。
「お前、たった今「自分は囲碁棋士だ」と言ったばかりだよな⁉︎しかもまだ学校に通ってる年齢じゃないのか?学校通いながら囲碁の仕事して会社経営もする気か?」
「はい」
即答したよ。でも待てよ?業種によっては可能か?それに勤務形態にもよるか。
「どんな会社なんだ?」
「まだ決めてません」
「決めてない⁉︎決めてないのに人だけ集める⁉︎求人情報が空欄じゃあ、人なんか集まらないだろ!」
「あなたにはIT部門の主任として働いていただきます」
一旦収まった心臓の鼓動がまた早鐘を打つ。
なんなんだ。このガキは……?
「……なんで俺をIT部門の、しかも主任に?」
「だって日本中どこを探しても加賀谷伸行さん以上の適任者はいないでしょう?」
小娘はニコニコというより、ヘラヘラと笑って俺の名前を口にする。
「なぜ俺を適任だと?」
「それはもちろん。日本一のハッカー『アラクネ』さんだからです」
今、日本企業だけでなく、世界中のトップ企業も恐れるランサムウェア、『アラクネ』だ。
俺の心臓がドクンと音を立てる。
「私、『アラクネ』って聞いた時、てっきり女性かと思っちゃいました」
このガキ……!
どうする?とぼけてみるか?いや、無駄だな。このガキ、確信を持ってここに来ている。それにこの部屋にすんなり入れなかった時点で、俺に後ろ暗いことがあると白状したようなもんだ。
それに、あまりにも突拍子の無い話に、思わず自分から質問しまくっている。早く帰ってほしいのに、俺は何やってんだ?
そう考えたら頭が冷えて、今の状況が見えてきた。
ここまでの流れ、このガキは俺の質問にきちんと答えているから俺が主導権を握っているように錯覚していたが、ずっとコイツが主導権を握ったまま話が進んでいる。これまでの話っぷりからするとこのガキ、相当頭がキレるし弁も立つようだ。おまけに俺が怒鳴りつけてもビビらない度胸もあり落ち着いている。俺がしらを切ったとしても、論破されて時間の無駄になるだけだろう。
そうだ。この家に見ず知らずの人間が俺を訪ねて来ることがあれば『アラクネ』が目当てだろうと予想はしていた。
それが警察か警察でないかの違いでしかない。さすがにこんな小娘がやって来るのは予想外だったが。
ならば腹を括るか。まずは『コイツがここに来た本当の目的は何か』。それを見極める。
加賀谷は「ふぅ」と息を吐いた。
「……どうやって俺が『アラクネ』だと知った?」
「1月4日午前6時過ぎに、ちょこちょこっと加賀谷さんのパソコンにお邪魔しました」
「は?つい最近?全く異常は無いぞ」
思わず机の上の自分のマシンに目をやる。ハッキングされた気配は無い。
「ええ。個人情報を閲覧しただけですから。何も悪さはしてません」
「……つまりお前自ら俺のマシンをハッキングしたと?」
すると小娘はニッコリと笑って口を開いた。
「加賀谷伸行。41歳。東京の某私立大学に学費全額免除の優待生として入学。卒業後、某大手貿易会社に入社。しかし、上司のパワハラと同僚の嫌がらせに遭い退社。自身を退職に追い込んだ企業と上司と同僚に復讐するためハッカーに転身。復讐は見事成し遂げられ某貿易会社は倒産。元上司と元同僚の再就職先にもサイバー攻撃をしかけ、セクハラもしていた元上司は離婚後ホームレスに、元同僚は会社の金を横領していたのを暴いて塀の中。
『アラクネ』がランサムウェアの標的にしているのは全てブラック企業。顧客や社員の個人情報ではなく、理不尽な経営方針やハラスメントをマスコミに暴露すると脅して金銭を要求。
現在、表向きはトレーダー。儲けた分は両親に生活費として渡している。
ただしスイスの銀行に億単位の預金あり。……間違いありませんね?」
加賀谷は無言で返答した。これだけの情報を盗まれていたのに、気づかないなんて……。
1月4日。マシンに何か異変は無かったか、必死に思い出す。が、やっぱり何も心当たりが無い。
でも、それ以上に気になる事がある。
「……ちょっと待て。どこから侵入した?」
「ああ、それは本当ラッキーでした。囲碁の仕事でとある企業の囲碁部にお邪魔した時、「『アラクネ』にやられた」という話を運良く聞けまして。そこから、ですね。聞いてもいないのに必要な情報をベラベラ喋って下さいました」
囲碁棋士にならちょっとぐらい情報を漏らしても平気だろうと、軽い気持ちで話してしまったのか。しかもコイツは女子供。そりゃ油断するよな。
「……で、どうやって俺のパソコンに侵入した?」
考えうる全ての策を講じてハッキング対策ウイルス対策してある俺のマシンに侵入してきた。おまけに痕跡を残さず。
「それでしたら、こちらをご覧下さい」
と言って小娘はバックバックからノートを1冊取り出して俺に渡した。
「対局中、暇だったので、これに書き留めておいたんです」
暇?囲碁って片手間で打てるのか?
ぎっしりと書かれた数字とアルファベットと記号。鉛筆で書かれてある。ゴシック体のような読みやすい文字だ。それを最初から1ページずつ加賀谷は読んでいき、半分ほど目を通してノートを閉じた。
「大体わかった。お前が俺より優れたハッカーだってことは」
「あら、私のこと認めてくださるんですか?」
「これを見れば一目瞭然だろ」
加賀谷は渡されたノートを京子に返した。
「それに加賀谷さん、『アラクネ』を捕獲したのが子供だと分かっても、さほど驚かれませんでしたね」
「そりゃな。子供のほうが好きなことだけを思いっきりやれる時間を作りやすいしな。これは知識と時間さえあれば誰にでも出来る。
……で?日本2位のハッカー『アラクネ』を囲って何をしようってんだ?」
こんなノートを見せて自分の手の内を晒すような真似をしたんだ。コイツに敵意はなさそうだ。コイツの目的はおそらく『アラクネ』である『加賀谷伸行』だ。話を聞くぐらいはしてもいい。
「説明の手間が省けて助かります。実は私、どうしても死ぬまでに実現させたい夢があるんです」
黒髪の少女がまたヘラヘラと笑う。
「ほう。アンタのことだ。相当、大層な夢なんだろうな」
二人称が「お前」から「アンタ」に変わり、小娘は笑顔を見せる。しかしその口からは、俺の予想のはるか斜め上を行くとんでもなく浮世離れしたセリフが出てきた。
「私、どこでもドアを作りたいんです」
かなりの間があった。
「……えーと、たしか数年前にどこかの大学だったかで『どこでもドアっぽく見える』のを作ったっていう芸能ニュースは聞いたことあるが……」
「『ぽく見える』ものではなくて、実際に移動手段として使える物を作りたいんです」
「……つまり、ワームホールの謎を解き明かしたいと?」
「はい!それです!色々説明の手間が省けて本当助かります!」
「で、研究費やら何やらで金がかかるから、俺に稼いでこいと?」
「えっ⁉︎違います違います!すみません!説明の順番を間違えました!」
小娘はまたバックパックからノートを1冊取り出し、俺に渡した。何冊入ってるんだ?
「このノートはお持ち下さい。これに私の計画の概要をまとめておきましたので」
渡されたキャンパスノートには表題が付いていた。
「『畠山京子 50年計画』……?」
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