4 / 8
4 ルシアの生家side*
しおりを挟む
「フー、あれは、確実に処分出来たのか?」
「はい、スラムの路地裏に捨てるのを確認しました。
雇った者達には、きちんと相応の金を渡してあります。」
「あぁ、雇ったヤツラは頃合いをみて殺せ。
ああいう輩は、生かしておくと面倒だからな。」
「かしこまりました。」
目の前にいる粗めの銀髪に切れ長の青い瞳というかなり冷血そうな見た目の男は、髪色が自分と違ったからというそれだけの理由で、産まれたばかりの自分の娘を捨てた極悪非道な男。
娘を捨てたということが分かると貴族社会では面倒なことになるからと、スラムの荒くれ者を端金で雇い屋敷を襲わせ、強盗の犯行に見せかけるために、近々辞めさせる予定の使用人を幾人か殺させて...細々としたもう要らない宝飾品と共に、生後半年程の娘を盗ませました。
そして、その荒くれ者達に娘を人質として大金を要求させ、そんな金額は支払えないと断ったことで娘が殺されるという筋書きを...娘を見て数分で考えたという、誰が見ても屑。
髪色が違ったという娘は、奥様の髪色を受け継いだだけなのに...コイツは頭が悪すぎるだろう......おっと、失礼いたしました。
一応、広大なスフェル領を管轄しているスフェル侯爵家の当主なのだが...頭は大丈夫か?
あー、つい本音が出てしまいましたね...申し訳ございません。
「下がって良い。」
「はい、失礼しました。」
ま、誘拐されたことになっているお嬢様が、私の要求通りに動いてくださった荒くれ者達によって優しく捨てられた後、他国の人間に直ぐに拾われたことなんて話す必要は無いでしょう。
私が雇った荒くれ者達は意外と優しい者が多かったようで、事情を話すと理不尽な扱いを受けているお嬢様を不憫に思い、なるべく不自由のないようにと丁寧に扱ってくださっておりました。
お嬢様を盗む際も寒くないようにと毛布で包んでから優しく抱いておられましたし、暫く面倒を見るためにと乳の出る女性を探してくださってもおりました。
お嬢様を捨てる際も、他国の人間の目につくように工夫して捨ててくださいました。
これから追加で報酬をお持ちし、他国へと高飛びするお手伝いをいたしましょう。
あぁ、屋敷の使用人を殺した荒くれ者共は別口ですよ?
人を殺し宝飾品を奪った荒くれ者共には、現在特別なお食事を召し上がっていただいております。
スフェル領主にしか手に入れられない、特別な毒入りのお食事です。
今頃、彼らは衛兵方に発見されていることでしょう。
迅速な家宅捜索と、速やかな毒の鑑定が行われれば、明日にでもこのアホな男も捕らえられることとなりますね。
本来ならば読んだ後には燃やさせるハズの依頼書を、成功報酬の受け取りには依頼書が必要だと伝えておいて燃やさせませんでしたので...フフフ。
アイリーンさん、こちらを見届けたら直ぐに追いますからね?
お嬢様や新しいご家族様方と共に待っててくださいね?
あぁ、あの慈愛に満ちたお顔をしておられた方々は、お嬢様にどのようなお名前をお付けになられたのでしょうか?
とてもとても気になりますが、暫くは、勘付かれないように普通に過ごさねばなりません。
こんな胸くそ悪い男に仕えなければならないような勤め先など、とっとと辞めてやりたいのですが...仕方ありませんね。
──────────
「執事長、このような時期に申し訳ないのですが...お暇をいただきたく参りました。
療養の為にと、5年程前に隣国へと渡った伯母から、ここ2年程1通も手紙が届かないのです。
両親を亡くした私には伯母しか親族がおりません。
心配で心配で...隣国まで探しに行きたいと考えております。
探すのにかかるだろう期間は分かりませんので、どうか仕事を辞めさせていただけませんか?」
「おや、その様なことになっていたのですか?
唯一のご家族のことですし貴方も心配でしょう...隣国ならば捜索には時間もかかりますね。
正直に言いますと、あのような事件が起き領主様が代替わりしたばかりで、優秀な貴方に抜けられてしまえば諸々大変にはなりますが、そういうことならば構いませんよ。」
「ありがとうございます。
今まで、お世話になりました。」
「こちらこそ、誠心誠意勤めてくださり、ありがとうございました。
伯母様がご無事で見付かること、そして、貴方の旅が安全なものとなることを祈っております。」
生まれたばかりのお嬢様が行方知れずとなってから1月程経った頃、30代半ば位の執事が1人屋敷を後にした。
何故か......晴れ晴れとした顔をして。
*
「はい、スラムの路地裏に捨てるのを確認しました。
雇った者達には、きちんと相応の金を渡してあります。」
「あぁ、雇ったヤツラは頃合いをみて殺せ。
ああいう輩は、生かしておくと面倒だからな。」
「かしこまりました。」
目の前にいる粗めの銀髪に切れ長の青い瞳というかなり冷血そうな見た目の男は、髪色が自分と違ったからというそれだけの理由で、産まれたばかりの自分の娘を捨てた極悪非道な男。
娘を捨てたということが分かると貴族社会では面倒なことになるからと、スラムの荒くれ者を端金で雇い屋敷を襲わせ、強盗の犯行に見せかけるために、近々辞めさせる予定の使用人を幾人か殺させて...細々としたもう要らない宝飾品と共に、生後半年程の娘を盗ませました。
そして、その荒くれ者達に娘を人質として大金を要求させ、そんな金額は支払えないと断ったことで娘が殺されるという筋書きを...娘を見て数分で考えたという、誰が見ても屑。
髪色が違ったという娘は、奥様の髪色を受け継いだだけなのに...コイツは頭が悪すぎるだろう......おっと、失礼いたしました。
一応、広大なスフェル領を管轄しているスフェル侯爵家の当主なのだが...頭は大丈夫か?
あー、つい本音が出てしまいましたね...申し訳ございません。
「下がって良い。」
「はい、失礼しました。」
ま、誘拐されたことになっているお嬢様が、私の要求通りに動いてくださった荒くれ者達によって優しく捨てられた後、他国の人間に直ぐに拾われたことなんて話す必要は無いでしょう。
私が雇った荒くれ者達は意外と優しい者が多かったようで、事情を話すと理不尽な扱いを受けているお嬢様を不憫に思い、なるべく不自由のないようにと丁寧に扱ってくださっておりました。
お嬢様を盗む際も寒くないようにと毛布で包んでから優しく抱いておられましたし、暫く面倒を見るためにと乳の出る女性を探してくださってもおりました。
お嬢様を捨てる際も、他国の人間の目につくように工夫して捨ててくださいました。
これから追加で報酬をお持ちし、他国へと高飛びするお手伝いをいたしましょう。
あぁ、屋敷の使用人を殺した荒くれ者共は別口ですよ?
人を殺し宝飾品を奪った荒くれ者共には、現在特別なお食事を召し上がっていただいております。
スフェル領主にしか手に入れられない、特別な毒入りのお食事です。
今頃、彼らは衛兵方に発見されていることでしょう。
迅速な家宅捜索と、速やかな毒の鑑定が行われれば、明日にでもこのアホな男も捕らえられることとなりますね。
本来ならば読んだ後には燃やさせるハズの依頼書を、成功報酬の受け取りには依頼書が必要だと伝えておいて燃やさせませんでしたので...フフフ。
アイリーンさん、こちらを見届けたら直ぐに追いますからね?
お嬢様や新しいご家族様方と共に待っててくださいね?
あぁ、あの慈愛に満ちたお顔をしておられた方々は、お嬢様にどのようなお名前をお付けになられたのでしょうか?
とてもとても気になりますが、暫くは、勘付かれないように普通に過ごさねばなりません。
こんな胸くそ悪い男に仕えなければならないような勤め先など、とっとと辞めてやりたいのですが...仕方ありませんね。
──────────
「執事長、このような時期に申し訳ないのですが...お暇をいただきたく参りました。
療養の為にと、5年程前に隣国へと渡った伯母から、ここ2年程1通も手紙が届かないのです。
両親を亡くした私には伯母しか親族がおりません。
心配で心配で...隣国まで探しに行きたいと考えております。
探すのにかかるだろう期間は分かりませんので、どうか仕事を辞めさせていただけませんか?」
「おや、その様なことになっていたのですか?
唯一のご家族のことですし貴方も心配でしょう...隣国ならば捜索には時間もかかりますね。
正直に言いますと、あのような事件が起き領主様が代替わりしたばかりで、優秀な貴方に抜けられてしまえば諸々大変にはなりますが、そういうことならば構いませんよ。」
「ありがとうございます。
今まで、お世話になりました。」
「こちらこそ、誠心誠意勤めてくださり、ありがとうございました。
伯母様がご無事で見付かること、そして、貴方の旅が安全なものとなることを祈っております。」
生まれたばかりのお嬢様が行方知れずとなってから1月程経った頃、30代半ば位の執事が1人屋敷を後にした。
何故か......晴れ晴れとした顔をして。
*
5
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
僕の従魔は恐ろしく強いようです。
緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。
僕は治ることなく亡くなってしまった。
心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。
そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。
そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子
処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。
転生したら乙女ゲームの奴隷だった。バッドエンドまっしぐらの『氷の女王』と呼ばれる悪役令嬢に購入されたので、彼女の生存ルート模索します。
心太
ファンタジー
【なんでお前、勝手に好感度上がってんの?!】
他サイトで週間4位 月間7位。
『ドキドキ! 奴隷パニック!』
気に入ったイケメン奴隷を1人購入して育成し戦わせる、倫理観のかけらもない乙女ゲーム。
奴隷のステータスを上げるには、基本的に鞭をビシバシするしかない。
ゲーム内で清純派として通っているヒロインでさえ、なんやかんや言いながら奴隷を鞭で打ち、調教が終わるとしっかり牢屋にぶち込むという非道っぷり。
そして、無駄にイケメンな奴隷達は腰蓑1枚しか履いておらず、鞭で打たれた後に『俺以外の男の前でそんな顔すんなよ』などの、乙女ゲーム定番の甘い囁きを呟いてくる。
そんな何かが狂っている乙女ゲームの、縛りプレイ用落ちこぼれ奴隷に転生した俺。
せめてヒロインに購入されたかったが、容姿だけ100点満点の敵キャラの悪役令嬢に買われました‥‥‥。
性格は最悪。
口は悪い。
地獄の日々の始まりかと思っていたが、ステータスを覗き見ると、何故か上がってる俺への好感度‥‥‥。
‥‥‥なんなのツンデレ?
とりあえず、コイツのバッドエンドを回避してあげますか‥‥‥。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
快楽転
さちまる☆よるとば
ファンタジー
生まれながらのビッチ!!
異世界で別の生き物に憑依移動、しかもその生命体はサキュバスだったのです。
まさに理想のわたし!!続かないと大変なのでA4で書き溜めていこうと思う。
もしも自分が異世界に行ったら、これはもはや鉄板妄想ですが
私ならこうでありたい!!をお送りします。
飽きやすいし途中で死ぬかもしれません。
R18は今回とりあえずなしです。
ちなみにタイトルは以前買ってた某漫画雑誌を参考にw
小説家になろうにて「よるとば」名で投稿してます。
魔王♂⇄勇者♂〜入れ替わりからの、ハーレム官能〜60話完結
https://ncode.syosetu.com/n2784fd/
※ノクターンで『魔王♂⇄勇者♂〜入れ替わりからの、ハーレム官能〜』にてR18閑話を投稿してます。大人の方はそちらもぜひご覧ください。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる