昔話 みんなが主役!

菅田刈乃

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もしも「桃太郎」だったら

もしも青くんが「桃太郎」だったら

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「いや無理無理無理。絶対無理だって」

 おじいさんさんから鬼退治を打診され、青太郎あおたろうは開口一番こう全否定しました。

「しかしな、紫太郎も黄太郎も赤太郎もみんな行っとるんじゃよ」

 生ける伝説となった英雄達の名をおじいさんは列挙しました。

「桃から生まれた者は鬼退治に行く定めとなっておる。お前だけ行かないのは世間体が悪いじゃろ」

(なんでみんな行くんだよ。俺も行かなきゃならなくなったじゃないか。つーか、うちの村、どんだけ鬼出てくるんだよ)

 それほどまで行きたくなければ詭弁を弄してでも行かなければいいのに、四角四面の青太郎はそこまで頭が回りません。

「わかった。準備期間をくれ。紫太郎と黄太郎と赤太郎から、どうやって鬼を退治したか話を聞いてくるから。それから対策を練って具体案を立ててから出発するから」

 まず最初に壮年となった赤太郎から話を聞きました。

「鬼退治?まぁ、ガーッと行って、ザバーッとやって、ドーンって感じかな?」

 何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。

 次に初老となった黄太郎の所へ行きました。

「行き倒れていた犬と猿と雉がいてね。運良く仲間になってくれたんだ」

(そうか。仲間を作ればいいのか)

 一人で鬼退治しなければならないと思いこんでいた青太郎は、いいことを聞いたと思いました。

(いやまてよ。僕はそんなに社交的じゃない。それに運良く仲間になってくれる者に出会えるかもわからない。運まかせな計画だと、いつか破綻する)

 黄太郎がとった行動は、自分には合わないと判断しました。

 次に老人になった紫太郎の所へ行きました。

「僕も犬猿雉をお供にしたけど、僕の場合はきび団子で取引したんだ」

 まさかきび団子を取引の材料にするとは、青太郎には思いつきませんでした。

 慎重派の青太郎は紫太郎の戦略を参考にすることにしました。

 その日から紫太郎のもとへ通う日々が始まりました。



 それから幾年月が流れたでしょう。

 青太郎はおじいさんとおばあさんのお墓に手を合わせました。

 慎重派の青太郎は未だ鬼ヶ島に未到達です。
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