これがホントの第２の人生。

番外編

君がおかしいだけ。1(領主様side)

「今、なんと......？」

まるで、″そんなの初めて聞きました″と、″とても衝撃を受けています″とでも言いたそうな顔をしているけど、これまで君に何度も忠告してきた筈だ。
レイグルド君のことがあったときに、もう次は無いってはっきりと言った筈だよね？
あれから一月も経っていないのに、もう忘れたわけ？

「ん？ちゃんと聞いていなかったのかな？
特に相談もなく、こちらの話しも聞かず、女主人としての執務も熟さずに勝手なことばかりする君とは、本日をもって離縁することとする。
君の実家には既に手紙を送って通達済みだ。
明日にはあちらの準備も出来るだろうから、明日の昼までには出ていってくれと言ったんだよ。」

「な、何故ですの？？
どうして、私と離縁するだなんて、そんな酷いことが言えますの？？
それも、明日までに出ていけだなんて！！
私には子供達もおりますのよ？！
あの子達の準備期間もとっていただかなければ！！」

「ん？あぁ、子供達に関してはここに残ることになっているから心配無用だ。」

「な？！私の・・子供達ですわ！！」

「断じて、君だけ・・・の子供達ではないよ。
君のご家族とも、君と離縁した後の子供達に関しては話しがついている。
２人共、こちらできちんと面倒を見るので安心して出ていってくれ。」

え、まさかだけど、子供達も一緒に連れて出ていくつもりなのか？
子供達は僕の可愛い子供達でもあるわけで、跡取り候補でもあるのだから簡単に手放したりはしないよ？
離縁された母親と子供達が、共に母親の実家に行くのってかなりの異例だよな？
平民も貴族も王族も...特に身分とかは関係なく、子供は経済力のある父親の家に残るのが殆どだ。
こんな常識すら分からないなんて、とんだ馬鹿だったんだねぇ...まぁ、婚約中からそんな気配はしてたけどね。

「お義父様もお義母様も、私を娘として可愛がってくださいましたわ！！
こんなこと、きっと、とてもとても悲しまれますわ！！」

「それならば気にしなくとも良いよ。
君が、女主人としての執務を１つもまともに熟せていないことも、問題ばかり起こしていることも、逐一伝えてあるんだ。
生死を問わないなんていう非道なファビッツの捕獲依頼を、娘の名前で出すような女を義娘として可愛がる筈が無いだろう？」

「そんな？！！」

僕がなかなか婚約者を決めないからとやきもきしていた父上は、君のか弱いよ？っていう外面に騙されただけだったみたいだし、何匹もの猫を被った君に惑わされていたらしい母上も、今回のことには流石に呆れてたよ？
もう少ししたら母上がこちらに来てくれるから、君がいなくても子供達の教育には問題なし...というか、教育らしい教育なんてしてなかったみたいだから、いてもいなくても同じか。
今まで同様、教育係がいれば大丈夫。

「君は、罠により傷付いたファビッツの亡骸を見せられたあの子の気持ちを考えたかい？」

「そんなものを見せに来た冒険者達が悪いのですわ！！
普通なら、親に確認するでしょう？！」

「依頼を達成するためには、依頼主に直接確認してもらわなければならない。
あの子の名前を使って出した依頼なのだから、あの子が直接確認して署名をしなければ、冒険者達は依頼未達成として処理された挙げ句に報酬も受け取れないんだよ。
そんなことも知らないで、相談も報告もなく勝手に依頼を出したのかい？」

少なくとも、ファビッツの捕獲依頼に関しては罰を受けてもらわないとね。
乱獲され過ぎて個体数が減り絶滅の危機に瀕しているファビッツは、我が国のみならず幾多の国からの要請もあり貴族とか平民とかスラムの住人とか関係なく周知されている筈だ。
保護のための一時的な捕獲は許されているが、毛皮や肉を目当てとして狩ることは厳禁とされていることを、この国の貴族出身である君が知らなかったでは許されない。
この件に関しては国にも通達済みだし、実家に戻ってから捕縛されることになるだろうね。
自分は依頼人ではないとか言って、子供達を巻き添えになんてさせないよ？

「そんな...そんなこと、ありえませんわ。
旦那様は私を愛してらっしゃるでしょう？
ですから、旦那様はそんなことをしませんわ。
えぇ、えぇ、そんな非道なことをする筈がありませんわ。」

「そこの...えっと、マリーだったっけ？
君が妻専属の侍女なのなら、一緒に泣いてないでちゃんと準備をして実家に帰らせてくれ。
オリガ、我が家の物を勝手に持ち出さないように確認を頼む。
あぁ、マリーとやらももう戻ってこなくていいから。」

身一つで嫁ぐ約束の筈なのに勝手に付いてきて、まるで侍女長のように(誰も相手にしてなかったけど...)振る舞ってたんだから、当主の命令を受けてさっさと準備させてくれない？
オリガ侍女長には面倒なことを頼むけど、母上が貸していた宝飾品を自分のものだとか言い出しそうだから監視はつけとかないとね。





*