思い付き短編集

神谷 絵馬

文字の大きさ
上 下
40 / 123
最近更新。

これだから獣人は面倒なのです。1

しおりを挟む
[君は僕の運命の番なんだ!!]

面倒な人に当たってしまいましたね...。

「いいえ、私は貴方の番ではありません。これは私の体質です。」

[しかし!]

「そこの方、申し訳ございませんが、私の潔白を証明するために...少し頭を失礼してもよろしいですか?」

「ん?あぁ、今日は依頼とか受けてないし、良いよ?
さぁ、どんとこい!」

「ありがとうございます。
失礼いたしますね...はい、これが、私の体質だという証明です。」

以前、同じ依頼をお請けしたことがあって...今回はニヤニヤとしながら面白がっていた方を巻き込んでみました。
どうにでもして!というかのように両手を広げて、決死の覚悟を決めた顔をしているのですが、何故なのでしょう?
なんだか無性にムカつきますね。
頭を撫でるときに、少しシバけば良かったでしょうか?

[な、なんで?!]

「私は、人族と獣人族との混血です。
この体質は、混血の中に稀に産まれる体質ですよ?」

[そうなんだよねぇ。
かなり珍しいけど、知り合いにもいない訳じゃないから...。]

[そんなぁ?!!]

これで、諦めてもらえたでしょうか?
色々と面倒なので、この依頼はあまり請けたくなかったのですが...路銀が尽きかけていたのですよねぇ......。
私の目的の為には、1つの場所にあまり永く留まらない方が良いので...。

「では、依頼は完了いたしましたので、これで失礼します。
あ、受付の方!諸々そちらで見ていましたよね?
依頼の完遂報告をお願いします。」

「え?あの、依頼主の方の署名が必要ですので...えっと、今は無理です。」

何言ってるのかな?この人。
ちゃんと目の前で依頼を完遂したのに、もしかして依頼書の中身を理解していないのでしょうか?
あぁ、馬鹿なのですね?

それとも、あの急に抱き付こうとして求婚してきた人の為に引き留めようとか思ってるの?
とても迷惑な人達ですね...。

「は?......あの、ここを見てもらえますか?」

「...あ、はい。」

イラついて笑顔が引き攣ってますけど?
ギルドの看板となる受付なのに、顔に出しすぎでは?

「この依頼は、
"・必ず受付の方の目の前で行なうこと"
そして、
"・依頼主の署名が無くとも、受付の目の前で獣体型に変化すれば完遂報告出来るものとする"
と、決められています。」

「それが、何なんですか?」

「今、見てましたよね?
依頼主の彼が獣体型になりましたよね?
ですので、完遂報告をお願いします。」

「えっと...」

困ったといった顔をしてますけど、理解出来ないのでしょうか?
それとも、引き留めようとしているから悩んでいるのでしょうか?

「ハァー、アンタ馬鹿なの?
こんな簡単なことも理解出来ていないなんて、受付として失格よ?
ちょっと退きなさい!アタシがやるわ!」

「何するんですかぁ!」

あら、後ろで腕を組んでイライラとしていたお姉さんが、受付の方を押し退けて出てきましたね。
どうやら、我慢出来なかったみたいです。

「ごめんなさいねぇ?
この子、副ギルマスの娘なんだけどあんまり使えない子でね?
何度も教えてるのに、全然覚えないし...もう首にしてやりたいわ!

あ、ギルドカードを貸してもらえる?」

「はい、お願いします。
でも、副ギルドマスターの娘さんなら、首にするのは難しいのでは?」

このギルドの副ギルドマスターは、この街随一の大きな商会のご子息だった筈です...。
大きな商会のご子息とか、なんだか面倒臭そうですよね。

「ギルマスに、職員一同とそれぞれ個人で嘆願書を出してるわ!
もしも、副ギルマスの生家に配慮したりして、それらを握り潰すのなら、こんなギルド辞めてやるわ!」

へつらう為の忖度って、面倒だから止めてほしいですよね。」

「そうなのよぉー!
はい、完遂報告はこれで完了よ!」

「ありがとうございました。」

「えぇ、これが仕事ですもの。
そう言えば、荷物が多いみたいだけど...もう旅立つの?」

「はい、目指している街までもう少しなので...。
路銀もある程度貯まりましたので、そろそろ出発しようかと考えています。」

「気を付けてね?」

「はい、行ってきます。」

完遂報告の処理をしてくれたお姉さんに手を振り、ギルドを出ます。
さて、屋台でお昼を買ってから出発しましょうか。
あそこのおじさんにもご挨拶しておきたいですしね。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

処理中です...