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お兄様の結婚式
21[お祖父様side+回想]
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「...先々代の王弟は婚姻を結ばれているのだから、当時はもう王族では無い筈では?」
「先々代の王は、歳の離れた弟を殊更に可愛がっていたらしいからの...王族という括りに入れたままにしていたんだよ。
ほれ、準王族っていう...王女はおるが、王子が1人しか生まれずその者が王となった場合に、王子が産まれるかは神のみぞ知ること...誰にも分からないだろう?
王に王子が生まれなかった場合に、姉か妹となる王女の産んだ男の子を養子とするために、姉か妹となる王女が嫁ぐ際に準王族として留め置く措置を利用したのだ。
その時には、今の王とその弟が産まれていた筈なのだがな?」
「先々代の王を嫌っておられたのは、そういう背景があったのですね...誤解しておりました。」
「よいよい、一番悪いのは、先々代の王弟だからの。」
「話しの腰をおってしまいました。
済みません...続きをお願いします。」
「構わぬよ。
では、続きを話そうかの。」
ほう、目付きが変わったな...。
あれだけこちらに嫌悪を見せていたというに...のう?
まぁ良い、続けようかの?
──────────
「国王陛下に手紙を出そうと思うのだが、これは原本として残しておきたいと考えている。
...模写を頼めるか??」
「はい!喜んで!!」
「どうにも悪筆でな...難しいだろうが頼む。」
「はい!喜んで!!
あぁ、これは酷いですねぇ...。
忠実に模写をするために、少々粗悪な紙を用いますがよろしいですか?」
「あぁ、構わん。
その文字を忠実に模写してくれるのならば。」
「はい!喜んで!!
少々お時間いただきますが、少々お待ちくださいませね!!」
何故だか威勢の良い返事に圧倒されてしまった...。
ぴょんぴょんと跳ねる寝癖はそのままに、前髪だけを紐で括ったらしく噴水のように立っているのは面白い。
それも、きちんとした格好をすれば美少女のように可愛らしい顔立ちで、これで四十路を超えた男だなどと誰が思い至るのだろうか?
あの屑の手紙を興味津々と見つめて頬を薔薇色に染める様は、恋する乙女のように可憐だ。
この容姿で、女装も気にせず甘味が食べられるのならと着せ替え人形にもなってくれるなんて、シオンのお気に入りになるわけだな。
女装させてシオンと2人並べれば、可愛らしい姉妹に見えることだろう。
うむ、シオンに頼まれたということもあるが、雇って正解だったかもしれないな。
「?どうかなさいましたか?」
「いや、随分と楽しそうだなと思ってな。」
「あぁ、文字を書くことが好きなので、代筆や本の模写をしていたのですが...依頼してきた貴族に、愛人となれと命じられることが多かったんです。
でも、ここではそんなことないでしょう?
ほら、皆僕のことをちゃんと男として扱ってくれるので...嬉しいですし楽しいです。」
「そうか...それならば良い。
ただ、もう少し身だしなみには気をつけなさい。」
「シオン嬢は、こんなにもお優しい旦那と結婚できて幸せ者ですね。
いつも、惚気てたんですよ?
『早くあの人に会いたいわ!』
って。
僕もおこぼれに預かりまして、今は幸せです。」
「ハハハ、こうして話していても模写とは出来るものなのだな。」
「うーん、癖を見抜ければまぁ簡単ですかね?
この文字を書いた人は、どうにも見栄っ張りな人のようで...癖を模倣するのがとても簡単です。」
「そうか...。」
「はい!出来上がりました!!
署名に関しては、少し変えております。
この書面が偽造したものとならないように、これは模写であって原本は他にあることと、模写した僕の名前も書いてありますが、他は完璧ですよ!!」
「うん、完璧だな。
念の為、手紙にもこれは模写だと明記しておこう。
ありがとう。」
「ウヘヘ...。」
報酬は、頭を撫でただけで本当に良いのだろうか?
恍惚とした表情で、モフモフとしたウサギを抱きながら堪能しているらしい様はとても可愛らしいのだが、少し不憫にも感じてしまう。
まぁ、衣食住は面倒見ているから良いのか?
今度、シオンと共に買い物に連れていって、何か欲しいと言ったものを買って贈るとするか......。
ペットのウサギの洋服とかも良いかな?
*
「先々代の王は、歳の離れた弟を殊更に可愛がっていたらしいからの...王族という括りに入れたままにしていたんだよ。
ほれ、準王族っていう...王女はおるが、王子が1人しか生まれずその者が王となった場合に、王子が産まれるかは神のみぞ知ること...誰にも分からないだろう?
王に王子が生まれなかった場合に、姉か妹となる王女の産んだ男の子を養子とするために、姉か妹となる王女が嫁ぐ際に準王族として留め置く措置を利用したのだ。
その時には、今の王とその弟が産まれていた筈なのだがな?」
「先々代の王を嫌っておられたのは、そういう背景があったのですね...誤解しておりました。」
「よいよい、一番悪いのは、先々代の王弟だからの。」
「話しの腰をおってしまいました。
済みません...続きをお願いします。」
「構わぬよ。
では、続きを話そうかの。」
ほう、目付きが変わったな...。
あれだけこちらに嫌悪を見せていたというに...のう?
まぁ良い、続けようかの?
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「国王陛下に手紙を出そうと思うのだが、これは原本として残しておきたいと考えている。
...模写を頼めるか??」
「はい!喜んで!!」
「どうにも悪筆でな...難しいだろうが頼む。」
「はい!喜んで!!
あぁ、これは酷いですねぇ...。
忠実に模写をするために、少々粗悪な紙を用いますがよろしいですか?」
「あぁ、構わん。
その文字を忠実に模写してくれるのならば。」
「はい!喜んで!!
少々お時間いただきますが、少々お待ちくださいませね!!」
何故だか威勢の良い返事に圧倒されてしまった...。
ぴょんぴょんと跳ねる寝癖はそのままに、前髪だけを紐で括ったらしく噴水のように立っているのは面白い。
それも、きちんとした格好をすれば美少女のように可愛らしい顔立ちで、これで四十路を超えた男だなどと誰が思い至るのだろうか?
あの屑の手紙を興味津々と見つめて頬を薔薇色に染める様は、恋する乙女のように可憐だ。
この容姿で、女装も気にせず甘味が食べられるのならと着せ替え人形にもなってくれるなんて、シオンのお気に入りになるわけだな。
女装させてシオンと2人並べれば、可愛らしい姉妹に見えることだろう。
うむ、シオンに頼まれたということもあるが、雇って正解だったかもしれないな。
「?どうかなさいましたか?」
「いや、随分と楽しそうだなと思ってな。」
「あぁ、文字を書くことが好きなので、代筆や本の模写をしていたのですが...依頼してきた貴族に、愛人となれと命じられることが多かったんです。
でも、ここではそんなことないでしょう?
ほら、皆僕のことをちゃんと男として扱ってくれるので...嬉しいですし楽しいです。」
「そうか...それならば良い。
ただ、もう少し身だしなみには気をつけなさい。」
「シオン嬢は、こんなにもお優しい旦那と結婚できて幸せ者ですね。
いつも、惚気てたんですよ?
『早くあの人に会いたいわ!』
って。
僕もおこぼれに預かりまして、今は幸せです。」
「ハハハ、こうして話していても模写とは出来るものなのだな。」
「うーん、癖を見抜ければまぁ簡単ですかね?
この文字を書いた人は、どうにも見栄っ張りな人のようで...癖を模倣するのがとても簡単です。」
「そうか...。」
「はい!出来上がりました!!
署名に関しては、少し変えております。
この書面が偽造したものとならないように、これは模写であって原本は他にあることと、模写した僕の名前も書いてありますが、他は完璧ですよ!!」
「うん、完璧だな。
念の為、手紙にもこれは模写だと明記しておこう。
ありがとう。」
「ウヘヘ...。」
報酬は、頭を撫でただけで本当に良いのだろうか?
恍惚とした表情で、モフモフとしたウサギを抱きながら堪能しているらしい様はとても可愛らしいのだが、少し不憫にも感じてしまう。
まぁ、衣食住は面倒見ているから良いのか?
今度、シオンと共に買い物に連れていって、何か欲しいと言ったものを買って贈るとするか......。
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