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裁判中のお兄様side

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父はずっと救いようの無い阿呆だったけど、昔は母もご令嬢らしく気高かったんだよねー。
......あれは、お祖父様とリリスお祖母様の説明を聞き入れない父から、僕を産んだことで不貞を疑われた母が、心身ともに傷だらけになりながらも新しく子を身籠ったと知らされた時のことだ。

──────────



「今度こそは本当に俺の子供だろうな?」

「この部屋からは、お義母様のお部屋に呼ばれた時以外出ておりませんわ。
この部屋に誰かが訪ねて来たこともありません。」

「ふんっ!お前が王城で倒れたりしなければ、その穢らわしい不貞の子など!
即刻殺してしまうものを!!」

もふもふとした赤茶の天パの男が、2人目を妊娠中の僕の母上のことをうす緑の瞳で睨み付けているのは、いつものことです。
僕は不貞の子供なのだそうです。
この人の中では...ですけど。
この人の、実のお母様は命を懸けて産んでくれたのに、それが分からない阿呆なのだそうです。
まだ安定期に入っていない妊婦に対して、平気で怒鳴り付けられるような非常識な人だから、本当に阿呆なんでしょうね。

あっ、僕、転生者です。
このさらさらの黒髪はお祖父様曰く、母上のさらさらとシオンお祖母様の黒髪が融合したのだそうです。
薄い紫色の瞳は、シオンお祖母様オンリーらしいです。
シオンお祖母様の肖像画を見たけど、形も色もそっくりでした。
男の子は沢山成長するから、きっと女顔じゃあないよ?

「お義母様もお義父様も、この子は貴方の実のお母様の色だと仰っておりましたわ!
夜会などに私が出ることを貴方が嫌うからっ.......私、1度も!出ておりませんのよ?
この家に嫁いでから私が参加したのは、お義母様がご招待してくださった顔繋ぎのためのお茶会だけです!
家からは一歩も出ない生活で、家の使用人にも悟られずに、私がどうやって不義を働きますの?!」

「黙れ!!そんな気味の悪い色の子供が、俺の子供な筈が無いんだ!!」

「でしたら、お義父様に直接お言いになられたら如何です?
この子は、正式にこの家の嫡男としてお義父様が承認されておりますわ。
父親の言葉を真面目に聞かず、貴方の思い込みだけで行動されるなんて...浅はかですわ。」

母上、あんまりぎゅっとしないで?
僕まだ2歳よ?頭脳は大人でも、身体は普通の2歳児なんだよね。
でも、離さなくても良いんだよ?
僕の為に闘ってくれてるんだから、僕も少しくらいは我慢するからね。
母上、格好いいよ!!

「なんだと?!!」

「殴りたいのでしたら、どうぞお殴りなさいませ!
ですが、先日私を診たお医者様に言われましたわよ?
暴力亭主を追い出さないとこの子は育たないだろう...と。
診察の際に私の傷を見て、不憫に思ってくださいましたの。
貴方の狂暴性を、貴族院に届け出てくださるそうですわ。
私がもしも子供を流してしまったり、産む前や産んだ後に私や子供達が死んだりしたら、貴方が犯人として裁かれるのでしょうね!」

「んぐっ!気分が悪い!!
お前は俺の相手が出来ぬから、上級娼婦を呼ぶからな!!」

はい!アッカーン!
この親父、お祖父様とかがいなかったら、色々な所でミスしまくって醜聞とかにまみれてそうだな?
普通、妊娠中の妻に娼婦呼ぶぞ?なんて宣言せんわ!!
気分が悪いのはこっちや!呆け!!





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