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2 : これは私の物ですわ!
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「それは?!
後からこの家の子となるシェリーが、少しでも、早く我が家に馴染めるようにと...だな?
それと、両親と死に別れたばかりの可哀想なシェリーに、気を遣っているだけだ。」
「そうね...少し様子を見ているつもりだったのだけれど、おかしく見えてしまうわよね。
元々平民として過ごしてきた子だし、なかなかマナーを覚えることが出来ないのは仕方ないわ。
けれど、もう少し常識を身に付けてもらわなければ養女にすることは無理よね。
取りあえず、教師を改めさせるわ。」
「へぇー...そうですか。
お2人がそういう考えなのであれば、僕らは邪魔になりますね。
実は今、僕らの養子先を吟味中なんですよ。
その子が早く養女として認められるように、出来るだけ早く決めますね。」
お兄様、こそこそと大伯母様達と密談されていたのはそのことでしたの?
あのお話し...冗談ではないかと思ってしまっておりましたけれど、本気でしたのね...。
あら?僕らの...ということは、私とリュシーの養子先も探されているのかしら?
それならば、とても嬉しいことですわ。
私は何もしておりませんのに、お父様から理不尽に怒られるのには本当にイライラしておりましたもの。
お母様も守ってはくださらないみたいですし、私からも皆様にお願いしてみましょうか...。
「さてと、今説明した通り、君にはその服を着る資格が無い。
父上には甘やかすことしか出来そうもないし、母上も静観なさるおつもりのようだし、仕方ないか...。
僕が指示して平民の服を用意させたから、早く着替えて来なさい。
フェリカさん、お願いします。」
「かしこまりましたわ。
では、シェリーでしたかしら?
私の後をついてらっしゃい?」
「どうしてよ!!嫌よ!!
私のお母さんは、この家の娘だったんでしょ?
なら、貴族なのよね?
だったら、私には、この服を着る権利があるわ!!」
「君の母である僕らの叔母の身分は、平民の庭師と駆け落ちしたことで勘当されて平民となった。
平民同士の子供である君は、平民でしかない。
平民である君が、そのように高価な貴族の着るドレスを着るのは、分不相応という他ない。
何度も説明した筈だが、まだ理解出来ないのか?
リュシーよりも年上の筈なのに...これでは先が思いやられるな。」
「え?...でも、私はこの家の子供になるんでしょ?」
「君を養女とすることは、議決権を持つ一族全員から認められていない。
我が家に泥を塗った叔母の子供ということもあるが、礼儀の欠片も無い君を簡単に一族には迎えられないんだよ。
この家の子供になりたいのなら、認めてもらえるように努力をすることだ。
最低限のマナーは既に覚えていなければならないのに、今現時点で覚えていない君が認められるわけが無い。」
そうなのよねぇ...結婚間近の婚約者がいたのにも関わらず、突然庭師と駆け落ちした叔母のことを、一族の誰もが嫌悪しておりますもの。
ですから、お父様がこの子をこの家の子供として育てると言い始めたとき、一族の皆様からこれからの付き合い方を考え直すと警告されましたのよ?
一族の皆様を説得する間の一時的にでも、近くの孤児院に多額の寄付と共に預ければよろしいのに...この子が孤児院は嫌がるからと預けずに、贅沢三昧をさせておりますの。
お母様は特に文句など言いませんし、何を考えてらっしゃるのやら...分かりませんわ。
服を仕立てるときなんて、私やリュシーよりも高価な布を強請って...。
両親もそれを”良いよ!”、”良いわよ!”と二つ返事で許してしまうから、図々しくも当たり前の顔をして、仕立てた両親にもお針子さんにも、一言もお礼を言わずに平然と着ておりますのよね。
平民の育ちだということの良く分かる、礼儀のなっていない子ですわ。
ありがとうと言うくらい、3歳の幼子にも出来ると思いますけれど...お礼を言うようにと躾けようとしない親にも問題がありますわよね。
「そんな!!お父様、お母様、どう言うことなの?!
私は、この家の子供になるんじゃ無かったの??」
「シェリー、泣かないでおくれ。」
「駆け落ち者の子供を引き取るには、一族全員の同意が得られなければならないのよ。
今、お父様が説得しているから...貴女はマナーを覚えましょうね?」
「僕とアリアとリュシーの3人は、先程も言いましたが養子先の選定を進めております。
僕らがいなくなれば、跡を継ぐ子供がいなくなりますから、最低限のマナーすら覚えられないその子でも簡単に認められると思いますよ?
僕らがいなくなれば、その子を近いうちに養女として迎えられます。」
「え、そうなの?
じゃあ、私、この家の子供になれるのね?
あぁ、良かったわ!」
ハァー...現金な子ですわね。
お兄様も私もリュシーもこの家を出ると言っておりますのに、そこには気付いておられないのかしら?
あらまぁ、もしもそうなら、本当に短絡的な思考の持ち主なのですわね。
「ジークレン!待ちなさい!
お前はこの家の跡取りなんだぞ?」
「僕らとその子、どちらかに1つです。
その子を養女としたいのなら、どうぞ僕らのことは諦めてください。
ああ、そうでした...もう1つ伝え忘れたことがありました。
跡取りについては、その子に婿でも取らせて跡取りとなさればよろしいのではありませんか?
優秀な方を見付けられることを祈っております。
では、リュシーを寝かし付けて来ますので、失礼します。
アリア、一緒においで?」
「はい、お兄様。」
お父様が、何やら叫んでおられますわね。
お兄様からは何度も通告されておりましたのに、そんなこと出来ないだろうと決め付けてきちんと話しをしないからこうなるのですわ。
*
後からこの家の子となるシェリーが、少しでも、早く我が家に馴染めるようにと...だな?
それと、両親と死に別れたばかりの可哀想なシェリーに、気を遣っているだけだ。」
「そうね...少し様子を見ているつもりだったのだけれど、おかしく見えてしまうわよね。
元々平民として過ごしてきた子だし、なかなかマナーを覚えることが出来ないのは仕方ないわ。
けれど、もう少し常識を身に付けてもらわなければ養女にすることは無理よね。
取りあえず、教師を改めさせるわ。」
「へぇー...そうですか。
お2人がそういう考えなのであれば、僕らは邪魔になりますね。
実は今、僕らの養子先を吟味中なんですよ。
その子が早く養女として認められるように、出来るだけ早く決めますね。」
お兄様、こそこそと大伯母様達と密談されていたのはそのことでしたの?
あのお話し...冗談ではないかと思ってしまっておりましたけれど、本気でしたのね...。
あら?僕らの...ということは、私とリュシーの養子先も探されているのかしら?
それならば、とても嬉しいことですわ。
私は何もしておりませんのに、お父様から理不尽に怒られるのには本当にイライラしておりましたもの。
お母様も守ってはくださらないみたいですし、私からも皆様にお願いしてみましょうか...。
「さてと、今説明した通り、君にはその服を着る資格が無い。
父上には甘やかすことしか出来そうもないし、母上も静観なさるおつもりのようだし、仕方ないか...。
僕が指示して平民の服を用意させたから、早く着替えて来なさい。
フェリカさん、お願いします。」
「かしこまりましたわ。
では、シェリーでしたかしら?
私の後をついてらっしゃい?」
「どうしてよ!!嫌よ!!
私のお母さんは、この家の娘だったんでしょ?
なら、貴族なのよね?
だったら、私には、この服を着る権利があるわ!!」
「君の母である僕らの叔母の身分は、平民の庭師と駆け落ちしたことで勘当されて平民となった。
平民同士の子供である君は、平民でしかない。
平民である君が、そのように高価な貴族の着るドレスを着るのは、分不相応という他ない。
何度も説明した筈だが、まだ理解出来ないのか?
リュシーよりも年上の筈なのに...これでは先が思いやられるな。」
「え?...でも、私はこの家の子供になるんでしょ?」
「君を養女とすることは、議決権を持つ一族全員から認められていない。
我が家に泥を塗った叔母の子供ということもあるが、礼儀の欠片も無い君を簡単に一族には迎えられないんだよ。
この家の子供になりたいのなら、認めてもらえるように努力をすることだ。
最低限のマナーは既に覚えていなければならないのに、今現時点で覚えていない君が認められるわけが無い。」
そうなのよねぇ...結婚間近の婚約者がいたのにも関わらず、突然庭師と駆け落ちした叔母のことを、一族の誰もが嫌悪しておりますもの。
ですから、お父様がこの子をこの家の子供として育てると言い始めたとき、一族の皆様からこれからの付き合い方を考え直すと警告されましたのよ?
一族の皆様を説得する間の一時的にでも、近くの孤児院に多額の寄付と共に預ければよろしいのに...この子が孤児院は嫌がるからと預けずに、贅沢三昧をさせておりますの。
お母様は特に文句など言いませんし、何を考えてらっしゃるのやら...分かりませんわ。
服を仕立てるときなんて、私やリュシーよりも高価な布を強請って...。
両親もそれを”良いよ!”、”良いわよ!”と二つ返事で許してしまうから、図々しくも当たり前の顔をして、仕立てた両親にもお針子さんにも、一言もお礼を言わずに平然と着ておりますのよね。
平民の育ちだということの良く分かる、礼儀のなっていない子ですわ。
ありがとうと言うくらい、3歳の幼子にも出来ると思いますけれど...お礼を言うようにと躾けようとしない親にも問題がありますわよね。
「そんな!!お父様、お母様、どう言うことなの?!
私は、この家の子供になるんじゃ無かったの??」
「シェリー、泣かないでおくれ。」
「駆け落ち者の子供を引き取るには、一族全員の同意が得られなければならないのよ。
今、お父様が説得しているから...貴女はマナーを覚えましょうね?」
「僕とアリアとリュシーの3人は、先程も言いましたが養子先の選定を進めております。
僕らがいなくなれば、跡を継ぐ子供がいなくなりますから、最低限のマナーすら覚えられないその子でも簡単に認められると思いますよ?
僕らがいなくなれば、その子を近いうちに養女として迎えられます。」
「え、そうなの?
じゃあ、私、この家の子供になれるのね?
あぁ、良かったわ!」
ハァー...現金な子ですわね。
お兄様も私もリュシーもこの家を出ると言っておりますのに、そこには気付いておられないのかしら?
あらまぁ、もしもそうなら、本当に短絡的な思考の持ち主なのですわね。
「ジークレン!待ちなさい!
お前はこの家の跡取りなんだぞ?」
「僕らとその子、どちらかに1つです。
その子を養女としたいのなら、どうぞ僕らのことは諦めてください。
ああ、そうでした...もう1つ伝え忘れたことがありました。
跡取りについては、その子に婿でも取らせて跡取りとなさればよろしいのではありませんか?
優秀な方を見付けられることを祈っております。
では、リュシーを寝かし付けて来ますので、失礼します。
アリア、一緒においで?」
「はい、お兄様。」
お父様が、何やら叫んでおられますわね。
お兄様からは何度も通告されておりましたのに、そんなこと出来ないだろうと決め付けてきちんと話しをしないからこうなるのですわ。
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