阿呆共の集い

神谷 絵馬

文字の大きさ
上 下
4 / 18
本編

4

しおりを挟む
某借金地獄の伯爵家子息の場合。

婚約者の家に伯爵家の領地を担保に援助してもらっている金を用いて、法外な利息でもって金貸しをして、あたかも婚約者がそれを行ったかのように偽装して断罪しようとしてたんだけど...嫌いや、それは無理でしょう。
貴方が金貸してた相手って、皆様貴方が率先して声かけしてた人達じゃないですか。
社交シーズンの準備をどうしようかと悩んでいる準男爵とかさ?事業に失敗した伯爵とかにさ?貴方が直々に声をかけて貸し付けてたよね?
貴方への断罪を申し出る陳情書の多いこと、多いこと...婚約破棄のために断罪をしようとして、断罪されたのは自分だったっていうオチね。

身内の伯爵家も、婚約者有責での破棄となるならば返金する必要がなくなると思って、積極的に加担してたらしいので当たり前にお家断絶。
加担してた皆様は、罪を償うために犯罪奴隷落ちで強制労働と相成りました。
その他の加担していなかった方々は、刻印も無く平民として生活されております。
ま、かなり少ないみたいだけどね。

「それ、誰に出すの?」

「ん?王太子妃殿下と王太子殿下、後は国王陛下と王妃陛下と第2王子殿下とその奥方様でしょ?
それと...あ、私の父と母でしょ?
後は...はい、第3王子殿下にも勿論ありますよー。
王弟閣下達にも頼まれてるんですよねぇ...あ、第3王子殿下はご自分のを確認してくださいます?
これが原本になりますので...。
全て私の手書きなので文字を書きすぎて腕が痛いし、思い出すと気持ちが荒ぶることもあったりで誤字脱字が凄まじいのです。
あぁ、一度書いたものを複製する魔法が欲しい...魔力殆どないけども。」

「君って器用だよね...。」

「お褒めのお言葉、ありがとうございます。
なんなら、他の方のも、確認作業を手伝ってくださいませんか?」

「うーん、今は暇だし良いよー。」

さ、説明もしたし褒めてももらえたし、第3王子も手伝ってくださるみたいなので続けますよ?

──────────

某ヤンデレな侯爵子息の場合。

ご自身の姉君の主催なされたお茶会でのマナー違反を理由に婚約を破棄しようとしたのだけど、これガチで、は?ってなるんだよね。
今回マナー違反だとされたのは、婚約者の方がお茶会の場で吐いてしまわれたことです。
ただ、婚約者の方は特定の食材に酷いアレルギー反応を起こされる体質の方でして...果物全般を食べることが出来ないということは周知の事実なんですよね。
殆どの人が知っていることですし、弟の婚約者なのですから姉君が知らないということは可笑しいことなのです。
しかし、姉君が今回のお茶会のためにと用意なされたのは、果物をたっぷりと使った様々な菓子類と、新鮮な果物を漬け込んで香りを付けた茶葉を用いた紅茶だったのです。
婚約者様が参加しているということに、紅茶を出してから気付いた使用人の方が慌てて婚約者様に謝罪して、出された紅茶を破棄してから新たにハーブティを用意することで飲み物に関しては事なきを得ました。

しかし、菓子類は果物の入ったものしか用意されておりませんでした。
お茶会が始まってから作るのでは時間が足りず...そのままでお茶会は進んでいったのです。
弟の婚約者なのですから当然のことですが、婚約者様は主催者である姉君と同じテーブルへと着いておられましたので、主催者の前で用意された菓子類に手を伸ばさない訳には参りません。
しかし、食べることの出来ない果物が菓子類の全てにおいて表に見えている為に、自らが苦しむと分かっていて食べることは出来ません。
葛藤なさる婚約者様に姉君は、貴女の為にと用意したのにも関わらず何故食べないのかと迫ったのだそうです。
前世の記憶からアレルギーの怖さを知っている私に言わせれば、このときの姉君は婚約者様に死ねと言っているようなものです。
婚約者様はきちんと説明をし、同席する方々もご存知のことでしたから婚約者様を擁護なされたのですが、このときの姉君は憤り無理矢理に婚約者様の口にお入れになられたそうです。
そりゃあ、飲み込まないようにと即座に吐き出しますよね?
婚約者様は、唇に触れるだけでも反応してしまう程に酷いのですから。
お茶会では、直ぐにお顔を真っ赤に腫らしてしまわれ、呼吸も儘ならない程に乱れ、喉を抑えながら卒倒なされたのです。
そして、1月もの間生死をさ迷われました。

侯爵子息が断罪を起こした時、まだベッドを出られる程には回復なさっておられませんでしたので、婚約者不在の断罪となりました。
お茶会に参加していて直に見ていた参加者全員(私も含めて)、侯爵子息の姉君に、
『あの子に不名誉な噂を立ててしまうのは嫌なの。
私は、あの子を守りたいのです。』
と乞われましたので、皆様と共に証言させていただきました。
当然、食べられないことを知らなかった...だなんて言える立場ではありませんので、姉君は責任を取る為にと自ら修道院へとお入りになられました。
確か、修道院へと向かう前に姉君が、
『弟からは克服したのだと聞いていたの...私とお茶会で果物たっぷりの菓子を食べたいと言っているとあの子から聞いたのに...どうしてこんなことに?』
と仰られていました。
実の姉を騙してまで断罪の理由を作ろうとするだなんて、真実の愛って怖いわぁ......。





*
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ
ファンタジー
婚約破棄に国外追放されましたが、これでお役御免なのでしょうか? 乙女ゲームしたことないので、立ち位置がわかりません。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

信用してほしければそれ相応の態度を取ってください

haru.
恋愛
突然、婚約者の側に見知らぬ令嬢が居るようになった。両者共に恋愛感情はない、そのような関係ではないと言う。 「訳があって一緒に居るだけなんだ。どうか信じてほしい」 「ではその事情をお聞かせください」 「それは……ちょっと言えないんだ」 信じてと言うだけで何も話してくれない婚約者。信じたいけど、何をどう信じたらいいの。 二人の行動は更にエスカレートして周囲は彼等を秘密の関係なのではと疑い、私も婚約者を信じられなくなっていく。

【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇

藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。 トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。 会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

なんでも奪っていく妹とテセウスの船

七辻ゆゆ
ファンタジー
レミアお姉さまがいなくなった。 全部私が奪ったから。お姉さまのものはぜんぶ、ぜんぶ、もう私のもの。

処理中です...