思い付き短編集

神谷 絵馬

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本編書いてる

明らかに、可笑しい。1

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『こちらの第2王子殿下が、お前の婚約者となる方だ。
明日、顔合わせの茶会があるからくれぐれも粗相をしないように。』

と、冷たい眼差しで3歳の私を睨み付けながら姿絵を渡す...重厚感漂うお高そうな執務机に座る男は、一応、血の繋がった実の父親らしいです。
少しどころじゃなく後退した禿げかけの...多分茶色だと思われるけど、私の位置からは髪なんてほとんど見えないから少しだけ見えた部分で判断してます。
で、切れ長と評されるだろうキリッとしてる目は、鮮やかな青でした。
この父親らしい男が何歳なのかは、誰からも聞いてないので知りません。

そこの、私の父親らしい男を柔和な笑みを浮かべながらも冷めた目で眺めている、絶妙に存在感を消してる優しい執事に、この部屋に優しく抱かれて案内される道中にこれから会うのが父親だということを教えてもらいました。
目の前の男よりも濃い茶色の髪は全部後ろに流されていて、くすんだ青い目をしてます。

それにしても、無理なことを頼まれましたねぇ...だって、3歳ってまだまだ幼い筈ですよね?
教育なんてまだ幼いからか受けたこと無いし、父親に会うのすら今回が初めてなんですけど?
粗相をしないようにとか言われても、普通は婚約者が決まったとしてもこんな幼女をお茶会なんかに出さないでしょ?
頭沸いてるの?この人?それとも、沸いてるのは王家かな?

なんて思いながらも、幼女に拒否権などある筈もなく...優しい執事によってきちんとした仕立て屋が呼ばれました。
そりゃあ、私の部屋にあるクローゼットには、継ぎはぎだらけのボロいワンピースしか無かったからねぇ?
あの父親らしい男は明日茶会があるとか宣ってたけど、参加する為のきちんとしたドレスやワンピースが無いのに参加出来るかー!って話しです。

柔和な笑みを浮かべながら私の部屋に入ってきた男性1人と女性3人の仕立て屋達は、私の小さい部屋を見て唖然とし、私の着ているワンピースを見て唖然として、直ぐに目を据わらせてからクローゼットを開け放って...異口同音に吠えました。

『伯爵家なのに!!
娘に貧民にも劣る服を着せるとか馬鹿なの??!!』

と...本当ですよねー。

あー、そうそう、私の前世の記憶が戻ったのは、3歳の誕生日を迎えた3日前でした。
ここにいる優しい執事が、1人だけで祝ってくれたのです。
可愛らしい私1人用のケーキも、優しい執事のお手製でした。
あ、そう言えば、優しい執事が名前を教えてくれないのは何故なのでしょう?

あ、私の姉かららしい贈り物はありましたよ?
自分はもう嫁いでしまったので、妹の3歳の祝いに来れないことが寂しいという内容のお手紙もありました。
私にはまだ読めないので、優しい執事が私を膝に抱いて読んでくれました。

姉からの贈り物は、口には2本のデカイ牙が生えていて、額には1本の鋭利な角が生えていて、そして、私の3倍はあろうかという大きさの生きた・・・ウサギです。
種族名は、バトルジャンキーラビットと言うそうです。
戦闘狂いのウサギとか...なんだか嫌な名前だけど、キュウキュウ言いながら全身でスリスリしてくるのが可愛いんです。
もっふりとしたお腹を撫でると、喜びます。
父親が呼んでるからと私を呼びに来た偉そうな態度の執事に噛み付いたときは、別人みたいで怖かったけど...優しい執事曰く、一度主を決めると命をかけてでも守ろうとする健気な種族らしいです。
うん、後でちゃんと名前を決めて、ずーっと大事にするね。





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