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お兄様の結婚式

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「妖精さんに取り返される度に、これは私のよ!!って見苦しく喚いてたんだよねー。
愛し子ではないくせに、自分は妖精さんや聖霊さん達に愛されているとか言いふらしてるから、あんな目に遭うんだよ。
フフフ、良い気味だよね。」

「スリゼル...嫌いだからって、そんな風に言うのは良くないわよ?
愛し子云々の話に関しては自業自得だけれど、一応はあなたの仕えている一族の人間でしょう?」

「ティリーの護衛になるために貴族籍を放り投げて実家を飛び出して来た僕を、見た目が気に入ったからって僕の了承無く自分の婚約者にしようとしたアホだよ?
それも、何度もしつこく自分から迫ってきてた癖に、僕が狐の獣人だってことが分かったら、
『あなた、私を騙していたのね?!』
とかって言って、
『もう有力な貴族家にお嫁に行けないかも知れないから、責任をとって私に見合う高位貴族との縁組みを見付けてきなさい!』
とか意味の分からない難癖付けてきたの...それでも、悪く言ったら駄目なの??」

「ティリー、私スリゼルがそんな目に遭っていたなんて初耳なのだけれど...どういうこと?」

困り顔のシェリーお姉様がスリゼルを嗜めますが、スリゼルはムスッとした顔を隠さずに吐き捨てましたわ。
あの、嫌な思いをした日々を思い出してしまったのか、尻尾が2本とも力なく垂れ下がっておりますわね。
あら?シェリーお姉様は詳細をご存知無かったの?
体調を崩されてあのパーティーに参加出来なかったシェリーお姉様には、お兄様がきちんと説明なさっておられるとばかり......何事も、人任せはいけませんわね。

「どうしてお兄様はシェリーお姉様に話さなかったのかしら?
あの日のことを、詳しくお話しいたしますわ。

あの子は、私の護衛であるスリゼルのことを、勝手に、他国から求婚に来た自分の婚約者なのだと思い込んでおりましたの。」

「えぇ、あの子は、とても思い込みの激しい子でしたものね。」

「シェリーお姉様、貴族のご令嬢としての教育をきちんと受けていれば、
『ティリーの護衛をするために、帝国での身分を返上してここまで来ました。
頑張って人化も出来るようになりましたので、雇ってください!』
というスリゼルの自己紹介を聞いて、彼が帝国の元貴族で獣人だということは直ぐに分かりますわよね?」

「えぇ、それで分からないのは、まだ教育を殆ど受けていない幼い子供だけでしょうね。」

「そうなのですけれど、あの子は気付かなかったみたいなのですわ。

スリゼルを雇いだして直ぐに、我が家で開いたお兄様の誕生日を祝うガーデンパーティーにお兄様の知り合いの帝国の方を招きましたら、
『汚らわしい獣風情が我が家に足を踏み入れるなんて失礼よ!!』
と、ヒステリックに叫びましたのよ?
マナーを履修出来ていないあの子は参加出来ないようにと、お兄様が招待しておりませんでしたのよ?
けれど、兄の誕生日を祝いたいだなんて思ってもいないことを言って、あの子にだけ甘い両親が勝手に許可を出して参加させておりましたの。
私もお兄様もあの子の存在に気付くのが遅れてしまって、アラセーナ様と旦那様には申し訳ないことをいたしましたわ...。」

「シェリー...僕が、
『お2人は帝国にお住まいのグレイシオの友人であって、汚らわしい獣などではありません!』
って言ったら、
『貴方は私の婚約者でしょ?!
その獣達を庇うなんてありえないわ?!!』
って、甲高い声で喚かれたんだ...耳がグワングワンして、めちゃくちゃ痛かったよ。
そもそも、あの子の婚約者だなんて事実無根の事だし、僕も獣人だから、正直に
『僕はお前の婚約者ではない!
そして、僕も獣人だ!!』
って言ってから獣化してみせたんだ。
そしたら、あの心の壊れた母親からは
『清らかな優しい心を持つ私の娘を騙すなんて酷いわ!
娘の心を傷付けた責任を取りなさい!!』
とか、ぼんくらな父親にも
『俺の可愛い唯一の娘に、獣と婚約したという不名誉な噂を立てられた!!
高額な慰謝料を払ってもらわなければ、納得出来ん!!』
って言われたから、後始末が面倒なことになるなーって思ったけど、隠れて参加していた帝王様にお願いして、僕があの小娘の婚約者じゃないことをちゃんと証明してもらったんだ。
帝国での身分は返上したけど、帝国民である事は辞めてないからね。
その後は、ティリーもグレイシオも、他の出席者も、あの小娘が発した獣人への暴言を証言してくれたから、あいつらが僕ら3人に慰謝料を支払うことに決まったんだ。
...まだ殆ど支払われてないんだけどね。」

うん、後半は被害者のスリゼルが説明してくれたけれど、丁寧な口調で喋ろうとするとまだまだ発音が甘いわね。
怒っていることも1つの要因かしら?





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